第56話 ゴルの弟子たち 来訪
「鉄を溶かす "炉" を、ここと、ここに」
「ここに水槽を置いて」
「風送り機は外の小川に水車をたてて――」
ゴルが設計図を見ながら、どんどん描き加えていく。
ゴトゴトゴトゴト……
窓の外から音が聞こえる。
「……ん?」
ゴルは窓を見た。
帝国に繋がる草原の道を、魔動装置を取り付けた長いトロッコが、車輪をガタガタ鳴らしながら高速で進んでくる。
4つのトロッコにドワーフたちがギュウギュウ詰めで乗っかり、一番後ろのトロッコには山のように荷物が積まれている。
「……おっほほぅ、あいつら! なんとか自分たちで、やってきおった!」
愉快そうに跳ねながら、ゴルは外へ走っていった。
——トロッコはスピードを保ったまま、帝国に近づく。
「……せーの!」
ドワーフ達は掛け声に合わせ、一斉に体を横へ倒した。
ガガガガガッ!
トロッコが倒れた衝撃で、弟子たちと荷物が勢いよく飛び出す。
「いててててて……」
「つ、ついた……」
「ちょっと、起きるの手伝って!」
ゴルがやってきた。
「お前たち! やるじゃない……か……」
「……ん?」
「あ、師匠!」
「僕たちも、来ました!」
「師匠の "風の魔動装置"をトロッコに付けて……」
「ふむ」
ゴルは壊れかけたトロッコを見る。
「そこまではいいが、止まるところまで含めて "装置"じゃ。これじゃただの"魔法で走っちゃったトロッコ"なんじゃ。どうしたら良かったのか、各々考えておきなさい」
「は、はい!」
「分かりました!」
「ありがとうございます!」
「わしらの工房へ行くぞい!」
ゴルは弟子たちを引き連れて鍛冶場へ向かった。
「ここが、我々の工房となるところじゃ」
「これを見ぃ」
先ほど書き込んでいた設計図を広げる。
「せっかく帝国が立派な工房をくれるんじゃ。便利で快適な案がモリモリの工房にしようじゃないか。何か思いついたら、どんどん言ってくれ!」
弟子たちはゴルの後ろから設計図を眺める。
「は、はい」
「何かあるかな……?」
「例えばの」
「炉を温めるのに "火の魔動装置" を使う。材料切り出しのための風装置もアリだな」
ゴルは設計図に書き加えていく。
「こんな風にな。面倒が減るとか、作業が楽になるとか、考えてみぃ」
「はい!」
「うーーーん……」
弟子たちは集まって、設計図を眺めている。
「わぁ! みなさん到着したんだ! ようこそ、いらっしゃい!」
エリューが鍛冶場へやってきた。
「お姫さま、こんにちは!」
「お世話になります!」
「来てくれてありがとう〜嬉しい! もう早速みんなでお仕事してるの?」
「工房がより便利になる案を考えとる! 魔道装置 使い放題の豪華な工房にするんじゃ」
「えーいいね、楽しそう!」
「エリューちゃんなら、どんな魔道装置があると便利だと思うかね?」
「そうだなーー……」
エリューは鍛冶場を見回す。
「……この水槽に、水が出る魔道装置をつけたら、水汲みしなくていいね」
「更に排水口も作って……あ、そのまま流したらダメか。そしたら、水路に土の魔動装置を置いて浄化したら……そのまま川に排水できるんじゃない?」
「……おぉぉーーー」
弟子たちから歓声が起こった。
「うん、こういうことなんじゃよ。エリューちゃん、良い例をありがとうじゃ。お前たちも設計図じゃなくて現場を眺めるんじゃ」
「はい!」
弟子たちは鍛冶場をくまなく眺め始めた。
「水車に槌をつけて、回すのは?」
「削りの作業に使える魔動装置は……」
様々な案が浮かんできた。
「いいねいいね、最高の工房が出来そう!」
「胸踊るな!」
真剣な弟子たちの奥で、エリューとゴルは手をバタバタして踊った。




