↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
116/241

先生が2人

次の魔法実習の日、クロードたちが魔法演習場へ入ると、いつもと違うことに気づいた。

ガンザスの隣に、見たことのない女性が立っている。

「先生が二人いる」

ノーゼスが小さな声で言った。

クロードもそちらを見る。

女性は集まってくる生徒たちを穏やかな表情で見ていた。

やがて全員が揃うと、ガンザスが手を叩いた。

「よーし、始めるぞー」

ざわついていた声が少しずつ収まっていく。

「その前に、今日は先生がもう一人いる」

ガンザスが隣へ視線を向けた。

女性が一歩前へ出る。

「マレーナ・シナカントです」

柔らかな声だった。

「あらあら〜、そんなに固くならなくても大丈夫ですよ」

何人かが顔を見合わせる。

マレーナはその反応にも笑みを崩さなかった。

「今日から少し、皆さんの魔術操作を見せてもらいますね」

クロードはガンザスを見る。

前の実習では、前期にやったことを一通り振り返った。

今日はその続きなのだろうか。

「先に言っとくが、新しい《印》はやらないぞー」

ガンザスが言った。

「まだ魔法基礎で習ってないからな」

何人かが頷く。

「今日は前期にやったことの続きだ」

そこでガンザスは一度、生徒たちを見回した。

「前の実習で全員の様子を見たから、今日はちょっとやり方を変える」

クロードも姿勢を正す。

「ピア・マールコ、ベン・ジャスター、マミヤ・シーナ、レクシア・オルフェリア、ミナ・シーズルノ」

名前を呼ばれた五人がそれぞれ顔を上げた。

「五人は今日はマレーナ先生に見てもらえ」

「え?」

最初に声を出したのはベンだった。

ピアも隣を見る。

レクシアはガンザスとマレーナを交互に見ていた。

クロードも少し考える。

昨日、ピアは《空中浮遊》を繰り返していた。

ベンは《静止》まで進んでいる。

マミヤも風を浮かせていたし、レクシアも土を浮かせていた。

ミナも水を止めようとしていた。

クロードは自分の右手を見る。

僕はまだ《丸くする》もできていない。

「先生」

クロードが手を挙げる。

「ん?」

「僕は?」

ガンザスがクロードを見る。

「お前はこっちだ」

「でも僕、《丸くする》もまだできてません」

呼ばれた五人の視線もクロードへ向いた。

ガンザスは一度頷いた。

「ああ、できてないな」

あっさり言われた。

「じゃあ、どうして?」

「出来る順に分けてるんじゃないからだ」

ガンザスが五人を見る。

「この五人は前期に《空中浮遊》や《静止》まで実際にやってる」

ピアたちが黙って聞いている。

「その中で、前の実習を見てて、もう少し近くで動きを見た方がいいと思ったやつをマレーナ先生に頼んだ」

ガンザスはクロードへ視線を戻した。

「お前はまだ《丸くする》だろ?」

「はい」

「なら、まずそこだ」

クロードは頷きかけたが、ガンザスはさらに続けた。

「それに、お前の雷はちょっと事情が違う」

「雷?」

「ああ」

ガンザスが地面を軽く踏む。

「前みたいにどこへ飛ぶか分からなくなることもあるし、必要なら俺が壁を出せる」

クロードは以前、雷が手元から外れて地面へ落ちた時のことを思い出した。

あの時もガンザスが土の壁を作った。

「だから雷は今まで通り俺が見る」

「分かりました」

今度はクロードも素直に頷いた。

「他のやつも同じだからな」

ガンザスが全員を見る。

「こっちが出来るやつで、向こうが出来ないやつって分け方じゃない」

少し離れたところでザナトスが腕を組んでいる。

「今やってるところが違うだけだ」

ガンザスは手を叩いた。

「よし、それぞれ始めろー」

生徒たちが動き始める。

呼ばれた五人はマレーナのところへ集まり、それ以外の生徒たちはいつものように実習場へ広がった。

クロードも自分の場所へ向かう。

