第85話 それぞれの決意①
大広間に隊員、異種族が集められ、広い空間が埋まっている。
アーカーが高壇に立ち、皆に語りかけた。
「エリュー皇妃殿下は精霊の血を受け継いでいることが判明しました。ご自身がいることで帝国に危険が及ぶのを恐れ、エリュー様は帝国を後にされました。我々はこれから精霊と対話をし、エリュー様を奪還します」
シェイドが前に進む。
「皇妃は恐らく精霊界と呼ばれるところにいる。
自らを犠牲にし、帝国を守るために発った。
だから取り戻す」
「しかし、我々が精霊界へ行くことは難しい。
従って――」
「全ての精霊を召喚する」
——レグルスは第一戦線にいた。
「隊長……ここにいていいのですか?」
「こんな時に戦線が突破されたら、それこそ一大事だろ。こんな時だからこそ、俺らで戦線を守んねぇと。
陛下にはエリュー奪還に集中してもらいたいし」
「……そうですよね」
「エリュー様が精霊だったなんて……驚いたけど、納得しました。人を惹きつける不思議な魅力がありますから」
「……あいつはただの人間でもオモロかったと思うぜ。バカだから」
——訓練場にいる騎士の一人が呟く。
「精霊を召喚して、交渉が決裂したら……戦うことになるんだろうか。精霊相手に、俺らの力は通じるのか……」
「僕たちは勝てる相手だから戦うわけじゃない」
ライネフが言う。
「双頭竜も精霊も同じだ。守るために戦う」
——国民戦団は西の訓練場に集まっている。
「……俺たちにできること、何かあるのかな」
団員の一人がポツリと言った。
バルドが団員の肩に手を置く。
「まだ戦い始めたばかりの俺たちは、一緒に戦ったら足手まといだろうな。でも、武器の補充や退路の確保、俺たちに出来ることは戦う以外に色々ある」
「出来ることをやろうぜ。俺たちは、帝国国民戦団だからな」
——エルフ達は第三戦線を守っていた。
みな、空を見つめている。
「エリュー様は、混ざりものの俺たちを救ってくれた」
「新しい居場所をくれた」
「同等に受け入れられ、交流する楽しさを教えてくれた」
「精霊も人間も関係ない」
「今度は俺たちがエリュー様を救う番だ」
——セントールは第二戦線を守る。
「無垢な太陽が奪われた。あるべき場所に還さねばならん」
長は大剣を胸元に構える。
「我らが忠義を捧げる太陽が、望まぬ別離に苦悶している。主君が輝けるよう、不要な枷は取り払わねばならん」
「セントールの誇りにかけて……」
「無垢な太陽の奪還を、実現するのだ!」
セントール達は一斉に武器を掲げた。




