第41話 笑顔
「――じゃあ、メニューはコレでいいね」
テーブルの紙に書き込みながら、エリューが言う。
「できればみんなで食べたいけど…… 何人までならいける?」
「7人が限界だなー」
ルトが部屋を見回して答える。
「そしたら、レグルスに来てもらおうかな。陛下のこともよく知ってるし、盛り上げ上手だし。セリク、呼べなくてごめんね」
「いや、全然大丈夫です。陛下と食卓を囲むなんて、喉通りませんし」
セリクが手のひらを向ける。
「えー、陛下怖くないよ?」
「そういう話じゃなく……」
「本当は、みーーんなで食べたい」
「いつか大広間を使ってパーティすればいいさ。"世界うまいものパーティ"」
ルトが言った。
「うーわ! ……それ、やる。絶対」
――数日後、レグルスがシェイドを連れて離れを訪れた。
「陛下、よようこそお越しくださいました!」
「ごゆっくりお過ごしください!」
リーサ・マルサが固いお辞儀をする。
「……いつも楽しく過ごす様子を垣間見ていた。招宴に感謝する」
「カッタいですよ、陛下。今日は、"ありがとう" でいいんすよ」
レグルスがシェイドに声をかける。
「レグルスも、来てくれてありがとね!」
「酒、ある?」
「ちょっと、そこはレグルスも "ありがとう"でしょ!」
「さーけ」
「帰れ!」
レグルスは笑いながら玄関をくぐる。
「――これだな」
シェイドはテーブルのカードを指差した。
「さっすが陛下、当たりーす」
レグルスが3枚のカードを表にする。
シェイドが差したカードにパピルキーの絵が書いてある。
「えぇ……私、何回やっても当たらないのに。陛下どうして分かるんですか!?」
「レグルスは俺の時に難易度を下げている」
「……そんなことないっすよ」
「なんだってぇ!? ……どうやってんの、それ」
「純粋なエリューは、知らなくていいよ」
「絶対バカにしてるでしょ」
「純粋だなーっていつも思ってるよ」
「思ってないね」
「エリュー、思ってるよ」
「あ、でたでた! バカにしてる時、絶対その言い方するよね!」
喧嘩口調でじゃれ合う二人を見て、シェイドがふっと微笑んだ。
「仲がいいな」
シェイドの笑顔を見て、口を開ける二人。
「今の笑顔は、私のもの」
「あれは俺に向けた笑顔な。勘違いすんな」
「え、私の婚約者」
「その前から、俺の君主」
「順番とかないし」
「ちゃんと順番守れよ」
早口でやり取りする二人を見て、シェイドは声を出して笑う。
「よくそんなに頭が回るな」
シェイドの笑い声を聞いて、二人も笑った。
マルサがシェイドに声をかける。
「あの、陛下、お酒は召し上がりますか?」
「あぁ、いただく」
カーツがワインの栓を開ける。
ルトは腕を振るい、バルクシア料理をふるまう。
「コレとコレ、辛いんで。辛いの、いけますか?」
「いける」
「コレ、美味しいので食べてみてください」
エリューは小皿に取り分け、シェイドに渡す。
「戦線で休憩中、"陛下は目が10個ある"って話になったことがあって」
「……まさか! 陛下、本当に……?」
「本当にあるわけねぇだろ、例え話だよ」
「誰かが見たって話かと思うじゃーん!」
「話が進まねぇだろ、ちょい黙ってろーっての」
シェイドがふっと鼻で笑う。
「戦闘中、苦戦してるヤツのところにサッと行って、チャチャっと敵の体力削って戻ったり、まだ戦線に慣れてない若手に、ある程度戦った敵をスッて送るんだよ。で、自分で倒せたっていう経験を踏ませてやる。戦いながら、周りをよく見てるんだよな」
「……なるほどー、そういう意味の目だったか」
「やっと分かったか」
「知ってた知ってた」
「見苦しいぞ」
みんなが笑う。
「敵が大勢いても、みんながいい感じに応戦してる時は、陛下は"一閃"使わないんだよなー。みんながしんどそうにしてると "下がれ"って言う」
「出た、みんなが好きな陛下の "下がれ"だね!」
「だから俺は、敵がわんさかいる時は基本しんどさを醸し出してる」
「……知っている」
「あれ、バレてた」
「だからお前以外を見て、判断している」
「まじか」
みんなで笑う。
「じゃ、またな」
「レグルス、ありがとう〜。陛下、明日からの戦線もお気を付けて」
「あぁ」
「皆、美味しい食事と、楽しいひとときを……ありがとう」
レグルスとシェイドは宮殿に向かって歩く。
「――お前は存外、気を遣うんだな」
「全然、使ってないすよ。いつも通りです」
「……ありがとう」




