表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
34/115

第34話 バルクシア王の視察

バルクシア王とアーカーを乗せた馬車が、戦線の"中"を通過している。

 

「帝国は3つの戦線を守っています。ここは万が一の予防線なので騎士の数も少なめですが、前線はその奥にあり、陛下はそちらにおられます」


「王女は予防線にも近づけないで欲しい」

「……かしこまりました」


「――そういえば。王女殿下の魔力は素晴らしい。履歴書にも、同封のお手紙にも書いてありましたね。全属性が扱える方など……初めてお会いしました」


 バルクシア王は黙っている。


「もしや……国王陛下も全属性が扱えるのですか」

「いえ……」

「では、エリュー様のお母様がお得意だったんですね」

「あの建物はなんだ」


「……あれは補充用武器庫です」




 ――アーカーと王を乗せた馬車が城の裏口に止まる。

 

「城内もご案内しましょうか」

「結構だ」

 

「ではお食事のお支度を――」

「いや……やはり」


「将来の皇妃の部屋を見せて欲しい」



 王は皇妃用の部屋の扉を開ける。

 部屋は薄暗く、整ってはいるがガランとしている。


「――ご利用がまだ先なので、お支度は整っておりませんが――」


 王は一直線にバルコニーへと向かう。

 窓を開けて空を見回している。


「……近くに飛び移れる木はありませんし、この高さなら登ってくるのも……」

「ありがとうございました」


 バルコニーを確認すると、内装には目もくれず、王は部屋を出て行った。





 ――食事会ではバルクシア王、エリュー、アーカーが席に着いた。

 食堂の隅にはリーサ・マルサ・セリクが控えている。


 エリューはとても美しい所作で食事を続ける。

 しかし顔を上げることはなく、無表情で口へ運ぶ。


 

「明日の婚約式は10時より大聖堂で執り行われます」

 

「皇帝陛下と近しい、限られた関係者のみ参列いたします」


「明日はきっと清々しい秋晴れとなることでしょう」


 アーカーは業務的な話題のみ時々切り出しながら食事を進める。


「皇帝陛下は今夜お戻りになるので、明朝お目通りいただけます」


「分かりました。――では、失礼する」


 王は食事が終わると、早々に席を立ち、食堂をあとにした。




「……なかなか、掴めないお父様でいらっしゃいますね」


「――嫌な気分にさせてしまって、ごめんなさい。父と対峙すると、頭が停止してしまって……なんのフォローもできず、ごめんなさい」


 エリューは椅子の背もたれに力無く寄りかかり、どこか一点を見つめたまま呟いた。


「とんでもないことです。親子関係とは、難しいものですよね……私も父親の前では、うまく立ち回れません」


「……そっか。アーカーもなんだ……」

 エリューは背もたれに頭を預けたまま、ころっとアーカーの方を向き、弱々しく微笑んだ。



「エリュー様……」


「明日は、皇帝陛下との幸せな未来のことだけ——考えていれば良いですからね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