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第八話 舞踏会はじまる

帝国の大広間に続々と人が集まり、賑やかになってきた。


舞踏会には皇妃候補だけではなく国内貴族や近隣国の賓客も招かれている。

天井では無数のシャンデリアが輝き、大理石の床に光を落としている。

 

エリューは廊下の柱に隠れて(むしろ抱きついて)、大広間の様子を伺っている。


「うわぁー……これは…… リーマル、ちょっと」


 エリューはリーサマルサのことを合わせてリーマルと呼ぶ。


「入れないわ私」

「エリュー様入ってください」

「だって初めての舞踏会がこんな」

「入りますよ」


リーサに手を引かれ、マルサに腰を押され入場する。


「私たちは別室で待機してますから」

「頑張ってくださいね!」


エリューを広間の中央に置くなり、リーマルはさっさと退室していった。

 

(うぅ……こういう待ち時間ってどう過ごしたらいいんだろ)


チラチラと周りを伺う。


ガーシュタルクの公爵令嬢デリーサは国内候補なだけあって国内貴族とも顔見知りの様子だ。

 何人かで集まって談笑している。


エデュバラの王女アステナは賓客の貴公子と話している。


(——みんな、慣れてる!)

感心の眼差しを向けていると後ろから肩を叩かれた。


「レーラ……!」

(私の友達いた!)


「帝国の大広間で舞踏会なんて、緊張するね……!」

「ね……ここでダンスするの色々難易度高いね……」



アーカー宰相とスウィフト試験官が大広間へ姿を現した。


「候補者の皆様、こちらへお越しください」

 


「さて、いよいよ舞踏会です。ここでダンスの試験を開催します。皇帝陛下も本日は参加できる見込みですので、陛下と踊っていただく、でも構いません」


候補者たちから喜びの声が漏れる。


「ただし、陛下は急にお呼びがかかる場合もあります。公の場にお越しなのは久しぶりなので諸国の賓客との交流もなさいます。全員と踊ることは難しいでしょう」


こっそり胸を撫で下ろすエリュー。


「会場には国内貴族の令息もたくさん招いています。ダンスのお相手はどちら様でも結構です。お相手が見つからなければ私がお相手します」

(アーカー宰相、踊るんだ……!)

 

「舞踏会とはいえ試験ですから、緊張なさることと思います。しかし試験とはいえ舞踏会です。まずは楽しんで心をほぐしてくださいね」


「では、陛下がお越しになるまで、ごゆるりとお過ごしください」


アーカーは説明を終えると大広間から出て行った。

 

(心をほぐす……どうやってほぐそう)


青く透き通った瞳を左右に動かしていると、

スウィフトと目が合った。

 

(数少ない知り合い!)

「スウィフト試験官!」


「これはこれは、エリュー様。今宵は一段とお美しくあられます」


「丁寧なご挨拶ありがとうございます。口頭試問の時はいらっしゃいませんでしたね」


「いえ、実は部屋の隅におりました」

「わぁ、それは失礼しました。気付かなかった」

「エリュー様のちょうど真後ろでしたから、お気付きにならなかったでしょう」


「スウィフト試験官はダンス指名できないんですか?」

「こ、このおいぼれに激しい運動はご勘弁を……いやいや、その前に私は審査しなくてはいけませんから――」

「あ、そっか」


「ぜひ皇帝陛下と踊ってください。陛下とエリュー様のダンスを楽しみにしております」


 (心をほぐすつもりが、プレッシャーかかってしまった……)


 スウィフト試験官も大広間の外へ消えていった。


 (ダンスか……)

 

『体を動かしているだけで、お前のはダンスではない』

『お前は決して人前で踊るな』

 

(あ、やなこと思い出しちゃった)

 頭を振って"やなこと"を追い出す。胸の"やなこと"も追い出そうと深呼吸する。

 

おおぉ……


一瞬会場がざわめき、一気に静かになる。


「皇帝陛下、御臨席!」

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