第46話 エルフの国①
エデュバラを出て、エルフ探訪チームは西へ進路を変えた。
西には深い森が広がっている。
昔作られた細い道をみつけ、ゆっくりと進む。
――森の奥に開けた空間があり、美しい王国が見える。
「あ、あれか! 思ったより大きいね!」
「ん? どこどこ」
「え、アレだよ」
みなエリューが差す方向に目を向けるが、森しか見えない。
「エリューしか見えてないな」
「え! うわー自信無くすなー、本当にあるかなー」
「お土産ワイン、こっそり開けたか?」
「そうそう実は昨夜ーって、飲んでません」
もう一度、王国を見る。
「見えなくする魔法が、かかってるのかな?」
「とりあえず、近づいてみようか」
近くまで進む。
「……おわっ! びっくりした!」
「急に、見えました」
「でっか!」
「みんな見えた!?」
「良かったー私が変なんじゃなくて」
「お前たち、立ち止まれ!」
大きな声が響いた。
一行は足を止め、辺りを見回す。
弓を構えたエルフの青年が現れた。
「何の用だ」
「ガーシュタルク帝国からの使者です。エルフの国の国王陛下とお会いしたいのですが……」
「なぜ王国が見えたんだ」
「あ……ごめんなさい、なんか見えちゃいました……」
「……帰れ」
エルフの青年はそう言うと姿を消した。
「うーん……とりあえずこの辺で野宿するか」
「そうだね」
「さっき、川の音したよね」
「あっちの方にありそうだな」
みんなで手分けして、野営の準備を進める。
すると、先ほどの青年が戻ってきた。
「王国が見えたやつだけ、入っていい」
……一行は小声で緊急会議を始める。
(わたし、行ってくるよ)
(いや、それはだめだ危険すぎる)
(でも、入国のチャンスだよ)
(一人は絶対ない。何か考えようぜ)
(あ、じゃあさ、セリクも見えてたことにするってのはどう?)
(……僕!?)
(エリューお前、とんでもないな)
(だってもうみんな見えてるし、バレないよ))
(魔術師だしな、押し通そう)
エリューとセリクは二人で青年のあとをついていく。
王国全体は霧が張ったような空気だ。
繊細な城門をくぐり進むと、横に広い飴細工のような城が近づいてくる。
「――何用だ人間」
エルフの王と思われる男が言った。
「こんにちは。私はガーシュタルク帝国 皇帝の婚約者でエリューと申します。貴国と友誼を結びたく参りました」
「何のための友誼だ。目的を言え」
「はい、帝国が守る境界線を共に守っていただきたく参りました」
「我らが領域にも境界線がある。我々で管理している。帝国に手を貸す余裕は無い」
「でも、帝国の境界線が突破されたら、困りますよね」
「それは我らが境界線も同じことだ」
「…………」
「……まぁいい。外の情報を得るには良い機会だ。
夕餉の席についてもらおう」
「あ、帝国産のワインを献上いたします。乾杯しましょう」
「良いだろう。 "外れの地域"に宿泊を許可する」
「そこの弓兵、案内しろ」
「承知しました」
城を出て、城門方面へ向かう。
前を歩く弓兵の青年に、エリューが話しかける。
「どこかに泊まれるなら、仲間達も呼びたいです」
青年は歩きながら答える。
「……いいよ。城に入るわけじゃないし、"外れ"に人が増えてても気づくわけない」
城門を出てルト達と合流し、"外れの地域"へ向かう。
「"外れの地域"は混ざり物の地域ってことだよ。混血が住んでる地域。俺らで境界線の防衛も回してる」
「そうなんだ……あなたは、人間の血が入ってるの?」
「そうだよ」
「じゃ、一緒だね」
"外れの地域"には大きな木をくり抜いた家や、木の枝に小屋を構えたものなどがあった。
「どうしたフィン、その人間たち……」
「帝国の使者だって。今夜はここに泊まる」
すれ違う仲間たちに短く説明するフィン。
「あ、どうも、お邪魔しまーす!」
「こんにちはー!」
すれ違うエルフたちに短く挨拶するエリュー。
「ここ今 空き家だから、ここ使って」
丸太を重ねて作られた小屋だ。
「ありがとう! うわぁーこんなん……パーティじゃん!」
「エルフの国 宿泊記念パーティだな」
「あぁ〜城じゃなくてこっちに居たい」
「遊びに来たんじゃないぞ。気張ってこい!」
エリューは持参したドレスに着替え、荷台にあるワインの木箱を開けて5本取り出した。
「ワイン5本だけ持ってく。あとはここのみんなで飲んで! 干し葡萄も美味しいよ」
小屋の扉を閉めながら、大きな声でルトに言う。
「……夕餉の席が終わったら私も参加するから、残しといてね!」
バタン。
カチャ――
「……干し葡萄もね」
「いいから早よ行ってこい」




