第54話 ドワーフの国 帰国報告
「……ほほぅ! 随分と巨大な国に発展したな!」
地平線に見えてきた帝国を眺めながら、ゴルが言う。
「ゴルは帝国に来たことがある?」
「もう100年以上前だがな」
「そっかぁ……あぁー凄いね!」
「10年も100年も変わらんよ」
城内に馬車を停めると、いつも通りアーカーが出迎えに来ていた。
「皆さま、今回もお疲れ様でございました!」
「アーカー! ただいま!」
「頼もしい仲間が増えたよ、こちらゴルです!」
「なんと! 帝国へようこそお越しくださいました。帝国宰相のアーカーと申します」
「アーカーくん。よろしく頼むぞい」
「お住まいをご用意しなくてはですね。どんなところがお好きでしょう」
「離れで一緒に住みたいけど、もうベッドが増やせない」
「では、隣の離れに仮住まいしていただきましょうか」
「ゴルは発明家で鍛冶職人だから、工房も必要なの。しかもこの後、お弟子さん達が追いかけてくるから、大きな工房がいいと思う」
「城内に鍛冶場があるので、そこを改造してゴル様の工房を作りましょう」
「いいね〜わくわくする」
「血が騒ぐのぅ!」
ゴルに城内を案内していると、戦線から帰城したシェイドが廊下の角から姿を現した。
シェイドはエリューを見つけると足早に駆け寄る。
「陛下、おかえりなさい! 新しい仲間の、ゴルです」
「ゴルですじゃ。はじめまして」
「帝国へよく来てくれた……」
ゴルは挨拶するなり、シェイドの左腕を取り眺めている。
「ふむふむ。こんな感じか」
「あ、ゴルが陛下の "腕輪盾" を作ってくれるんです」
「腕輪盾……?」
「エリューちゃんが考えた、画期的な新装備じゃ。お楽しみに!」
「あはは、お楽しみにー!」
――夕食会は前回のメンバーにゴルも加わり、賑やかに行われた。
「おおぉ! これが干す前の熟成肉か!……うまいっ!」
「美味しいよねー。ソースで食べるか、塩胡椒で食べるか、悩ましい」
「……ほんとじゃ、これは選べん!」
「……ゴルとエリュー、ちょっと似てる」
「俺も思った」
ルトとレグルスが言う。
「ドワーフの国は魔術を活用した装置のある、とても発展した都市でした。その装置は全てここにいるゴル、もとい伝説の発明家デリグラムが作ったものだそうです」
セリクが報告すると、ゴルが食べながら手をあげる。
「新しい魔術学校に、何か面白い仕組みを作れたらいいねって話してるんだ」
「魔術研究院と連携して企画を進めます」
「ノームが研究している魔術理論も加えられたらいいですね」
「次の遠征は、ノームの国だね!」
――食事が終わると、エリューとシェイドはまた展望室で二人の時間を過ごした。
「――それで、ジュビナーがワワワワ〜って泳いでてね、近づいたら、戻りのジュビナーだけ跳ね上がったの。だから、これならいけると思って。みんなでジュビナーをバシバシ落としたの」
「ちゃんと後で市場で捌けるように、カーツは鞘ごと剣を振ってもらって! あはっ」
「解決策が見つかって良かった〜と思ったけど、レグルスに "シーカント大漁獲祭"は名前がダサいって言われた。確かに!」
「……シェイドは、どう過ごしてた?」
ずっと笑顔で話を聞いているシェイドに、エリューが問いかける。
「……俺は、いつも通り戦地と執務室を往復して……」
(あ、そうだよね……)
「……皆の旅がどんな様子か考えていた」
「しかし毎回、想定外の話が出てくるから報告の時間は面白い」
「あはは、そうだよね〜大漁獲祭は想定外だよね!」
「ね、これから戦線に余裕ができるようになったら……一緒にいろんな国、行ってみようね!」
——微笑み合う二人を、城下町の明かりが優しく照らしていた。




