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第76話 国民戦団 視察

西棟の訓練場で、国民戦団の稽古が行われている。


「周りの動きも見ながら剣を振らなくてはいけない」


「人間同士なら組み合えるけど、魔物に合わせて技を変えていく必要がある」


 分野ごと、上達具合に分かれて教官が指導している。



「すんごい進化したね!」

「だろ」

「うん、始めの頃とは比べ物にならない〜!」


 エリューとレグルスは、訓練場の隅で稽古の様子を眺めている。


「もうちょいしたら、こいつらも戦線を見に行ってみようかと」

「うんうん、実際に見たら練習でも想像できるもんね」


「もう戦線に立ってる人もいるんだよね?」

「少しだけな。今日は副隊長がついてる」


「セントールやエルフ達も立ってくれてるから、陛下は式の準備の時間が取れてるみたい」

「いや、ほんとあいつらいなかったら、陛下何にも知らずにぶっつけ本番だろ」

「あはは、婚約式はそんな感じだったね」

「ほんと良かったな、仲間が増えて」


「うん! 遠征も楽しかったよね」

「"シーカント大漁獲祭"な」

「ぶっ! 改めて聞くとほんと、ダッサイね!」

「くそダセェよ。新しい橋の祭りなんだからもっと革新的な名前にしろよ」

「あははははは」



 昼食休憩の時間になった。

 エリューはみんなにマルモルを配る。


「みんな凄く上達してて、びっくりしたよ!」

「恐れながら皇妃殿下に申し上げますと……」


「あ、いいよいいよそんな気を遣わないで〜エリューでいいですよ。はい、マルモル食べなー」


 エリューはマルモルを手渡す。


「あ、みんな!」


「ひとつパジュマロ入りがあるから、気をつけてね」

「……なんですと?」



「あなたお名前は?」

「バルドです、エリュー様」

「バルド、よろしくね。バルドは何の仕事してたの?」

「山の方で木を切って暮らしていました」

「わぁーいいね! 私皇妃にならなかったら木こりもいいなと考えてた」

「えっ」




 隅の方でマルモルにかぶりつく少年がいる。

 エリューは隣に座る。


「強くなったね! びっくり」

「はい! まっすぐ打ちと、片足蹴りができるようになった!」


「わぁ! ぐらぐら〜って、倒れちゃわない?」

「うんだからー、立ってる方の足が大事でー、ここにグッとチカラを入れるんだよ」


 トーマは立ち上がり、教わったことを見せる。


「そうなんだ、よく知ってるね! また教えてね」

「いいよ!」


 エリューとトーマは並んでマルモルを頬張った。



「じゃあ、午後もみんな頑張ってねー! また来まーす!」


 手を振って回廊の奥へ消えていくエリューを、団員達が見送る。


「皇妃様って、こんなに気さくなんだね」

「街で想像してたのと、全然違うなぁ」

「まさか自分が皇妃様とお話しする日が来るなんて……」



「はーいじゃ、午後の稽古はじめまーす」

「はい!」



 団員達はみな、それぞれの稽古場へ戻って行った。

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