表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
92/117

第92話 全てが繋がる

「……私、ここにいていいの?

 ほんとうに?」


 リュシアは泣きながら空に向かって呟く。




「リュシア……リュシアあぁ……!」


 エイヴァンは大粒の涙をこぼした。



「みんな……みんなは……!」

 エリューは立ちあがろうとするが、身動きが取れない。

 シェイドはエリューを固く抱きしめたまま、離さなかった。



「……地響きが……止まった」

 

「雲間から、光が……」


 国民戦団の人々が少しずつ立ち上がる。

 光がさす雲間を見つめる。


 エルフやセントール達も、武器を持つ手をおろし、真っ直ぐ空を見上げている。


 レグルスは、シェイドとエリューを見て大きく息を吐いた。


「終わったってことで、いいんだよな……?」



 


 ——戦線の一同は城へ撤収し、怪我人の手当てや武器の回収、状況報告へ動く。


「……なんか、嘘みたいな時間だったな」

 

 武器の片付けをしながら、国民戦団の一人が呟く。


「もう、絶対ダメだと思った」

 

「あぁ、まだ夢見ているのかもしれない」

 

 もう一人が空を見つめながら答える。





 

 ——セリクは執務室でアーカーに報告をする。


「軽傷者だけで済んで、何よりでしたね」


「……精霊って、人を殺すんでしょうか」


「え?」


「そもそも、敵対する存在ではないですよね。どちらかというと、繋がっている存在で……」


「確かに……精霊が生き物の命を直接奪うのは、考えづらいところはありますね……」


「お互いが守ろうとして、わからないならやむを得ない、と始まったというか……どちらも悪意はなくて……」


「争いとは、そうして始まるのかもしれませんね……」


「…………!」


「帝国が滅ぶ未来は、紙一重だったのかもしれません……エリュー様の想いが届いて、本当に良かったですね」


「……はい……」




 

 エリューが城へ戻ると、リーサとマルサが駆け寄ってきた。

 泣きながらエリューにしがみつく。

 ルトとカーツが3人を包む――


「エリュー、お帰り」

「うん……ただいま」





「――私は引き続き、精霊界に住む」


 リュシアが告げた。


「私は、あの子達を見守らなければ。けど……」


「新しい季節が訪れるごとに、あの子達と一緒に、会いにくるわ」


「エイヴァン、それでいい……?」


「もちろんだ……リュシア。

 なにもしてやれず……すまなかった」


「いいえ、あなたに沢山のものをもらった。灰色の世界しか知らなかった私に、鮮やかな幸せの日々をくれた。また、一緒にパジの実を食べたいわ」


「――"どちらにも居場所がある"って……素敵ね」



 リュシアはエリューの方を向いた。


「エリュー。あなたは地上で暮らしなさい。

愛する人達と、幸せに過ごしてね。

 ——精霊界には、いつでも遊びに来て」




 リュシアはシェイドを見る。


「シェイド」

「はい」

「エリューのこと、よろしくね」


「……全力で彼女の幸せを守ります」


 リュシアは微笑み、精霊界へ戻っていった。






 


