第71話 セントールの国②
その夜、セントールとエリュー達で宴が開かれた。
燻製されたチーズ、香草と岩塩で焼いた肉、
花の香りがする酒などが振る舞われた。
「セントールのみなさん、剣も槍も弓も使うんですね」
「そうだ。それぞれの趣向に合わせて武器を持つ」
「そなた達は、木の実を収穫する時はどうしている」
「ハシゴを使います」
「セントールのラグゼル様は、魔物から姫君を守ったんですか?」
「左様だ。まだ帝国が戦線を引くよりも前の話だ。大陸中に魔物が蔓延っていた」
滅多に触れ合うことのない二つの種族で、お互いの文化について会話が尽きない。
「ねぇねぇ、皆さんの生活について、少し聞いてもいい?」
「なんなりと」
エリューは若いセントールと話をしている。
「帝国に住まいを作るとしたら、どこにどんな風に用意したらいい?」
「戦線のすぐそばに置いてください。住処は木で出来た簡素なもので結構です」
「寝る時は、どんな姿勢?」
「座って、上半身を壁にもたれて寝ています」
「ふんふん。じゃあ、もたれやすい壁みたいなベッドがあったら、快適そうね」
エリューはメモを取る。
「何か欲しいものがあったら、遠慮なく言ってね」
「ありがたき」
エリューは長の隣に座る。
「皆さんにとって無礼なことを知っておきたいです。
あなた達の背に乗るのはいけないと本で読みました」
「四つん這いで掃除をする人間に跨るのは、子どもくらいなものであろう。また、傷ついた者がいれば、そなた達も担いで運ぶであろう。断りもなく勝手に身体に触れるのは人間でも無礼であろう」
「我々も同じようなものだ」
「……とても分かりやすいです」
エリューは長に笑顔を向けた。
長もエリューに微笑みかける。
「無垢な太陽、そなたは別だ。望む時に我らの背に乗るが良い」
「えぇっ……そんな! もったいない!」
エリューは首を振り両手を前に出すが、顔は嬉しそうだ。
「……ぷ」
少し離れた場所から見ていたセリクがこっそり噴き出した。
——翌朝。
長が4名のセントールを紹介した。
「この者達が手を貸す」
「オーグリム、ナグタリオ、ディエクト、メジオイン」
名を呼ばれたセントール達は深く礼をする。
「共に戦います」
「セントールの誇りにかけて、無垢な太陽をお守りする」
「ありがとうございます!」
「よろしくお願いします!」
一同の馬車をセントール達が囲み、帝国へ進み出した。




