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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』  作者: 黎明の星


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12/22

畑で出会った少女

「ミーニャ」

クロードが名前を繰り返すと、少女は小さく頷いた。

それから、まだクロードの手にある石を見る。

「それ、持って帰るの?」

「うん。少し調べたいから」

「石を?」

「石を」

ミーニャは不思議そうな顔をした。

クロードには、どうしてそこまで不思議がられるのかが分からない。

「ミーニャは調べないの?」

「調べないよ」

「なんで?」

「石だから」

「石だから?」

「うん」

どうやら話が一周して戻ってきたらしい。

クロードは手の中の石を見た。

色も違うし、表面の様子も家の近くで拾うものとは少し違う。何でできているのかも分からない。

分からないことがいくつもある。

「でも、家の近くの石と違うよ」

「そうなの?」

「たぶん」

「たぶんなの?」

「ちゃんと比べてないから」

ミーニャはますます分からないという顔をした。

「変なの」

そう言われて、クロードは少し考えた。

「そうかな」

「だって石だよ?」

「うん。だから気になる」

「やっぱり変」

今度は少し笑いながら言われた。

馬鹿にされている感じはしなかったので、クロードも笑った。

「ミーニャは何してたの?」

尋ねると、ミーニャは持っていた籠を少し持ち上げた。

中には草や小さな石が入っている。

「お手伝い」

「畑の?」

「うん。草取ったり、石拾ったり」

「その石、もらってもいい?」

クロードが籠を覗き込むと、ミーニャは一歩だけ籠を引いた。

「いるの?」

「見たい」

「こんなの、まだいっぱいあるよ」

「じゃあ、いっぱい見たい」

「変なの」

また言われた。

クロードは否定しなかった。

ミーニャは籠の中を少し探り、土のついた石を一つ取り出した。

「これ?」

「見せて」

受け取った石を先ほど拾ったものと並べる。

似ている。

けれど表面の粒の大きさが少し違うようにも見えた。

クロードが二つを何度も見比べていると、ミーニャが横から覗き込んできた。

「何が違うの?」

「まだ分からない」

「分からないのに見てるの?」

「分からないから見てる」

ミーニャが黙った。

少ししてから、しゃがみ込む。

二人で石を見た。

「……同じじゃない?」

「似てるけど、こっちの方が少しざらざらしてる」

「ほんと?」

「触ってみる?」

ミーニャは指先で二つの石を順番に触った。

「……分かんない」

「ぼくもまだよく分かんない」

「じゃあ同じじゃない?」

「違うかもしれない」

「同じかもしれないよ?」

「うん」

「どっち?」

「だから調べるんだよ」

ミーニャはしばらくクロードを見ていた。

「やっぱり変」

三度目だった。

「クロード」

少し離れたところからエリスに呼ばれ、クロードは振り返った。

「畑の邪魔にならないようにね」

「うん!」

返事をしてから、クロードはミーニャを見る。

「母さま」

「ふうん」

ミーニャもエリスを見た。

「クロードのお母さん、きれいだね」

「うん」

「髪、クロードと同じ」

「母さまからもらったんだって」

クロードが自分の黒い髪を摘まむと、ミーニャは自分の髪にも触れた。

「私もお母さんと同じ髪色なの」

「そうなの?」

「うん。お父さんは違うよ」

ミーニャは立ち上がると、また籠を持った。

「お手伝いしないと」

「まだ石拾うの?」

「石だけじゃないよ。草も取るの」

「毎日?」

「毎日じゃないけど、よくやるよ」

「大変?」

「大変」

返事は早かった。

「石拾うの嫌い?」

「嫌い」

「なんで?」

「重いし、いっぱいあるし、拾ってもまた出てくるから」

「また出てくる?」

クロードの目が動いた。

「どこから?」

「知らないよ」

「土の中?」

「たぶん」

「どのくらい――」

「クロード」

今度のエリスの声には、少しだけ笑いが混じっていた。

クロードは口を閉じた。

ミーニャが笑う。

「質問ばっかり」

「気になるから」

「変なの」

四度目だった。

それでも、最初に言われたときより少し楽しそうだった。

クロードも立ち上がった。

「ぼくも拾おうか?」

「石?」

「うん」

「持って帰るの?」

「全部は持って帰らないよ」

木箱には限りがある。

それに畑の石を勝手に全部持ち帰るわけにもいかない。

「違うのがあったら一つだけ欲しい」

「じゃあ、それ以外はこっち」

ミーニャが籠を差し出した。

クロードは一度エリスを見た。

「母さま、手伝ってもいい?」

エリスは近くで作業していた畑の者に確認してから頷いた。

「少しだけなら。でも作物の近くは踏まないこと」

