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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

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静かな学園

王立学園の門が見えてきた頃には、空はもう夕方の色に変わっていた。

クロードは馬車の窓から外を眺めながら、ようやく着いたと小さく息を吐いた。

本当ならもう少し早い時間に着く予定だった。

けれど昼を過ぎた頃、馬の一頭の様子が少しおかしくなった。

歩けなくなったわけではなかったが、いつもより明らかに動きが鈍く、無理に走らせるのはやめた方がいいということになった。

学園が始まるまではまだ日がある。

急いで帰らなければならない理由もなかったので、途中でしっかり休ませてから再び出発した。

そのぶん予定より遅くなったが、馬もその後は落ち着いている。

「無事に着いたなら、それでいいか」

馬車は速度を落とし、そのまま学園の門をくぐった。

久しぶりに見る校舎や寮は、休みに入る前と何も変わっていない。

けれど雰囲気はずいぶん違っていた。

人が少ない。

遠くに何人か生徒らしい姿は見えるが、普段のようにあちこちから話し声が聞こえてくることはなかった。

校舎へ向かう道も、運動場の周りも静かだった。

「まだあまり戻ってきてないんだな」

学園が始まるまで九日もあるのだから当然かもしれない。

クロードのように早めに戻ってきている生徒の方が少ないのだろう。

馬車が止まり、クロードは荷物を確認してから外へ降りた。

二日間馬車に揺られていた身体を伸ばす。

「んー……」

腰や脚が少し固くなっている。

毎朝身体を動かしていても、長く座ったままでいる疲れは別だった。

荷物を降ろすのを手伝ってもらいながら、クロードは男子寮へ向かった。

歩いていても、やはり人は少ない。

すれ違う生徒もほとんどおらず、誰かに呼び止められることもなかった。

それが少し楽だった。

久しぶりに戻ってきたのだから、知っている顔に会えば挨拶くらいはする。

けれど二日間の移動を終えたばかりで次々に話しかけられたい気分でもない。

今の静けさは、ちょうどよかった。

男子寮へ入り、自分の部屋まで戻る。

扉を開けると、休みに入る前と同じ部屋がそこにあった。

ベッドと机と椅子。

見慣れていたはずなのに、しばらく離れていただけで少し懐かしく感じる。

「帰ってきたな」

荷物を部屋へ入れ、まず鞄をベッドのそばへ置いた。

服や日用品はあとで片づければいい。

最初にクロードが取り出したのはノートだった。

机の上へまとめて置く。

次に木剣を取り出した。

王都へ持って帰るのを忘れるはずもない。

実家でも毎朝使っていたものだ。

クロードは木剣を邪魔にならない壁際へ置いた。

明日の朝もいつも通り身体を動かすつもりだった。

学園にいる間なら第2運動場が使える。

まだ生徒が少ない今なら、朝早く行けば普段よりさらに静かに鍛錬できそうだった。

「明日からでいいか」

今日はもう夕方だ。

ここから木剣を持って運動場へ行く気にはならなかった。

荷物を運び終えてから、最低限必要なものだけ片づけていく。

着替えをしまい、使う本を棚へ戻し、机の周りを整える。

全部きれいに終わらせる必要はない。

残りは明日でもいい。

ある程度片づいたところで、クロードは食堂へ向かった。

食堂もやはり静かだった。

使われている席はまばらで、好きなところへ座っても周りを気にする必要がほとんどない。

普段なら何人もの生徒が行き交う場所なのに、今日は声が遠く感じる。

クロードは食事を受け取り、空いている席へ座った。

「こんなに静かだったんだな」

学園そのものが静かなわけではない。

人がいないだけだ。

それでも同じ場所がここまで違って見えるのは少し面白かった。

食事を終えても誰かに呼び止められることはなく、そのまま部屋へ戻った。


◇


外はすっかり暗くなっていた。

クロードは机の椅子へ座り、先ほど置いたノートの一冊を開いた。

実家にいる間に書いた記録が何ページも続いている。

シルグリドを削った時のこと。

熱した時の変化。

雷鳴鋼を一緒に炉へ入れた時のこと。

《鉱物生成》で試した金属についても書いてある。

鉄、アルミ、銅、鉛、錫、マンガン、クロム、ニッケル。

生成できたもの。

チタン、亜鉛、モリブデン、金、銀。

生成できなかったもの。

そこにシルグリドと雷鳴鋼も加わる。

クロードはページをめくりながら、帰省中に試したことを順番に思い返した。

分かったことは増えた。

けれど分からないことも増えた。

特にシルグリドについては、性質をいくつか確かめても《鉱物生成》には成功しなかった。

組成や構造が分からない。

そこをどう調べればいいのかタングスにも聞いたが、タングスの仕事は削ることや溶かすことや鍛えることで、その先までは分からなかった。

王都なら、もっと詳しい人がいるかもしれない。

そこで話は止まっている。

クロードは新しいページを開いた。

朝はいつも通り起きる。

木剣を持って第2運動場へ行き、身体を動かす。

雷の練習も出来る範囲で続ける。

そのあと朝食を食べて、学園を出る。

そして王都の工房へ行く。

金属が何で出来ているのか、中がどうなっているのか、それを調べる方法を知っている人がいないか聞いてみる。

そこまで書くと、クロードは鉛筆を置いた。

「明日はこれでいいか」

ノートを閉じる。

二日間の移動も終わった。

今日はもう休もう。

クロードは机の上を軽く整えてから立ち上がった。

壁際には持ってきた木剣がある。

明日の朝から、またいつもの生活を始めればいい。

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