ノーゼスは土を出し、エクリアは水の《印》を確認している。

ザナトスは少し離れた場所で火を浮かせ始めた。

他の場所でも風や光が現れ、実習場のあちこちで前期に覚えた操作が始まっていく。

クロードは右手を前へ出した。

今日も《丸くする》だ。

魔力を動かし、雷を手元へ集める。

細い雷が現れた。

中心へ集める。

前よりまとまるようにはなっている。

それでも形を保とうとすると、少しずつ外へ逃げようとする。

「急ぐなよー」

ガンザスの声が聞こえた。

クロードは雷から目を離さない。

「はい」

さらに少し集める。

輪郭が丸いものへ近づく。

バヂッ。

一部が外へ跳ね、残りも続いて弾けた。

クロードは手を下ろす。

まだだ。

もう一度やろうとして、向こうから声が聞こえた。

「先生、また下がってきます」

ピアだった。

クロードはそちらを見る。

ピアの前では丸い水が宙に浮いている。

けれど少しずつ高さが下がっていた。

マレーナはすぐには手を出さず、水の動きを見ている。

「ピアさん、今どこまでは出来ていると思いますか?」

「浮かせるところまでは……」

「そうですね」

マレーナが頷く。

「では、落ち始める少し前に何をしているか見てみましょうか」

「落ちる前?」

「はい」

「あらあら〜、落ちてから直そうとすると忙しいですからね」

ピアがもう一度《印》を組む。

今度は水だけでなく、自分の手元も見ながら試している。

その隣ではベンが光を浮かせていた。

止まったように見えた光が、ゆっくり横へ動く。

「あっ」

ベンが慌てて手を動かす。

「今のところです」

マレーナの声が飛んだ。

ベンが止まった。

「今、動いた光を戻そうとして大きく動かしましたね」

「はい」

「まず、動き始めるところを見てみましょう」

ベンは光を消し、最初からやり直す。

少し離れたところではマミヤが風を浮かせていた。

風が横へ流れ始めると、すぐに手を動かそうとする。

「マミヤさん」

「はい」

「今は《空中浮遊》を確かめているんですよね?」

「はい」

マレーナが風を見る。

「なら、横へ動いたことまで一度に直そうとしなくて大丈夫ですよ」

マミヤが自分の手を見る。

「浮かせることと、そこへ止めることを一緒にしようとしてませんか?」

「……してるかも」

「あらあら〜、二つ一緒にやったら、どっちで失敗したのか分からなくなりますからね」

マミヤは一度風を消した。

「じゃあ浮かせるだけ」

「まずはそれを見ましょう」

その間にもマレーナはレクシアの土を確認し、ミナの水が落ちるところを見るために何度か場所を移っていた。

五人とも同じことをしているわけではない。

教えられていることも少しずつ違っていた。

クロードはそれを見てから、自分の手へ視線を戻した。

確かに、出来る人と出来ない人で分けたわけではないらしい。

自分は《丸くする》。

ピアは《空中浮遊》。

ベンは《静止》。

マミヤは浮かせるところをもう一度確かめている。

それぞれ違う。

「クロードー」

ガンザスに呼ばれた。

「はい」

「人の見てる場合じゃないぞー」

「あ」

近くでノーゼスが笑った。

「また始まった」

「何が?」

「見てたら気になるやつ」

「だって違ったから」

「はいはい、続きやれ」

ガンザスが笑いながら言う。

クロードはもう一度右手を前へ出した。

《印》を組み、雷を集める。

今度はさっきよりゆっくり動きを見る。

外へ逃げようとする雷を抑えながら、少しずつ中心へ寄せる。

まだ丸くはならない。

それでも、昨日より見えるものは増えている。

実習場の向こうでも、五人がそれぞれ違う魔法と向き合っていた。

同じ授業を受けてきたのに、今いる場所は同じではない。

だから今日から、教わり方も少しだけ変わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。