第48話 エルフの国 帰国報告
地平線に帝国の大きな姿が見え始めた。
「あはは、でっか」
「あの日を思い出しますね」
馬を進めながら、リーサとエリューが話している。
少し雪が散らつき始めた。
城内に到着すると、アーカーが出迎えた。
「お帰りなさいませ!」
「アーカー! ただいま!」
「良いことがあった表情ですね」
「うん、色々話したい」
「馬車が見えてすぐ、陛下にも知らせを飛ばしていますから、間も無くご帰城されますよ。今日は遠征チームのみなさんとお食事しながら報告会するのはいかがですか?」
「わぁ、最高だね! じゃあ、わたし陛下のお迎え行ってくる!」
——エリューは裏口の馬房でシェイドを待った。
早駆けする馬の足音が遠くに聞こえる。
足音は近づくにつれ、ゆっくりになり……
遂に、奥の道に揺れる影が見えてくる。
「シェイドー!」
出入り口から出て手を振る。
「エリュー……!」
シェイドは虚を突かれた顔で馬を降り、エリューに歩み寄る。
はずむ息が白くなり、消えていく。
「お帰りなさい!」
言ってから、エリューはパッと笑った。
「……あ、ただいま!」
——食堂でシェイド、アーカー、遠征チームの6人が食卓を囲む。
「最初はみんなエルフの国が見えなくてね」
「エリュー以外、な」
「そうそう、近づいたら急に見えて――」
「弓兵のフィンに会って、見えるやつだけ入っていいと言われて、セリクは見えたことにしちゃおうって」
アーカーが笑う。
「"外れの地域"に宿泊許可もらって、みんなで行ったら素敵な小屋があって――」
「"外れの地域"は、混ざり者たちの地域だそうです」
「私とセリク以外はみんなで楽しく宴会して、ねー」
「楽しかったなー」
「楽しかったです!」
「私たちは残念ながらエルフの王と夕餉の席でね……」
「は、はい……」
(ぼ、僕には怖くて言えないくだりだ……))
「一緒にダンスさせられたりー、明日も来い、なんて言われてね」
——シェイドの指がピクッとする。
「翌日、戦線見てからお城行こうとしてたら、王が戦線まで来ちゃってね、城へ引っ張っていかれるわ、ドレス着せられるわ……」
(陛下はずっと無表情なのに……明らかに不愉快になってる……!)
「で、最終的には"協定を結んでやるが、お前をもらう"って……」
……カチャ。
シェイドは遂に食事を中断した。
「でも、お断りしますと言ったら、じゃあ帰れ、となってね……。もう諦めて帰ろうとしたら、"外れの地域"のみんなが帝国に行くよと言ってくれて……!」
「無事、目的達成して帰ってきたわけです!」
みんなで拍手をする。
「なので、森に素敵な場所を用意してあげたいの」
「承知しました、早急に計画致しましょう」
「何人くらい来てくれるかはまだ分からないけど、みんな魔術が上手で、弓や剣や得意武器はそれぞれで、とても頼もしかった!」
「素晴らしい遠征になりましたね」
「うん! いいスタートになったよね!」
——食後はエリューとシェイドで展望室へ来た。
「久しぶりの帝国料理、美味しかったー! 前菜のあのソース、凄い好き」
「エルフの国のワインは、薄味だったよ。みんな帝国ワイン凄く気に入ってた!」
「そうそうエデュバラにも寄ったよ! 国王陛下とお話してきたの! 王妃殿下も。二人とも、とっても素敵な方だった!」
「アステナの部屋に泊まって、いろーんな話をした。楽しかった! アステナも、もうすぐ婚約するって!」
「デルガルドの国ってね――」
シェイドは、話が尽きないエリューをじっと見つめ、静かに微笑んでいた。




