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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

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131/256

予選開始

代表の8人が決まってから、2週間が過ぎた。

その間も授業はいつもどおり続き、運動場を使える日の放課後には18人で《六環球》の練習を繰り返した。

最初は声が重なり、同じ場所へ2人が走り、見ていたはずの相手を見失うことも多かった。

それでも何度も入れ替わりながら続けるうちに、少しずつ出来ることは増えていった。

クロードもリーゼも補欠だからと外にいるだけではなく、何度もコートへ入った。

そうして迎えたのが、1年生の予選だった。

運動場には、いつも一緒に授業を受けている18人だけではない。

少し離れたところには、これまでほとんど顔を合わせることのなかった1年GIFT組と1年《持たざる者》組の生徒たちが集まっていた。

それぞれの組の前には教師もいる。

魔法組にはマーサ・ミレナイン。

GIFT組の前にいるのはラウディス・ベルガント。

《持たざる者》組の前にはセリーナ・カルディオが立っていた。

その3組の間にワズカーが進み出る。

「これから1年の予選を始める!」

いつもどおり大きな声が運動場へ響いた。

「3組で総当たりだ!」

ワズカーが3つの組を順番に指す。

「勘違いするなよ! 勝った数で決めるんじゃない!」

何人かが頷く。

「2試合で取った点の合計だ! 一番多く取った組が1年代表になる!」

クロードたちにとっては、すでに聞いていた内容だった。

けれど本番を前に聞くと、少しだけ意味が違って感じる。

負けても、それまでに取った点は残る。

勝っても、それだけで決まるわけではない。

「それから競技中の魔法とGiftは禁止だ!」

GIFT組の方からも返事が上がった。

「自分の身体で走れ! 自分の目で見ろ! 仲間と動け!」

そこでラウディスが、組んでいた腕をほどいた。

「ところで、最初は私たちと《持たざる者》組でしたね」

「そうだ!」

ワズカーが答える。

ラウディスの視線が魔法組へ向いた。

「魔法組は、両方を先に見られるわけですか」

マーサがわずかに首を傾ける。

「順番を決めたのは私ではありませんよ?」

「もちろん分かっています」

ラウディスはそう言いながらも、少しだけ笑っていた。

すると今度はセリーナが口を開く。

「では私たちも、後で魔法組の試合をしっかり見せてもらいましょう」

「ええ、どうぞ」

マーサは穏やかに答えた。

「うちの皆さんも、この2週間よく頑張っていましたから」

「ほう」

ラウディスの眉が少し上がる。

セリーナもマーサを見る。

3人の間に、妙な沈黙が落ちた。

ワズカーが大きく息を吸った。

「教師が先に勝負を始めるな!」

魔法組の何人かから笑い声が漏れた。

マーサは何もなかったように微笑み、ラウディスとセリーナもそれぞれ自分の組へ戻っていく。

「最初に見られるのは得だな」

ノーゼスがクロードの隣で言った。

「うん」

クロードもGIFT組と《持たざる者》組を見る。

どちらも6人がコートへ入っていくところだった。

「でも次は、向こうも僕たちを見るよ」

「まあ、それはそうだな」

「だったら今見られるものは見ておきましょう」

エクリアが2人の反対側から言った。

「どっちかとは、このあとすぐ戦うんだから」

クロードは頷いた。

6つの門の近くには、それぞれ審判が立っている。

コート中央には球が1つ置かれた。

GIFT組と《持たざる者》組の6人が、それぞれ自分たちの位置へ散っていく。

知らない名前ばかりだった。

けれど今は、名前を覚えることより動きを見たかった。

ワズカーが手を上げる。

「始め!」

両組が同時に動いた。

中央の球を先に取ったのはGIFT組のレオナスだった。

取った瞬間、そのまま前へ出る。

1歩。

2歩。

前から《持たざる者》組のカルディが入ってきた。

レオナスは右へ向きを変え、すぐ近くを走っていたアルディナへ球を渡す。

アルディナは止まらない。

受け取ったまま2歩進み、正面の門へ投げると、球は横木の下を抜けた。

「1点!」

審判の声が上がる。

GIFT組から歓声が上がった。

「悪くありませんね」

ラウディスが満足そうに言う。

セリーナはコートから目を離さなかった。

「まだ1点ですよ」

球が中央へ戻される。

今度は《持たざる者》組が先に動いた。

ローディスが取った球をすぐ横へ渡し、受け取ったエルシーナが前へ出る。

GIFT組の1人が正面へ身体を入れた。

ぶつからない。

押さない。

けれどそのままでは前へ進めない。

エルシーナは足を止める前に後ろへ球を戻した。

そこにはさっき球を渡したローディスがもういない。

少し左へ走っていた。

「そっち!」

声が飛ぶ。

球が左へ渡る。

GIFT組の視線もそちらへ動いた。

その隙に中央が空いた。

クロードは思わずそこを見る。

別の《持たざる者》組の生徒が入ってくる。

返された球を受け、そのまま空いた門へ投げた。

