第51話 シーカント②
翌朝。
一行はシーカントの大橋へやってきた。
橋のたもとには規制線が張られ、兵士が注意をうながしている。
「……でっか。」
「橋、でっか。」
エリューとリーマルは橋を見上げて言う。
「これは世界で話題になる大きさですね……」
「大型の荷馬車が何台もすれ違えるな」
ルトとカーツは大人目線で会話する。
「お、いるいる、わんさか」
レグルスは遠目に川の中をのぞいている。
「見たい、どこどこ」
「あんま近づくなよ」
川の中には、大きな黒い影がヌルヌルうごめいている。
「ふーーーん……」
エリューはしばらく川を見つめたあと、スッと川の方へ足を進めた。
すると川の中から数匹のジュビナーが飛び上がり、エリューに襲いかかる。
「バカ言っただろ!」
レグルスが片腕でエリューをかばい、もう片方の腕で薙ぎ払う。
ジュビナー達は地面でバタバタ、ピクピクしている。
「レグルス、ありがとう〜」
「お前、近づくなって言ったのに……」
「ごめんごめん、でも分かった!」
「あ?」
「ジュビナーは、産卵のために川を遡って......海へ戻るときに襲ってるんだよ」
「……なんだって?」
「川を遡る時は脇目も振らず必死で、戻る時はお腹空いてて……メシ寄こせ〜って」
「……で?」
「うんうん、見えてきたぞ」
(このセリフ聞いたことある……)
セリクがデジャヴを覚える。
「ちょっと人手が必要だから、呼んでこよう」
エリューはルミエルに頼んで、シーカントの政務官と市場の人を数人呼んできた。
「エリュー様……どうなさったのですか?」
「ルミエル様、これから私たちでこのジュビナーたちを一掃します」
「え……」
「大量のジュビナーが溢れるので、市場でさばいてください」
言うなり、エリューはレグルス、セリク、カーツを連れて橋へ向かう。
川から凄まじい数のジュビナーが飛び上がり、黒い塊のようになってエリュー達に襲いかかる。
バシバシッ! パンッ!
レグルスはジュビナーたちに素早く一撃を入れ、跳ね落としていく。
カーツは剣を鞘に収めたまま振り払い、傷をつけないよう河原へ落とす。
エリューとセリクは圧縮した風を当て、まとめて吹き飛ばす。
——しばらくすると、橋の周りはジュビナーだらけになった。
エリューが政務官に説明する。
「産卵後の戻りジュビナーが襲ってくるみたいです。のぼりのジュビナーは襲わず、そのまま川をのぼって産卵するので、戻りジュビナーを大量に獲っても数は減らないはずです。ジュビナーは食べられるし、硬い鱗が利活用できます」
「なので――」
「毎年ここで、"シーカント大漁獲祭"を開催するのはどうでしょう!」
「腕に自信のある人を募って、倒したジュビナーの数を競う大会を開き、そのジュビナー料理で露店を出して、鱗で民芸品を作るとか!」
「そしたら、毎年の風物詩になりますよねっ!」
——政務官は、開いた口が塞がらない。
「楽しいお祭り、できそうですね! では、私たち今のうちに渡っちゃいますね! ルミエル様、ありがとうございましたー!」
帝国一行は馬車を引いて大橋を渡って行った。
「……相変わらず、発想が普通じゃないわ……」
ルミエルが呟いた。
「……解決した割には、反応薄かったね」
「それはエリュー、お前のせいだろ」
「えっ」
「"シーカント大漁獲祭"の名前がダサい」




