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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

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前の振り返り

始期式の翌日から、王立学園の授業はいつもの時間割へ戻った。

朝から教室へ集まり、1限目の授業を終える。

小休みを挟んだあと、クロードたちは教本を持って魔法演習場へ向かった。

2限目と3限目は、ガンザス・ドルナードの魔法実習だった。

「今日は前期にやったことを一通り見ていくぞー」

ガンザスの声が実習場に響く。

「休みの間に練習したやつもいるだろうし、あんまりやってないやつもいるだろうからな」

何人かが顔を見合わせる。

「できるようになったところも、まだ難しいところも、自分で確かめろ」

それだけ言うと、ガンザスは生徒たちをそれぞれの場所へ散らした。

すぐに実習場のあちこちで魔法が現れ始める。

火が揺れ、水が形を変え、土が地面から持ち上がる。

少し離れたところでは光が浮かび、その向こうでは風が渦を作っていた。

クロードも自分の場所へ移動したが、すぐには魔法を使わなかった。

周りでは前期にやった操作を順番に確かめている。

マミヤ・シーナは風を回しながら丸く整え、それを浮かせようとしていた。

一度浮いた風が横へ流れ、マミヤが手を止める。

「また動いた」

教本を見直してから、もう一度最初からやり直す。

水属性のピア・マールコは、丸くした水を空中へ浮かせていた。

形は保っているが、高さが少しずつ下がっていく。

「先生、これ浮いてることになりますか?」

近くを歩いていたガンザスが足を止めた。

「一瞬だけならな」

「一瞬だけ……」

「もう一回やってみろ」

「はい」

ピアは水を下ろし、もう一度《印》を組み始めた。

別の場所では、ベン・ジャスターが光を空中で止めようとしている。

光は一度その場に留まったが、少しずつ横へ動いた。

「あー、またずれた」

「焦るなよー」

離れたところからガンザスの声が飛ぶ。

「はい!」

ベンは返事をすると、教本へ目を落とした。

土属性のレクシア・オルフェリアは、地面から持ち上げた土と向き合っている。

少し浮いたところで土が落ち、レクシアは眉を寄せた。

その近くではノーゼスが土を浮かせ、落ちる前にもう一度操作を加えている。

昨日見た壁だけではなく、前期に習った操作も続けているらしい。

火属性のザナトスは、浮かせた火をその場へ留めていた。

少し揺れたところで手を動かし、位置を戻す。

「どうだ」

なぜかこちらを見る。

「何が?」

「見てなかったのかよ!」

「自分のをやろうと思ってたから」

「見とけよ!」

「おーい、ザナトス」

ガンザスの声が飛ぶ。

「他人に見せる前に自分の続きやれー」

「やってます!」

近くから笑い声が上がった。

ザナトスは何か言いたそうにしながらも、火へ向き直った。

クロードも前を見る。

前期にやったこと。

《丸くする》。

《空中浮遊》。

《静止》。

《放つ》。

《曲がる》。

自分の場合、全部を同じように出来るわけではない。

「クロード」

名前を呼ばれて振り返る。

ガンザスがこちらへ歩いてきていた。

「休みの間も雷は使ってたんだろ?」

「はい」

「じゃあ《放つ》から見せてみろ」

「はい」

クロードは的の方を見る。

周囲に人がいないことを確認してから位置を取る。

右手を前へ向け、《印》を組む。

休みの間、毎日繰り返してきた。

雷を出す。

どちらへ動こうとするのかを見る。

逸れれば《曲がる》で戻す。

何度も繰り返すうちに、以前ほど雷が大きく暴れなくなった。

雷の動きも、少しずつ見えるようになってきた。

魔力を動かす感覚も前とは違う。

クロードは雷を放った。

光が的へ向かって走る。

少しだけ右へずれようとする。

その動きが見えたところで、《曲がる》を入れる。

雷の向きが戻る。

今度はわずかに左へ流れる。

もう一度、小さく修正する。

雷は大きく蛇行することなく進み、的へ当たった。

「おお」

少し離れたところから声がした。

クロードが振り返ると、何人かがこちらを見ている。

ザナトスも見ていた。

「前より全然曲がらねえじゃねえか」

「曲げてるよ」

「は?」

「曲がりそうになったところを戻してる」

ザナトスが的とクロードを交互に見る。

ガンザスも同じように的を見ていた。

「もう一回いけるか?」

「はい」

クロードは再び構える。

今度も雷を放ち、動きを見る。

逸れ始めたところで《曲がる》。

一度戻し、また小さくずれたところでもう一度修正する。

雷は再び的へ届いた。

ガンザスが頷いた。

「かなり良くなったな」

クロードは手を下ろす。

「《曲がる》も前より早く入れられてる」

「はい」

「雷自体も前ほど暴れてないな」

クロードも頷く。

自分でもそれは感じていた。

《曲がる》を使い続けたことで、雷がどう動くのかを前より長く見られるようになった。

見えるようになったから、魔力の動かし方も少しずつ変えられた。

