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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』~幼少期・王立学園編~  作者: 黎明の星
王立学園編

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基準

翌朝、クロードはいつものように庭へ出た。

剣を振って身体を動かしたあと、少ない雷を使って《放つ》と《曲がる》を何度か確かめる。

《放つ》は以前より安定してきたが、《曲がる》は狙った方へきれいに向く時もあれば、少しずれる時もあった。

まだ毎回同じようにはできない。

今日はそこから先を追わず、いつもの鍛錬として短めに切り上げた。

朝食を済ませて部屋へ戻ると、クロードは昨日並べたままの鉄、アルミ、シルグリド、雷鳴鋼を見た。

ノートの最後には、『次は、1つずつ確かめる』と書いてある。

昨日は作れるものと作れないものがあるところまで分かった。

けれど、机の上の鉱物を見ただけでは、何から確かめればいいのかまだ決められない。

クロードはシルグリドを持ち上げ、そのあと鉄へ持ち替えた。

「やっぱり鉄の方が重い」

持てば違いは分かる。

ただし端材の大きさも形も違うため、それだけで鉱物そのものの重さを比べたことにはならない。

クロードは2つを机へ戻し、少し考えてから棚へ向かった。

奥にしまってあった細長いガラスの容器を取り出す。

幼い頃、形の違う石の体積を比べるためにガラス職人へ作ってもらったものだった。

底は広く、側面には一定の間隔で線が刻まれている。

あの頃は水へ石を沈め、線がいくつ動いたかで大きさを比べた。

「これなら……」

クロードは容器を机へ置き、古い『石の記録』を探した。

読み返しているうちに、自分で書いた言葉に目が止まる。

線1つがどれほどの体積なのか分からない。

必要になったら、もっと正確な基準を考えればいい。

クロードは容器を見る。

「今か」

昔は3つ分と4つ分のどちらが大きいか分かれば十分だった。

今は鉄、アルミ、シルグリド、雷鳴鋼を同じ基準で比べたい。

重さだけでなく体積も分かれば、光哲だった頃に知っていた密度という比べ方も使える。

計算の仕方は覚えている。

問題は、何を基準に測るかだった。

クロードの目が、昨日《鉱物生成》で作ったアルミの立方体へ向いた。

形は正立方体で、鉄を作った時と同じくらいの大きさを思い浮かべて生成したものだ。

これなら長さを測れば体積を出せる。

そう考えたところで、クロードは机の上を探しかけて手を止めた。

「尺、借りないと」

以前鉄やアルミを同じ大きさに揃えた時も、屋敷の尺を借りている。

クロードは部屋を出ると、使用人へ頼んで長さを測るための尺を借りた。

部屋へ戻り、アルミの立方体へ尺を当てる。

向きを変えながら3辺を測ると、目盛りで読める範囲では同じ長さだった。

けれど、その目盛りより細かな違いまでは分からない。

「ぴったり同じ、とは言えないか」

それでも簡単な基準として使うなら十分だった。

クロードはノートへ測った長さを書き、3辺を掛けて体積を計算する。

光哲だった頃に覚えた計算は、こういう時には今でもすぐに出てくる。

ただし書いた値の横には、『尺で測れる範囲』と付け加えた。

計算が合っていても、最初に測った長さが完全に正しいとは限らない。

クロードはガラスの容器へ水を入れた。

最初の水面を、昔からある線の1つへ合わせる。

その横へ細い紙を当て、同じ高さに印を付けた。

そこへアルミの立方体を静かに沈める。

水面が上がった。

新しい水面の位置を紙へ写す。

「ここまでが、これ1個分」

アルミを取り出すと、水面は元へ戻った。

今度は水を少し足し、さきほど付けた新しい印まで水面を上げる。

そこへ同じアルミをもう1度沈めた。

水面がさらに上がる。

クロードはその位置にも印を付けた。

アルミを取り出し、また水を足す。

同じことを繰り返していく。

新しい印が増えるにつれて、クロードは紙と昔の目盛りを何度も見比べた。

「同じじゃない」

大きく違うわけではない。

けれど、同じ立方体1個分ずつ水を増やして作った印の間隔は、昔からある線の間隔と完全には重ならなかった。

原因が容器の形なのか、水面の読み方なのか、立方体の寸法なのかはまだ分からない。