 ——そして、次の季節の訪れ。


 人々が大広場に集まり、"精霊祭"の準備が進められている。


「ここが帝国、隣がバルクシア、順に各国の料理を並べます」

「エルフ、ノーム、ドワーフ、セントールの料理がそっちのカウンター」

「飲み物はあっち、デザートはそこです」

 宮廷料理長のアンゴルが使用人たちに説明する。



 ゴルとドワーフ達が、会場のあちこちに仕掛けを設置している。


「ランタンはこのくらいでいいかな」

「その筒、危ないからもっと後ろに下げて」

「あ、そこに置くと舞台から見えないよ!」

「祭りの準備は、わくわくするのぅ〜」




 ノーム達は精霊への質問事項をまとめている。

「――呼び声はどう聞こえましたか」

「南西の火山はいつ噴火しますか」

「全力を出すとどうなりますか」

「神々はいるのですか」



 トーマは精霊が描かれた本と、空を交互に眺めている。

「本当にいるの?」

「明日、くるの?」

 バルドがトーマの頭を撫でる。




「ねーねー、精霊って "飴"食べられると思う?」

 エリューは袋から棒を取り出した。


「みてみて、精霊飴。ダガットに飴細工職人を紹介してもらったの! 可愛いでしょ」


 イフリートやドリアードの姿の飴細工が棒の先についている。


「……精霊に飴渡すつもりなのかよ。

古からの存在を、随分子ども扱いするじゃねーか」


 レグルスはテーブルに頬杖をつき、呆れ笑いする。


「だって子どもみたいな感じって言ってたんだもん。

『みんなと触れあって』と言った以上、ふれあいは楽しいと思ってもらわないと!」


「……その結論が、飴なんだな?」

「うん。逆に新鮮なかんじ?」

「ソダネー」


 レグルスは雑に会話を終わらせ、小皿に入ったチュッキーを口に入れた。


「また馬鹿にしたな。お詫びとしてそのチュッキーをもらおう」

 エリューは小皿をスッと引く。

「やんねーよバカ」

 レグルスも小皿を引いて戻す。

「バカっていったな」

 スッ

「陛下、エリューの食い意地なんとかしてください」


 シェイドは微笑んだ。

「レグルス」

「頼む」


「やったーシェイドありがと!」

「……陛下あんま甘やかすの良くないっすよ」


(この3人の関係、ジケタンと同じだな)


 セリクは3人を見ながら紅茶をすする。






 セントールとエルフ達は戦線で地平線を眺める。


「無垢な太陽が輪を繋ぐ」


「……とても心地の良い輪です」


「この地平線も、いずれ繋ぐのやも知れぬ」







 ——精霊祭が始まると、リュシアが精霊達を連れて舞い降りた。


 国内外から人が集まり、異種族も交えて

 精霊と過ごす時間を楽しむ。



 ウンディーネは巨大な水の竜を天に登らせる。

 イフリートは水竜の周りに炎の馬を駆けさせる。

 その光景に人々から歓声が上がる。


 ドリアードはパジの木を生やし、沢山の実をつける。

 タイタンは滑り台付きの砂の城を作り上げる。

 子ども達は木に飛び乗り、パジの実を次々と口に入れ、砂の階段を駆け上がる。

 エイヴァンがパジの木に向かって歩き出す。


 シルフは頭上に布を張った箱に入った子ども達をふわりと空へ浮かせる。

 子ども達からキャーと喜びの声が上がる。




 エリューとシェイドはテーブルに並んで腰掛け、人々を眺めている。


「子ども達も、精霊たちも楽しそう」

「あぁ」

「良かったなぁー」

「そうだな」


 

「ねぇシェイド」

「……なんだ?」


「二人で最初のお出かけは、どこに行きたい?」


 シェイドは目線を上に向け、少し考える。


「……遠征で訪れた地の、どこか」


「そうなの?」


「あ、わかった! 羨ましかったんだね!」


「そうだ」

 シェイドはニッと笑う。


「へへ、そうだよねー楽しそうな報告だけ受けてつまんなかったよね」


「じゃあ、今度はシェイドも一緒に行こうね! でも遠征はみんなで行った方が楽しいから、じゃあ二人で出かけるのは――」


「海にしない? シェイド、海は見たことある?」


「移動中に遠くから眺めたことはある」

「じゃ、海を見に行こう!」


「分かった、明日行こう」


「……え!明日!?」

「明日行く」


「……ほんとに?」

「あぁ」


「二人で?」

「行く」




「……あはははは! 分かった! 明日行こう!」


 二人で声を出して笑い合う。




 リュシアはエイヴァンの隣に座り、器に沢山盛られたパジの実を頬張りながら、エリューとシェイドを見つめて微笑む。


「……幸せだね」



 ——初夏の爽やかな日差しが広場を照らす。

 会話と笑い声は途切れることなく、ずっと空に響き続けた。




――第三部 完――


物語は第四部まで続きます。

ただいま、第四部、絶賛執筆中です。


7/1(水)0:00に【人物譚①レグルス】を投稿します。

ぜひ、ブックマークしてお待ちください!


コメント、ポイント応援いただけると、記念日メモするくらい喜びます。ぜひお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