「うん」

クロードはミーニャの後について歩き始めた。

畑の中には、本当に石が多かった。

さっきまでなら拾うたびに表面を眺めていただろう。

けれど今は、ミーニャがどこを歩くのかも見る。

作物を踏まない場所を選び、草を見つければ立ち止まり、石があれば籠へ入れる。

クロードも真似をした。

「これは?」

「石」

「違う。取っていい?」

「いいよ」

「これは?」

「それ草じゃないよ!」

伸ばした手を止める。

「違うの?」

「それ抜いたら怒られるよ」

「なんで?」

「育ててるやつだから!」

クロードは慌てて手を引いた。

見れば分かると思っていた。

けれど自分には、抜いていい草と育てているものの区別すらつかない。

「似てる」

「全然違うよ」

ミーニャは即答した。

今度はクロードが彼女を見る番だった。

「分かるの?」

「分かるよ。毎日見てるもん」

その言葉に、クロードはさっきエリスから聞いたことを思い出した。

農家の人たちは毎日畑を見る。

ミーニャも、その中にいる。

自分には同じように見えるものでも、彼女には違って見えている。

石を見たときとは逆だった。

クロードは少し面白くなった。

「教えて」

「何を?」

「どれを抜いていいか」

ミーニャは一瞬きょとんとしてから、少し得意そうに笑った。

「いいよ」

それからしばらく、クロードはミーニャに教えてもらいながら草と石を拾った。

当然、何度か間違えた。

そのたびにミーニャが止める。

「それ違う」

「こっち?」

「それは取っていい」

「これは?」

「それも違う」

「難しい」

「簡単だよ」

「ぼくには難しい」

そう言うと、ミーニャは少しだけ嬉しそうだった。

やがて籠が重くなってくる。

ミーニャが両手で持ち上げたので、クロードも片側を持った。

「重い」

「だから嫌いって言ったでしょ」

「ほんとだ」

二人で畑の端まで運ぶ。

そこには拾った石を集めた場所があった。

クロードは積まれている石を見て足を止めた。

「……いっぱいある」

「だから言ったでしょ」

「これ全部見ていい?」

「やだ」

即答された。

「なんで?」

「お手伝い終わらないもん」

それもそうだった。

クロードは石の山から視線を外した。

危なかった。

少し休むことになり、二人は畑の端の日陰に座った。

エリスたちは少し離れたところで畑の者と話している。

クロードは水を飲んでから、畑を眺めた。

近くで見た作物は、やはり大きさが揃っていない。

「ミーニャ」

「なに?」

「今年、あんまり育ってないんだって」

ミーニャの顔から、さっきまでの笑いが少し消えた。

「うん」

「去年はもっと育ってた?」

「もっと大きかったよ」

「覚えてるの?」

「うん。お父さんもお母さんも言ってるし」

ミーニャは膝を抱えた。

「今年は駄目かもしれないって」

「駄目?」

「いっぱい採れないかもしれないって」

クロードは畑を見る。

屋敷で聞いたときは、不作という言葉だった。

数字や量の話のように思っていた。

けれどミーニャにとっては違うらしい。

「困るの?」

「困るよ」

「どうして?」

「だって、これがお仕事だもん」

ミーニャは当たり前のように言った。

「いっぱい採れなかったら、お父さんもお母さんも困るよ」

クロードは黙った。

畑の育ちが悪い。

原因が分からない。

それを面白いと思った。

知らないことだから、知りたいと思った。

その気持ちは今も変わらない。

けれど同じ畑を見て、ミーニャは家族のことを考えている。

同じものでも、見る人によって違って見える。

さっきの石と同じだった。

「元気になるといいね」

クロードが言うと、ミーニャは頷いた。

「うん」

少ししてから、小さな声で続ける。

「だから毎日お願いしてる」

「お願い?」

「神さまに」

クロードはミーニャを見る。

「なんて?」

「ちゃんと大きくなりますようにって」

ミーニャは畑へ顔を向けた。

「元気になりますようにって」

それだけ言って、水をもう一口飲んだ。

クロードも畑を見る。

神が本当にいることを、クロードは知っている。

少なくとも、自分は一柱に会った。

けれど祈れば何でも叶うわけではないことも、なんとなく分かっている。

だから何かを言おうとして、やめた。

ミーニャが毎日そう願っている。

今は、それだけでよかった。

「叶うといいね」

「うん」

風が吹き、畑の葉が揺れた。

大きなものも、小さなものも、少し色の悪いものも一緒に揺れている。

クロードはそれを眺めながら、手の中に残した一つの石を握った。

畑を見に来ただけだった。

知らない石を見つけた。

知らない女の子に出会った。

そして、自分には同じに見える草を見分けられるその子が、毎日この畑のために祈っていることを知った。

まだ分からないことは、たくさんあった。

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