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第61話 ノームの国②

セリクは壁に描かれた無数の魔法陣を眺めた。


(――全然知らない魔法陣ばかりだ)


(あ、あれは炎の印が入ってる……どういう魔法陣なんだろう……)


「……あ、そうだ、腕輪!」


 セリクはノームに囲まれているエリューのところへ戻った。


「すいません、みなさん……これ、なんの腕輪ですか?」


 エリューの手を取り、腕輪を指差す。


 ノーム達が群がって腕輪をまじまじと眺める。


「これは……魔封じの腕輪だ」

「間違いない、印がある」

「しかし、なんと繊細な加工だろうか」

「いやいやそれどころじゃないぞ……こりゃ……」

「なんだ、この、魔封石の数は……!」


 ノーム達がざわめき、興奮しだす。


「……やはり、魔封じの腕輪なんですね」


「ん? 魔除けじゃなくて?」

 エリューが首を傾げる。


「はい……ドールキンが魔封じかもと。でも、エリュー様は魔法を普通に使えているから、気のせいじゃないかと思ってたんですが……」


「いやいや、これは間違いなく魔封じの腕輪だ」

「そして、魔封石がとんでもない数ついている」

「つまり――」


「お姫さまは "封じられて今の魔力"ってことだ」


「…………えっ」


「だから、この腕輪を外したら……」

「とてつもない魔力が解放されるぞ」

「これは……想像を絶する」


 ノーム達は腕輪から目が離せない。


「どうなるのか、見てみたい」

「いや、危険だ」

「しかし見てみたい」

「こんな機会、二度とあるものか」


「えぇっと……私、これ、外すなと言われてるので……」

 後ずさりするエリュー。


「凄まじい魔力が解放されるやも」

 にじり寄るノームたち。





「腹減ったな、一旦メシにしようぜ!」


 レグルスがノームを押しのけて割り込んできた。

 エリューの肩を引き寄せ、ノームの群れから出す。


「ノームの食事が知りたいなぁ〜」

「何を食べてるのかなぁ〜」

 リーマルが後方支援する。


「……そうだな、食事にしよう」

「ノームの主食はトゥーキヴだぞ」

「まず乾燥させた後に潰して――」

「乾燥に使うのは風と炎の魔法陣を併用した――」


 ノーム達は食の知識を披露しながら、わらわらと食堂を案内する。



 ——食堂にはノームのご飯がずらっと並んだ。

 小さな四角に切り揃えられたトゥーキヴのパン、器に盛られたナッツ、豆のスープ、チーズや果物が並ぶ。


「干し肉のお土産ありますけど、食べます?」

 ルトが皮袋を手に、ノームへ問いかける。


「1ヶ月ほど熟成させてから乾燥したもので……」


「ふむふむ、低温で発酵させてるのか」

「旨味を増やしてから食べるんだな」

「乾燥させれば保存もきくのだな」


「あんた達、なんでも知りたいんだな」

 皮袋を渡しながらルトが呟く。




 ——ノームのベッドは少し小さいので、エリュー達は床に布団を敷き詰めて雑魚寝することにした。


 エリューは仰向けになり、腕輪を見つめていた。


「それ……魔封じの腕輪、だったんですね」

 隣のリーサが声をかける。


「魔除けだって言って、隠してたんだね。誕生日ごとに石が増えて、ただ綺麗だなと思ってたけど……」


「なんで隠したんだろう……お父様は、分からないことだらけだな」



 部屋の全員が起きていたが、誰も声を掛けずにいた。




※【トゥーキヴ】とうもろこしに似た食べ物

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