第30話 皇妃補佐官セリク③
「わざわざお越しいただき、申し訳ありません……!」
宮務局長が恐縮して挨拶する。
「こんにちは、エリューです。お部屋の引越しがもう決まってると聞いて――」
「そうなんですよ〜。もう、すぐご移動の予定で……」
「――でも、わたしまだ婚約中の身で……皇妃じゃないのに皇妃の部屋を使うのは……」
「いや、それは……」
「これ、誰かが離れに住む私を憐れんでの決定、ですよね。お優しい心遣い――でも、実は私、あの離れがとても気に入っています」
「結婚するまでの間、このまま過ごしたいんです。皇妃の部屋をどんな風にしたいか、それまでに諸々決めておきますんで!」
「いやしかし――既に手配も始まってますし……」
「何が来ちゃいます?」
「……!?」
「もう手配しちゃったものって」
「えぇーと……」
「大きな物、届いちゃいます?」
「いや……その……」
「まだ手配取消できるものは、すみません〜手続きしておいてください」
「は、はいっ」
宮務局を出ると、セリクが口を開いた。
「……役に立てなくてすいません」
「えっそんなことないよ!」
「でも僕、何もできてないし」
「この件に関しては、わたしが言わないと止まらない気がした! でも――」
エリューはセリクを見た。
「これからきっと、色々あるじゃない?"帝国のこと"とか "私のこと" とか。
わたしもどうしたらいいか分からないこと、あると思うし、そしたら今日みたいに、一緒に考えてくれる?」
「……はい」
「良かった! ありがとう心強い」
「ね、セリク今日の夕食、一緒に食べよ!」
「は、はい」
「セリク、マルマロ好き?」
「えっ」