それでも昔の線が役に立たなかったわけではない。

同じ位置から石を沈めれば、水面がより高く上がった方が体積も大きい。

あの頃に必要だったのは、その大小だった。

「でも今は、こっち」

クロードは新しく印を付けた紙を見る。

同じアルミの立方体を使って作ったため、隣り合う印の間には同じ体積が加わっている。

正確な体積の値には誤差がある。

それでも少なくとも、基準にした立方体何個分かという比べ方はできる。

クロードはその紙を容器の側面へ合わせ、ずれないよう位置を確かめた。

これならガラスそのものへ新しい線を刻まなくても、しばらく試せる。

ノートへ新しい項目を書く。

『基準 → 昨日作ったアルミの立方体』

『水位 → 同じ立方体を繰り返し使って印を作る』

『正確な値ではない』

『同じ器、同じ基準で比べる』

書き終えたところで、クロードは魔導時計を見た。

朝から始めたはずなのに、昼が近くなっている。

尺を借り、昔の記録を探し、測って、何度も水を入れ直していれば、それだけ時間も過ぎる。

クロードは濡れたアルミを布で拭き、容器の水を片づけると昼食へ向かった。


◇


昼食を終えてからしばらく待ち、厨房が落ち着いた頃にクロードは4つの試料を持って向かった。

鉄、アルミ、シルグリド、そして最も小さい雷鳴鋼。

以前、石の重さを調べた時にも厨房の天秤を借りたことがある。

今回も料理の邪魔にならないことを確かめてから、天秤を使わせてもらった。

左右に皿があり、片方へ重りを載せて釣り合わせる古い天秤だった。

クロードは最初に鉄を載せる。

重りを替えながら釣り合うところを探し、その値をノートへ書く。

次にアルミ。

その次にシルグリド。

最後に雷鳴鋼。

試料の大きさが違うため、重さだけを並べてもまだ意味は薄い。

それでも4つとも同じ天秤で測ったことで、少なくとも重さの記録は揃った。

クロードは天秤を返し、試料を持って部屋へ戻った。

今度は朝に作った紙の目盛りをガラス容器へ合わせる。

水面の始まりを同じ位置へ揃え、まず鉄を沈めた。

朝に作った基準の印と昔の線を見ながら、水面がどこまで上がったかを記録する。

鉄を取り出し、水を元の位置へ戻す。

次はアルミ。

同じことを繰り返す。

シルグリドを沈め、最後に雷鳴鋼を沈める。

4つ目を書き終えた頃には、紙の上にもノートの上にも印と数字が増えていた。

クロードは濡れた試料を布の上へ並べ、ノートを見直す。

重さがある。

体積も、基準の立方体に対してどれくらいかという形なら比べられる。

なら、重さを体積で割ればいい。

クロードは鉄から順番に計算した。

完全に正確な密度ではない。

尺にも、容器にも、水面を読む自分の目にも誤差がある。

それでも全部を同じ道具と同じやり方で測ったため、鉱物同士を比べる材料にはなる。

鉄の計算を終え、アルミも書く。

続けてシルグリド。

最後に雷鳴鋼。

4種類分の記録が並んだ。

クロードはしばらくそれを眺めた。

「……これで比べられる」

昨日までは、持った時に重いか軽いか、触った時にどう感じるかという違いしかなかった。

今は少なくとも、同じやり方で測った重さと体積の記録がある。

けれど、生成できた鉄とアルミ、生成できなかったシルグリドと雷鳴鋼を分ける答えが、その数字だけで見つかったわけではない。

クロードは2組を見比べる。

「まだ違うところがある」

それが何なのかは分からない。

ただ、次に削るにしても、傷をつけるにしても、今日測った数字と比べながら確かめることができる。

クロードは朝に使ったアルミの立方体を手に取った。

5歳の頃は、線がいくつ動いたか分かるだけでも嬉しかった。

あの時の道具は、今でも使えた。

ただ、今の自分には、あの頃より少しだけ多くの使い方ができる。

クロードは立方体を布へ戻し、ノートの最後へ書き加えた。

『重さ → 同じ天秤』

『体積 → 同じ容器、同じ基準』

『密度 → おおよその比較』

そして最後に、もう1行だけ書いた。

『比べる基準はできた』

机の上には4つの試料と、昨日作った2つの立方体、それから細長いガラス容器が並んでいる。

答えはまだ見つかっていない。

それでも何が違うのかを確かめるための準備は、昨日よりずっと整っていた。

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