第64話 国民戦団 結成
「――すぐ戦線に立てるのは、大体4分の1だな」
レグルスが書類を見ながら言う。
「それ以外はまず訓練。ある程度形になったら戦線見学。隊を分けるのはそれからだ」
「西棟の訓練場2つを新戦団用にします。それから、各隊から選出した教官役のスケジュールがこちらです」
アーカーが書類を渡す。
「了解。じゃ、こいつらと一緒に進めていきます」
レグルスは書類を受け取り、書き込む。
「――国民戦団の隊長を申し出てくださり、ありがとうございます」
「あぁ……いや、俺も元平民なんで。貴族よりまとめやすいんすよ」
「自分たちと同じ出身で活躍する隊長の姿は、みんなの目標になるでしょうね」
「どうだか。酒飲みばっかになるかもしれませんが」
「ははは、隊専用の酒樽が必要ですね!」
「じゃ、教官どもに会ってきます」
レグルスは書類を丸めて振りながら執務室を出て行った。
——審査によって選ばれた国民戦団140名が大広間に集められ、結成式が行われた。
高檀にシェイドが立ち、口上を述べる。
「志を携え、我が国の新たな戦力として集った諸君を、心より歓迎する」
「帝国の防衛はすなわち、この大陸全土の安寧を守ることに等しい。その誇りと責任を胸に、戦線を共に歩もう。諸君の活躍を、期待する」
口上を聴き、胸に手を当てる者
緊張して、うわの空の者
初めて見る皇帝の凛々しい姿に涙する者
国民戦団の人々の反応は様々だ。
その中に、一人だけとても小さな姿がある。
ぽかんと口を開け、高檀の皇帝を見つめている
――トーマだ。
エリューは高檀の奥に立ち、その様子を見ていた。
結成式のあと、
団員たちは西棟の訓練場で訓練を始めた。
エリューとシェイドは上の階の回廊から、その様子を眺める。
団員たちの殆どは、まだ不慣れな様子だ。
訓練を積んできた既存の隊員とは動きが違う。
「審査を通る能力を持ってても……
まだ戦線に行ったこと、ないもんね」
「これから衝突もあると思うんだ。
例えば、今の帝国戦団の人たちとかね――
彼らも、誇りを持って歩んできたもんね」
「――今後、新戦団から頭角を現す者が出てくる。
戦力や才知にたける者、人の心を掴む者。
そういう者たちが、両者の溝を少しずつ埋める」
エリューは隣に立つシェイドの顔を見上げる。
シェイドもエリューの方を見る。
「――だから、大丈夫だ」
「そっか」
エリューは微笑む。
「みんなが良い関係になれるよう、支えてあげられたらいいな」
——二人は再び訓練場を眺めた。
武器の音や威勢の良い掛け声が、回廊にこだましていた。




