第81話 バルクシア王の告白①
早速離れに帰った翌日、まだ戦地にいる予定のシェイドが急に帰城した。
「何事もないか?」
エリューは首を傾げ、
「え、うん大丈夫。元気だよ!」
笑顔で手をあげた。
シェイドはアーカーの執務室へ行き、そのまま戦地へ戻っていった。
「……どうしたんでしょう?」
傍に控えていたセリクが言う。
「気になることってなんだろね? まいっか、ちょっと会えてラッキー」
セリクがふっと笑う。
「本来のお戻りは、明日の夕方ですよね」
「うん、明日はちゃんとお城で待ってよ」
——翌日の、昼過ぎ。
「姫さま……バルクシア王がお呼びです」
リーサが表情を曇らせながら、告げる。
「……わかった」
エリューはバルクシア王が待つ談話室へ向かった。
廊下を歩きながら、アステナの言葉を思い出す。
『エリューのお父様は、エリューをどうしたかったのかしらね』
『お父様と、もう少しちゃんと話し合う必要がありそうね』
(そうだ、話さなきゃ……お父様が帝国にいるうちに)
王が待つ談話室に入る。
王は向かい合った椅子の片側に座っていた。
エリューは向かいの椅子に腰掛ける。
「結婚式では、ご対応ありがとうございました」
「あぁ、滞りなく式が済み、安心した」
「…………」
「…………」
(何か、切り出さなきゃ)
(なんだっけ……)
「……二人で話をする」
王はリーサに向けてそう告げた。
リーサは何か言いたげな表情をしたが、礼をして部屋を出た。
「…………お前に、伝えねばならぬ事がある」
「……はい」
「お前の母のことだ」
「……はい」
エリューは下を向いたまま返事をする。
「……出会ったのは、お前が産まれる1年前だ。狩りで城の外を回っていたところ、倒れている彼女を見つけた」
「この世のものとは思えない美しい人だった。彼女を連れて城へ戻り、手当てをしていると目を覚ました。自分のことを何も覚えていなかった」
初めて聞く話に、エリューは下を向いたまま耳を傾け続けた。
「我々はすぐ恋に落ちた。だが、周囲は荒れた。出自の分からない怪しい人間を城に置くわけにいかないと、反対派が生まれた……だが、美しく純粋な彼女を慕う者たちもいた」
「私は、彼女を王妃に迎えた。ほどなく、お前を授かった」
エリューの手は硬く握られている。
「彼女はお前を産んだ時、全てを思い出した」
「彼女は……」
「人間ではなく……精霊だった」
エリューの目が大きく見開かれた。




