第80話 結婚式のあと②
3日間の結婚式を終えた翌朝。
エリューは戦線に向かうシェイドを見送るため、一緒に馬房へ来ていた。
「……朝が来るのが恨めしいのは、初めてだ」
「あはは、3日間もずっと一緒にいたこと、なかったもんね」
シェイドはエリューを抱きしめると、馬に跨り振り返りながら戦線へ走って行った。
その後のエリューは、客人達の見送りに勤しんだ。
「……それじゃ、本当におめでとう」
「レーラ、ありがとう。またゆっくり話そうね、頑張って!」
「エリューも、やる事が沢山ありそうだから、無理せずね」
レーラを見送る。
「私の式は来年よ。デルガルドでね。必ず来てね!」
「うん! シェイドと二人で行きたいな」
「エデュバラにもまた遊びにおいでねぇ〜」
「はい陛下、楽しみにしています!」
アステナ一家を見送る。
「素晴らしいお式でした。また、新しいお菓子を持って伺います」
「来てくれてありがとう! とても嬉しかった」
菓子商人ダガットを見送る。
「我々は、しばらく戦線を見てから帰る」
セントールの長は式のあと、そう告げた。
長は滞在中、戦地に立った。
セントールが8名並んで戦う様子は圧巻だった。
「セントールの隊列、かっこよかったなぁ〜」
中庭でひと休みしながらエリューが呟く。
「エルフの皆さんの列も美しかったですね」
隣のセリクが言う。
「うん。出発のヒヒーン! が効いてたよね」
「馬たちと通じ合ってる感じ、しましたね」
「みんなのお陰で、ほんとに素敵な式になった」
「セリクも手綱を引く姿、とても凛々しかった! ありがとう」
セリクは少し鼻をこすると、ベンチから立ち上がり歩き出すエリューの後ろをついて行った。
——ゴルの工房にやってきた。
「おぉ、エリューちゃん、良い式だったぞい」
「お姫さま、おめでとうございました!」
「みんなありがとう。花が舞う装置、凄かったね!」
「おっほほぅ、式は華やかでないとな」
「いろんな色の花びらが舞って……最後だけ全色にしたのね」
「そうなんです」
「最初はやはり、白かなと」
「でも白だけじゃ物足りないから、色んな色を出して」
「締めはパーッと華やかに」
「とっても綺麗だった! あの光景は忘れられない!」
「わしも、エリューちゃんと陛下の幸せな顔は忘れんぞい」
「僕たちも、参加できて良かったです!」
「ゴル、みんな、ありがと!」
「――次は、どこ行きます?」
「うーん、お礼を言わなきゃいけない人は大体おさえた? あとは、アーカーは忙しいだろうし、レグルスとライネフも戦線だし……」
あちこちをウロウロしていると、デリーサと出会った。
「あ、デリーサ様、お久しぶりです」
「皇妃殿下、ごきげんよう」
「そんな……エリューでいいです」
「結婚式に参列いたしました。エルフにセントールが隊列を組んで、見たことも無い装置から花びらが舞って……私が花嫁だったらあり得なかった光景でしたわ」
「今後も、陛下の事を一番近くでお見守りになってね」
デリーサは凛とした表情で告げ、去っていった。
「……ちゃんとそうやって言えるの、立派ですね」
「うん……わたしも、頑張る」
二人は離れの前に来た。
「ね、セリクも一緒に食べよ! あとパピルキーしよっ」
扉を叩くとルトが現れた。
「おっ!? もう出戻りか? 早いな!」
「あはは、大丈夫ケンカしてないよ!」
笑いながら中へ入る。
「みんなは?」
「リーマルは"皇妃付き侍女"になったから、宮務局で色々お前のこと説明してんじゃないか?」
「カーツも"皇妃付き近衛隊長"だから、近衛隊のとこだな」
「てか、その皇妃がここにいるのウケるな」
ルトがポットにお湯を入れながら話す。
「そか、みんなより先に帰ってきちゃった」
エリューはカードを切る。
「ま、お前が自由にするのが陛下の望みだからな。好きに動いたらいい」
ルトは紅茶を注ぐと、椅子に座りカードを手に持つ。
3人はパピルキーをしながら、リーマルやカーツの帰りを待った。




