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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

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授業中

翌朝、クロードが教室へ入ると、昨日と同じ顔ぶれがいつもの席についていた。

けれど、いつもと少し違って見える。

「おはよう」

「おう」

ノーゼスが返事をしながら椅子へ深く座り直した。

クロードが自分の席へ鞄を置く。

「どうしたの?」

「なんか脚が重い」

ノーゼスが机の下で片脚を伸ばした。

「昨日は平気だったのに」

「昨日はまだ試合中だったからじゃない?」

エクリアが隣から言う。

「終わったあとも平気だったぞ」

「じゃあ今になって来たんじゃない?」

「そんなのあるのか?」

「知らない」

エクリアがあっさり答えた。

クロードも椅子へ座りながら、自分の脚を少し動かしてみる。

ノーゼスほどではないけれど、いつもより少し重い気はした。

昨日は2試合とも途中から入った。

最初から出ていた6人は、もっと走っている。

前の方ではタンガが席へ座るところだった。

その向こうではヤンナが友達と話している。

いつもの教室だった。

昨日、あれだけ大きな声で喜んでいたのに、一晩経てばまた机と椅子が並ぶ教室へ戻っている。

「でもさ」

ノーゼスが身体を起こした。

「今日は3年と4年だろ?」

「予選?」

「そう」

ザナトスもこちらを見る。

「2年は昨日決まったんだよな」

「うん」

クロードは頷いた。

自分たちが1年の予選をしていた間に、2年の予選も行われていた。

そして今日は3年と4年。

明日は5年。

そこまで終われば、学園大会へ出る5つの学年代表が全部揃う。

「見られないかな」

ノーゼスが言った。

「授業があるでしょ」

エクリアが返す。

「ちょっとくらい」

「昨日だって授業あったでしょ」

「そうだけど」

ノーゼスは口を尖らせた。

クロードも少しだけ同じことを考えていた。

見られるなら見たい。

3年と4年のどちらかは、本戦で自分たちと当たるかもしれない。

昨日はGIFT組と《持たざる者》組の試合を見ることができた。

先に見た動きが役に立った。

そのあと、自分たちも見られていた。

だったら今度も見ておきたい。

けれど今日は、自分たちが試合をする日ではない。

普通に授業がある。

授業の始まりを知らせる魔導の鐘が鳴った。

「あ」

ノーゼスが前を向く。

教室へマーサ・ミレナインが入ってきた。

昨日まで何度も《六環球》のことで顔を合わせていた担任が、今日は教本を持っている。

マーサは教室の前へ立つと地図を広げた。

「では、始めます」

昨日の予選については何も言わなかった。

そのまま世界史の授業が始まる。

クロードも教本を開いた。

マーサが地図を指し、黒板へいくつか言葉を書いていく。

クロードは話を聞きながら、必要なところをノートへ書いた。

少しすると、外から遠くに声が聞こえた気がした。

クロードの手が止まる。

今のは予選だろうか。

窓の外を見る。

ここから運動場は見えない。

当然、誰が走っているのかも分からない。

「……」

クロードはもう一度黒板へ目を戻した。

今は授業中だ。

マーサの話を聞きながらノートへ書いていく。

しばらくすると、またどこか遠くから声が聞こえた。

今度はノーゼスも少しだけ顔を上げた。

エクリアが横目で見る。

ノーゼスは何も言わず黒板へ戻った。

クロードも少しだけ笑って教本へ目を落とした。

気になっているのは自分だけではないらしい。

それでも授業は普通に進んだ。

昨日1年代表になったからといって、世界史がなくなるわけではなかった。

やがて魔導の鐘が鳴る。

マーサが教本を閉じた。

授業が終わると、教室のあちこちで椅子が動いた。

「絶対やってたよな」

ノーゼスがすぐクロードの方を向く。

「何が?」

エクリアが聞く。

「さっきの声」

「ほかの声かもしれないでしょ」

「いや、あれは点入った時の声だって」

「どうして分かるの?」

「昨日いっぱい聞いたから」

「昨日は自分たちも叫んでたけどね」

エクリアが言うと、ノーゼスが少し黙った。

「……そうだけど」

ザナトスが窓の方を見る。

「今から行っても見られないだろ」

「休み時間だけでも」

「どこの試合をやってるかも分からない」

「それもそうか」

ノーゼスが諦めたように椅子へ座り直した。

クロードは窓の外を見る。

見たいと思っても見られない。

場所が分からないわけではない。