そうしているうちに、以前ほど大きく逸れなくなっていた。

「休みの間、ちゃんとやってたみたいだな」

「毎日やりました」

「毎日?」

近くで聞いていたノーゼスが笑う。

「本当に毎日やってたんだな」

「言ったでしょ」

その向こうでエクリアも小さく笑った。

ガンザスは少しだけ笑ってから、クロードの手元を見る。

「じゃあ次だ」

「はい」

「《丸くする》は?」

クロードも自分の手を見る。

「やります」

《丸くする》は、まだ出来ていない。

けれど休みに入る前とは、魔術制御そのものが変わっている。

今ならどうなるだろう。

クロードは《印》を組んだ。

魔力を動かし、雷を手元へ集める。

細い光が現れる。

以前なら、ここから形を作ろうとしたところで外へ逃げることが多かった。

クロードは雷の動きを見る。

外へ飛び出そうとするものを抑えながら、中心へ集めていく。

少しずつまとまる。

「……あ」

自分でも分かった。

前より集まっている。

ばらばらだった雷が近づき、輪郭が丸いものへ近づいていく。

まだ足りない。

もう少し。

クロードは操作を続ける。

その瞬間、まとまりかけた雷の一部が外へ跳ねた。

バヂッ。

続くように、残っていた雷も弾ける。

クロードは手を止めた。

消えた雷のあった場所を見る。

「惜しかったな」

ガンザスが言う。

クロードは顔を上げた。

「前より丸くなってました?」

「ああ」

ガンザスはすぐに頷いた。

「前よりずっとまとまってた」

クロードはもう一度、自分の手を見る。

「でも最後に弾けました」

「そこはまだだな」

「はい」

出来たわけではない。

けれど、前とは違った。

そこまで考えたところで、少し離れた場所から声が上がる。

「先生ー!」

ガンザスが振り返る。

ミナ・シーズルノが手を挙げていた。

「水が止まったと思ったら落ちました!」

「今行くぞー」

ガンザスはそう答えると、クロードを見る。

「もう何回かやってみていいぞ、無理はするなよ」

「はい」

ガンザスはミナの方へ歩いていく。

その途中でベンのところへ寄り、少し話をしてから、今度はピアの魔法を見る。

実習場の中では、他の生徒たちもそれぞれ自分の課題を続けていた。

出来る操作も違えば、止まるところも違う。

休みの前より進んでいる者もいる。

同じところを何度もやり直している者もいる。

ガンザスはその間を歩きながら、時々足を止めていた。

3限目に入っても、振り返りは続いた。

クロードも《丸くする》を何度か繰り返した。

最初よりまとまる。

けれど、最後には弾ける。

何度やっても成功にはならなかった。

それでも、前より長く形を保てる。

弾けるところまで、雷を見る時間も増えている。

魔導の鐘が鳴る。

「今日はここまでだー」

ガンザスの声で、生徒たちがそれぞれ魔法を止め始めた。

クロードも手を下ろす。

最後に弾けた雷を思い出す。

前よりまとまった。

でも、最後に崩れた。

そこをもう少し長く見られたら。


◇


授業を終え、午後の授業まで終わったあと、クロードは寮の自室へ戻った。

机の近くに置いてある球へ目を向ける。

雷鳴鋼の球。

以前、ゴルダの工房で作ってもらったものだった。

普通の鉄球と同じ大きさで作ってもらい、何度も《丸くする》の練習に使ってきた。

クロードは球を持ち上げる。

軽いわけではない。

抱えるようにして部屋を出た。

利用の確認を済ませ、魔法演習場へ入る。

空いている場所まで雷鳴鋼の球を運び、地面へ置いた。

以前確かめた時、普通の鉄球より雷鳴鋼の方が雷は表面へ長く残った。

だから《丸くする》の操作も、その分だけ長く続けられた。

ただし、球の表面に沿って丸く見えたからといって、《丸くする》が出来たことにはならない。

ガンザスにもそう言われている。

クロード自身も分かっていた。

これは答えではない。

途中を確かめるためのものだ。

クロードは球の前に座り、右手を向けた。

「やってみよう」

少ない雷を出す。

雷が球の表面へ走った。

以前より、その動きが見える。

クロードは《丸くする》の操作を始める。

球面を走る雷を外へ逃がさないようにしながら、まとまりを保つ。

雷が球の表面へ残る。

前にも見た光景だった。

けれど、自分の操作は前とは違う。

どこへ動こうとしているのか。

どこで外へ逃げようとしているのか。

それを見ながら、魔力を動かす。

バヂッ。

雷の一部が球から外れた。

クロードは手を止める。

「今の……」

もう一度やる。

雷を出し、球へ沿わせる。

《丸くする》を続ける。

今度はさっきより長く残った。

それでも最後には外へ逃げる。

クロードは何度か同じことを繰り返した。

前期にも使っていた球。

同じ雷鳴鋼。

変わったのは、自分の方だった。

以前より操作できる。

以前より雷を見ていられる。

だから、失敗するまでの途中も前より長く見える。

クロードは球の表面を見つめた。

出来てはいない。

けれど、前より見えるものは増えていた。

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