第44話 エデュバラ①
エルフ探訪チームは随分と南下してきた。
この数日、服装が半袖に変わっている。
「もう少しでエデュバラが見えてきそうですね」
馬に乗り、地図を広げてセリクが言う。
「大きな街だから、色々補充しよう」
隣のルトが返す。
エリューは荷馬車の隙間に入り込み、膝を抱えて座っている。
(シェイド……)
——エリューの手を強く握り、額に当てて目を瞑るシェイド。
あの時の光景を思い起こすと、心臓がキュッとする。
「……会いたいなぁ」
抱えた膝に頭を乗せる。
エデュバラは砂地に建てられた巨大な都市だった。
大小の建物の奥に、流線形の不思議な形をした王宮が見える。
「リーマルとエリューは買い出しチームな。俺らは宿の手配してくる」
「やった! スイーツ探しにいこ!」
「買い出しだっつってんだろ」
二手に分かれて行動する。
「あー、みて! "砂神さまチュッキー!"」
「これがあの噂の砂神さま……」
「どうしよう、とてつもなく欲しい」
エリューはチュッキーの袋を放せない。
「先に本物の砂神さまを見てからにしよ?」
「確かに。全然違うかもしれないよ」
リーマルが突っ込んで、ようやく手放す。
「アステナ様にも会いたいなー。出発前に手紙送っておいたから、お城行ったら会えるかな」
「じゃ、先に行ってみよう!」
3人は大きな城門の前に来た。
「……ここ、砂神さまが開門待ちしてたところ!」
「こんな感じかな」
リーサが城門を向いてしゃがむ。
「きゃはははそうそう! わたしもそんなイメージ!」
エリューが笑う。
騒がしい3人の元へ門番がやってくる。
「どうしましたか」
「あっすみません、アステナ王女殿下にお会いしたくて……私はバルクシア王国王女のエリューです」
「……分かりました、中のものに伝えます」
とてつもなく驚いた顔をして、門番は中へ入っていった。
しばらくすると、エデュバラの騎士が2名やってきた。
「アステナ王女殿下の元へご案内します」
(やった!)
——エデュバラの神殿は天井がとても高い。
貝の裏側のような素材の廊下を進み、泉のある庭園を抜け、奥の建物までやってきた。
天井まで続く細長い扉を開けると、アステナがいた。
「エリュー様、エデュバラへようこそ!」
アステナが細い両腕を広げ、立っている。
「アステナ様! ありがとうございます!」
エリューはアステナの元へ駆け寄る。
「来てくれて嬉しいわ。ねぇ、積もる話もあるし、今日はわたくしの部屋に泊まりにいらっしゃらない?」
エリューは後ろにいるリーマルを振り返る。
「姫さま、もちろんです! 私たちはルトに伝えに、宿に向かいますね」
「ありがとう!」
「明日の朝、お迎えに参ります」
アステナはエリューを連れて城内を進む。
「ぜひ、見て欲しいものがあるの」
(え、砂神さまかな……!)
細く高い柱がたくさん立つ大広間の真ん中に、真っ白なエフォルテがある。
「……うわぁ! なんて綺麗なエフォルテ」
「ねぇ、エリューのメロゥ・トルゥがもう一度聴きたいの。みんなにも聴かせたいわ、お願い!」
アステナは手を組んで、首を傾げる。
「えーーー……そんなに言ってくれるなら……でも、みんなはちょっと……恥ずかしいかな」
アステナは周りに"おいでおいで"をすると、広間に置かれた椅子の一つに座り、両手を広げて開始の合図をする。
「あ、じゃあ……頑張りまーす」
エフォルテの前に座る。
『お前の演奏からは歌が聞こえてこない』
『音が光になって舞い、歌が聞こえるようでした』
——父の言葉のすぐあとに、アーカーの言葉が聞こえてくる。
(アーカー、ありがと)
スゥッと息を吸い、演奏を始める――
――演奏を終えると、ひと息おいて、アステナが拍手を送る。
少しずつ集まっている宮殿の人々も拍手する。
「あぁ、やはり素晴らしいわ」
アステナは目を閉じて、仰ぐように呟く。
「ねぇ、他の曲も聴かせて!」
「わし、アレ聴きたい。あのかっこいいやつ」
アステナの隣に座る男が言った。
ふくよかで、穏やかな雰囲気の人だ。
「あ、エリュー、お父様よ」
「あなたは……!」
エリューは目を輝かせ、跳ねるように椅子から降りる。
「エデュバラ国王陛下ですね! 砂神祭の話を聞いて、とてもお会いしたかったんです!」
国王はニコニコとエリューに手を振った。