試合をしていることも分かっている。

でも自分には自分の授業がある。

昨日は相手を見る時間があった。

今日はない。

それだけのことだった。

「でも、結果は分かるよね」

エクリアが言った。

「終わればな」

「だったらまずそれでいいんじゃない?」

ノーゼスが眉を寄せる。

「誰が代表かだけ分かっても、どう動くか分からないだろ」

クロードはその言葉で少し考えた。

確かにそうだった。

魔法組なのか。

GIFT組なのか。

《持たざる者》組なのか。

それが分かっても、昨日戦った相手と同じ動きをするとは限らない。

同じ魔法組でも、自分たちと別の学年では人が違う。

「見ないと分からないことはあるよ」

クロードが言った。

ノーゼスがこちらを見る。

「だろ?」

「でも、見ても全部分かるわけじゃなかった」

昨日もそうだった。

見ていた動きを使ったら、相手が変えた。

こちらが変えれば、向こうもまた変わった。

ザナトスが頷く。

「結局、中でまた見ることになるんだろ」

「うん」

エクリアも言った。

「まだ相手も決まってないしね」

その通りだった。

今は3年と4年の代表さえ決まっていない。

誰と戦うかを考えるには、まだ少し早い。

次の授業を知らせる魔導の鐘が鳴った。

「また授業か」

ノーゼスが呟く。

「学校だからね」

エクリアが言った。

クロードは教本を入れ替えた。

昨日は予選。

今日は授業。

そのどちらも王立学園で過ごしている時間だった。


◇


その日の授業が終わる頃、マーサがもう一度教室へ入ってきた。

帰り支度を始めていた生徒たちの手が止まる。

「皆さんに伝えておくことがあります」

教室が少し静かになった。

クロードも机の上から顔を上げる。

「今日行われていた3年と4年の予選が終わりました」

ノーゼスがすぐ前を向いた。

周りからも小さな声が上がる。

マーサは続けた。

「3年代表はGIFT組です」

教室の中が少しざわつく。

「そして4年代表は魔法組に決まりました」

クロードは頭の中で並べる。

自分たち1年は魔法組。

3年はGIFT組。

4年は魔法組。

「先生」

誰かが声を上げた。

「2年は?」

「昨日の予選で《持たざる者》組に決まっています」

今度はさっきより少し大きくざわめいた。

ノーゼスが指を折る。

「2年が《持たざる者》で、3年がGIFTで、4年が魔法か」

「きれいに分かれたね」

エクリアが言う。

「だからって動きまで分かれるわけじゃないけどな」

ザナトスが続けた。

クロードも頷く。

昨日戦った《持たざる者》組と、2年の《持たざる者》組は別だ。

GIFT組も同じ。

魔法組ならなおさら、自分たちと同じ種類の組というだけだった。

「選手は?」

ノーゼスが聞く。

マーサは少し首を振る。

「詳しい代表選手については、まだここでは伝えません」

「えー」

ノーゼスの声に、近くから笑い声が上がった。

「明日は5年の予選があります」

マーサが続ける。

「そこで最後の学年代表が決まります」

クロードは昨日ノートへ書いた言葉を思い出した。

『次は、学園大会』

その学園大会へ出る相手が、少しずつ決まってきている。

「5年代表が決まったあと、1年から4年の代表で本戦の組み合わせを決めます」

教室の空気が少し変わった。

今まで聞いていたのは、ほかの学年の結果だった。

でも組み合わせとなれば、自分たちの話になる。

ノーゼスもさっきまでの軽い顔ではなくなっている。

2年。

3年。

4年。

そのどれかと最初に戦う。

けれど、今はまだ分からない。

今日の試合も見ていない。

代表選手が誰なのかも知らない。

どんな速さで走るのか。

どこへ球を送るのか。

誰が声を出すのか。

何も見ていない。

クロードは昨日の最後の試合を思い出す。

相手を見ていても、試合が始まれば変わった。

なら見ていない相手なら、なおさら最初から見るしかない。

「まずは明日ですね」

マーサがそう言って話を終える。

教室の中で再び声が上がり始めた。

ノーゼスがクロードを見る。

「どこと当たると思う?」

「分からないよ」

「予想くらい」

「くじなんだから予想しても分からないでしょ」

エクリアが横から言った。

「それもそうだけどさ」

クロードは少し笑った。

昨日までは、目の前の相手を見ていた。

今日は、その相手すらまだいない。

明日、最後の代表が決まる。

そのあとで、ようやく自分たちが最初に見る相手も決まる。

クロードは教本を鞄へしまった。

学園大会は、もうすぐだった。

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