第45話 エデュバラ②
その夜、エリューはエデュバラの晩餐室でアステナとその両親と食卓を囲んだ。
「エリュー様のエフォルテ演奏は素晴らしかったですわ」
エデュバラ王妃はアステナにそっくりの美人だ。
「沢山弾いてくれて、ありがとうね。とても豊かな時間であったよ。ね」
エデュバラ国王は王妃と微笑み合いながら話す。
「お褒めの言葉、ありがとうございます。砂神祭はもう終わったんですか?」
「先週で終わったのよ。惜しかったわね」
「今年の砂神さまは、どこにいらっしゃったんですか?」
国王が眉を上げる。
「おや、君、砂神さま大移動、知ってるの?」
「はい! アステナから聞いて、大笑いしました!私も見たかったです」
「そうかぁ。じゃ、来年はおいで〜。美味しい "砂神祭屋台"が沢山出るんだぁ」
「え! 絶対いきます」
「お父様は人を笑わせるのが好きなのよ」
「陛下はいたずら好きなのですよね」
「この前も近衛隊長に――」
アステナと王妃は食事のあいだ、国王のいたずらを楽しそうに語った。
エリューはアステナの寝室で大きなベッドに寝転がった。隣にアステナも寝転がる。
「すっごい、すっごい素敵なご両親」
「ふふ、ありがとう。私も大好きなの」
「デルガルドの王太子様とは、どう?」
「えぇ、とても順調。まもなく婚約できそうよ」
「わぁーおめでとう!」
「どんな方なの?」
「とても優しい、おっとりとした方よ。上目遣いで話すと、お顔が真っ赤になって可愛いの」
「きゃーー」
エリューは足をバタバタする。
「エリューはどう?皇帝陛下とうまくいってる?」
「あ、うん。仲良くしてると思う」
「ハンサムよねぇ」
「かっこいいよね。騎士の稽古をつけてる時にね――」
エリューは訓練中、脇をトンと指摘するシェイドの真似をする。
「――エリューは、なぜ社交の場に出てこなかったの?」
「出してもらえなかったんだ」
「皇妃試験に出すなら、社交界で知られてる方が有利そうなのに、なぜなのかしら」
「なんか、ちょっと異常なくらい、閉じ込められてたんだよね。母が庶民だったから……なのかなって、思ってる。国から出たことなかったし、朝ごはんと、寝る時間以外は、ずっと各分野の訓練だったんだ」
「だから全てに通じているのね」
「……わたし、そんなに色々できて見える?」
「えぇ、完璧超人に見えるわ」
「そうなんだ……」
「父からはずっと全てがダメだと言われ続けてたの。周りの人と比べる機会もなくて……だから、帝国に出てきて少しずつ、なんかおかしいと思い始めてるところ」
「……エリューのお父様は、エリューをどうしたかったのかしらね」
「分からない……」
「婚約式で父と会った時に "皇妃となるべく育てた" と初めて聞いて、びっくりした。でも、社交は要らないんだって。城にいろって」
「……お父様と、もう少しちゃんと話し合う必要がありそうね」
「…………うん」
「エルフの国へ行くんでしょ?」
「うん。アステナは行ったことある?」
「ないわ。でも、人間の国ではエデュバラが一番近いみたいね。エルフを見かけた、なんて話は時おり耳にするけど……関わった話は聞かないわ」
「うまくいくといいわね」
「ありがとう。頑張ってくる」
――その後も二人は様々な話をしながら、夜が更けていった。




