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第九話 皇帝陛下

大広間にいる全ての人が、高壇に注目している。


 奥の人影がゆっくりと動いてくる。

 

(……すごい)


挿絵(By みてみん)


 長身で凛々しい立ち姿、黒髪に切れ長の黒い瞳。

 マントとサッシュは、帝国の赤色。

 腰から剣帯を下げ、盾の代わりの片掛けマントが、戦場に赴く皇帝を物語っている。

 

(強い。ハンサム。美男子。って、この人のための言葉だな)

 

「本日はよく参られた」

低く落ち着いた声が大広間に響く。

 

「遠方より足を運んでくださった各国の皆様へ、ガーシュタルク帝国皇帝として感謝申し上げる」

 

(世界一の大国の皇帝に、なるべくしてなった感じ)

 

「諸国との繋がりあってこそ――」

 

(実際どのくらい強いんだろ。頻繁に戦線に呼ばれてるみたいだし……ん?)

 

エリューの視界の端にタペストリーが映り込んだ。

 

(あ、れ、は……!)



 

【レグラン菓子店】【テラトリール】【バヌージャ】


(う、ウソでしょ、信じられない!)

 

今をときめく有名菓子店が並ぶスイーツコーナーだ。

 

エリューは両手を口元に当て、衝撃を飲み込んでいる。


 

「――我が国はそのために剣を取り続け――」

 

(あ、いけない……ちゃんと聞かなきゃ)

 

両手は口元、輝く瞳のまま、体を高壇側へ戻す。

 

まるで皇帝を崇拝し、口上に感激している姿に見えるが、頭の中はスイーツでいっぱいである。



 

「――では、今宵は豊かなひとときを」

 

場内から盛大な拍手が起こる。

 国内貴族の令嬢たちは、揃って甘いため息をつく。

 

皇帝は高壇の玉座に着き、アーカーはその隣へ立った。

 

場内の人が動き始めた。

(よし! いける!)


ドレスの裾を持ち上げ、スイーツコーナーへ駆け寄る。


 

「すみません、ひとつください!」

 

「あと、包んで持ち帰ることもできますか!?」

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