第77話 結婚式前日
結婚式の前日。
各国から来賓が続々と到着し、帝国内はいつもより賑わっている。
「エリュー!」
「レーラ!」
お互い駆け寄り、抱きしめ合う。
「楽しみにしてた! おめでとう!」
「来てくれてありがとう!」
「新戦団の募集とか、異種族との交流とか、びっくりする話ばかり耳に入って、すごい頑張ってるんだなって思ってた」
「ソリュードも、和平に向けて進み出したんだよね。私も、レーラが頑張ってるって励まされた」
「うん、調停院を作って、話し合いが始まった。解決するには仕組みが必要だって、エリューに教えてもらったから」
「みんなが納得する形が見つかるといいね」
「うん!」
――セントールの長と、3名のセントールが到着した。
「え! わざわざお越しくださったんですか!」
「無垢な太陽よ、そなたの門出の日だ。我らもまた、祝意の剣を掲げよう」
後ろのセントール達が足を折り、こうべをたれる。
エデュバラの馬車も到着した。
「アステナー!」
「エリュー! おめでとう」
アステナは細い腕を振りながら馬車から降りてきた。
「あぁ、この城の広間でエリューの素敵な演奏を聞いたのが懐かしいわ。ねぇ、滞在中に是非また聴かせてね」
「魔法全属性理論、面白いね〜」
「国王陛下は土属性魔法で砂神さま像を作るのが趣味になりましてよ」
国王と王妃は手を取り合いながら馬車を降りてくる。
「国王陛下、王妃殿下もようこそ! ノームのみんなと、是非お話してくださいね」
——ゴルは城門前を進んだ、中央大通りにいる。
通りの両脇には花を飾った柵が遠くまで続いている。
「ここから、等間隔に置いていくぞ」
柵の外側に、柵より少し高い丸太のような筒を置く。
通りの向かい側で、弟子が同じように筒を置く。
「魔道装置も忘れずに仕込むんじゃ」
「はい!」
「本番で動かなかったら目も当てられん。並べ終わったら動作確認もするぞ」
「はい!」
ゴルは空を見る。
「明日はバッチリいい天気じゃな!」
——エリューはセリクと "皇妃用の部屋" に来た。
バルコニーのある窓際には二人座れる長椅子、
中央にはテーブルに椅子が二脚、
部屋の隅に簡易テーブルと椅子が沢山重ねられ、
棚にはカードゲームにティーセットが沢山置かれている。
「いよいよ明日から、この部屋に来るんだね」
「……なんだか、早かったですね」
「あは、"引越さない!"って私が言った日から?」
「はい」
「今は、よく分かります。もしまだ引っ越したくなければ……何とかします」
「あはは! ありがとうセリク! 頼もしい。大丈夫。ちゃんとここに……くるよ」
エリューは口元を抑えた。
「いやいやいや! 泣くのはまだ早い!」
「離れに戻ろっか」
——離れではルトが腕を振るって沢山の料理を準備している。
カーツはテーブルクロスを敷き、食器の準備をしている。
リーサとマルサは乾杯酒の相談をしている。
「ただいまぁー! わぁ〜いい匂い!」
「……では、明日の朝、お迎えに参ります」
「うん、ありがとうセリク!」
「今夜は皆さんで、ごゆっくりお過ごしください」
「……」
一瞬眉に力を込め、何とか飲み込み、笑顔でセリクに手を振った。
「セントールの長たちが来てくれたよ! 明日の式で、オーグリム達と一緒に剣を掲げてくれるんだって」
エリューは椅子に腰掛けながら報告する。
「カーツと会いたがってた」
「明日、必ずご挨拶しておきますね」
カーツは微笑みながら座る。
「レーラも来たよ! ソリュードは調停院を設けたって」
「一段落した形で式に来てもらえて、良かったな」
ルトが料理の皿を置きながら答える。
「姫さま、乾杯酒どっちがいいです?」
「あぁーどっちもいいね!」
「乾杯はこっち! でもどっちも飲む!」
リーサは乾杯酒を開け、マルサがもう片方の酒を奥へ持って行く。
「おっし、じゃ乾杯しようぜ!」
ルトが料理の皿を置きながら椅子に座る。
リーサ・マルサはエリューを挟んで座る。
「えーと……エリュー、結婚おめでとう! これから幸せに……っておい」
エリューはグラスを持ったまま、もう一方の手の甲を目に当てている。
「お前、早過ぎだよ! まだ乾杯もしてないって!」
あはは! とみんな笑うが、リーマルも泣いている。
「泣くなら明日だろ〜日付違うぞ! せっかく作ったのに、食えなくなるぞ!」
「それは……やだ……!」
涙声で搾り出す。
「そんな泣くことじゃないって! な〜んも変わらないから! 俺らはずっとここにいるし、いつでも泊まりに来ればいいだろ〜目と鼻の先なんだから」
「……うん」
「……っく」
「……みん……ながっ」
「……ひっ、だいすき」
「ありがと……」
「さみしいっ……」
しゃくり上げながら、想いを伝える。
「うぅ〜……! あ、あたしもっ姫さまが大好きー!」
「寂しいっ! うぅ〜……!」
リーサ・マルサも泣きながら答える。
「ここはお前の家だし、俺らはお前の家族だから。それは、これからもずっと変わらないから」
「てか、お前ら、泣き過ぎ!」
「ほれ、とりあえず乾杯するぞ! かんぱーい!」
5人はテーブルの中央にグラスを集め、カチンと合わせた。