「1点!」

今度は《持たざる者》組から声が上がった。

「……同じだ」

クロードが呟く。

「何が?」

ノーゼスが聞く。

「球を持ってない人が動いて、空いたところが変わった」

「いつも俺たちがやってたやつだな」

「うん」

ただ、相手が違う。

走る速さも、球を離す場所も、声を出すタイミングも違っていた。

同じ《六環球》なのに、見える動きは同じではない。

試合はそのまま続いた。

GIFT組が1点を取れば、《持たざる者》組も取り返す。

《持たざる者》組が門の前を塞げば、GIFT組は別の門へ走る。

クロードは球だけを追わないようにした。

今持っている人。

次に受けそうな人。

何も持っていないのに走り始めた人。

守っている3つの門。

その全部を見ようとすると、やはり遅れる。

だから今は、球の周りと、その少し先を見る。

GIFT組のセルディオスが球を受けた。

前へ出る。

《持たざる者》組の1人が正面から進路へ入った。

セルディオスは身体を捻って横へ逃れる。

もう1人が近づく。

1歩。

2歩。

さらに向きを変える。

クロードも足を数えていた。

5歩。

6歩。

セルディオスが球を投げようとした時、身体がもう一度前へ出た。

審判の声が飛ぶ。

「《越歩》!」

セルディオスが止まった。

「《持たざる者》組から《返球》!」

球が相手側へ渡される。

「あれが《越歩》か」

近くでタンガが言った。

「6歩まではいいんだよね」

リーゼが確かめる。

クロードは頷く。

「今のが7歩目」

練習でも教わっていた。

けれど本番の速さで見ると、自分で走っている時より数えるのが難しい。

そこから《持たざる者》組が素早く再開した。

GIFT組が戻り切る前に球が動く。

ラウディスの表情が少し変わった。

「切り替えが早いですね」

「練習しましたから」

セリーナが答える。

少し前に聞いた言葉だった。

マーサが2人の間で小さく笑った。

試合は4対4になり、さらに5対5まで進んだ。

どちらが取っても終わる。

GIFT組が球を持つ。

レオナスからアルディナへ渡る。

アルディナが前へ出ようとしたところへ、カルディが正面から入った。

アルディナは横へ逃げる。

その先にも1人いる。

球が後ろへ戻された。

今度は《持たざる者》組が手を伸ばした。

指先が球へ触れる。

球が地面へ落ちた。

一斉に何人も動く。

先に拾ったのはローディスだった。

「右!」

声が飛ぶ。

ローディスは右を見た。

けれど投げない。

そのまま2歩進む。

GIFT組の2人が寄った。

次の瞬間、ローディスの球は反対側へ飛んだ。

誰もいなかったはずの場所へ、エルシーナが走り込んでいる。

受け取る。

その前の門が空いた。

エルシーナが投げた。

球が門を抜ける。

「1点!」

一瞬遅れて、《持たざる者》組から大きな声が上がった。

ワズカーが腕を上げる。

「そこまで!」

コートの中で何人かが足を止め、息を吐く。

「6対5! 《持たざる者》組!」

セリーナがゆっくり息を吐いた。

「まず1つですね」

ラウディスはコートを見たまま答える。

「勝敗は、ですね」

セリーナがそちらを見る。

「こちらには5点あります」

「ええ、分かっています」

2人とも笑っていた。

クロードは得点を頭の中で並べる。

《持たざる者》組は6点。

GIFT組は5点。

負けた方の5点も消えない。

次の試合で何点取るかによって、まだいくらでも変わる。

「勝つだけじゃ駄目なんだな」

ノーゼスも同じことを考えていたらしい。

「うん」

「6点取らないと勝てないんだから、勝てば6点は入るけど」

エクリアが言う。

「負けても5点なら、ほとんど差がないわね」

その言葉にクロードはもう一度コートを見る。

さっきの1点。

最初の1点。

途中で取り合った1点。

どれも同じ1点だった。

ワズカーが中央へ歩いていく。

「次だ!」

魔法組の空気が変わった。

「魔法組! GIFT組! 準備しろ!」

エクリアが先に前へ出る。

ノーゼス、ザナトス、ミナ、ヤンナ、タンガも続いた。

クロードとリーゼはその場に残る。

最初に入る6人は、練習を始めた時から何度も一緒にコートへ立ってきた6人だった。

向こうではGIFT組も次の6人を整えている。

さっきまで外から見ていた相手。

どこへ走るのか。

誰へ渡すのか。

どこで向きを変えるのか。

少しは見えた。

けれどクロードは、昼間の剣術で向かい合ったランを思い出す。

外から分かる距離と、自分がその場所へ立った時の距離は同じではなかった。

《六環球》なら、もっと多くの人が動く。

見ていたことが、そのまま使えるとは限らない。

それでも、見なかったよりは分かることがある。

「クロード」

リーゼが隣から声をかける。

「うん?」

「呼ばれたらすぐ行けるようにしとこう」

「うん」

クロードはコートから目を離さなかった。

中央へ球が置かれる。

エクリアたちが構える。

GIFT組の6人も位置についた。

今度は、自分たちの組が見られる番だった。

ワズカーの手が上がった。

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