第27話 怪文書の答え合わせ
「ただいまー!」
エリューが離れの扉を開ける。
後ろにレグルスとライネフがついている。
「お帰りなさい!解決しました?」
「あ、いらっしゃいませ」
「解決したよーもうびっくり!」
「もう、びっくり!」
「結局なんだったんですか?」
「待って待って、すごい話なんだよーちょっとお茶でも飲みながら話そ!」
エリューは棚からポットを取り出す。
ルトがそれを見て鍋を火にかける。
「ルビーの雫を買いに行ったの。そしたら中に白い紙が入ってて――」
エリューは椅子に飛び乗るように腰掛け、ことのいきさつを話し始めた。
マルサが相槌を打ちながらポットに紅茶の葉を入れる。
「大広間のエフォルテを開けたら文字が書いてあって――」
ルトがポットにお湯を注ぐ。
リーサがティーカップを並べる。
「展望台行ったらパジュマロフが置いてあって――」
ルトがテーブルにチュッキーを置く。
話しながらも、すかさずチュッキーを手に取るエリュー。
「りんごを拾ったら結局わたしも馬小屋で――」
不服そうにチュッキーをモグモグする。
「"中"に着いたらみんなと陛下がいて、みんなが花びらをバーッてやって……婚約おめでとうございます!って」
「きゃああああぁぁぁ!!」
リーマルが叫ぶ。
「びっくりでしょ!」
「それは泣く! 私はその場にいたら確実に泣きます! てか今ちょっと泣きそう!」
「壮大な仕掛けだったってことですか!?」
「そうなのーぜんっぜん気付かなかった!」
「誰が計画したんですか!?」
「その2人を連れてきたのよ」
「……えぇー! 一緒に悩んでるふりして!?」
「アーカーもだって」
「面白かったろ?」
レグルスが得意げに言う。
「さすがに、エフォルテとかパジュマロフで勘付くと思ってたけどな」
「犯人探しより謎解きに真剣だったから、ぜーんぜん!」
「エフォルテのところが難しかったんだよ」
「先に手紙を入れておくと、弾く前に見つけるかも知れないので、弾き終わってからこっそり仕込みました」
「……あ、だからライネフが見つけたのか」
「アーカー様は初めから裏手で待機してたんだぜ」
「急いで来たって言ってたのに」
「演奏を聴きたかったんでしょうね。エフォルテを計画に入れ込んだのはアーカー様ですよ」
「"政務があるので一緒には回れませんが"って面倒なところはしっかり断ってたくせに」
「……よく考えたら、陛下に怪文書が届いてるのに、アーカーが知らないわけ、ないじゃんね……」
「パジュマロフ、もし私が引かなかったらどうしてたの?」
「あれは絶対お前がパジュマロフだったんだよ」
「え、なんで」
「3つともパジュマロフだったんです」
「……うそーー! 2人とも普通の顔して食べたじゃん!」
「あのなぁお前、俺たちがあの瞬間、どんだけ必死で演技してたと思ってんだ? 妙な食べ物編み出しやがって」
「噴き出しそうで、堪えるのが大変でした」
「ちなみにあのマルモル作ったのは、俺」
ルトが調理場から手を出す。
「エリュー様がパジュマロフになる様子は"中"の隊員たち望遠鏡で見てました」
「やられっぱなしじゃ可哀想だからな。見晴らしのいい展望台でパジュマロフになってもらったぜ」
「……えぇぇ嘘でしょ、わたしどんな顔してた!?」
「いい感じにおもろい顔してたぜ」
「嘘でしょ……もうお嫁にいけない」
「いきかけてるから大丈夫!」
「ダメもういけない」
「エリュー、かわいいよ」
「腹立つわー!」
隅の椅子に座っているカーツが微笑む。
「あのリンゴを一発で射るの、さすがでした」
「あぁ、矢は1本だけにして追い詰めてよかった」
「結構お腹がキュッとしたよー」
「もし外したら一緒に馬小屋行こうと思ってたけど……」
「あ! そうだよ、あの無駄に走らされた感じ! レグルス案でしょ!」
「お、冴えてんじゃん」
「あそこが一番意味不明で犯人に怒りが湧いた」
「的を射たご褒美りんごダッシュ」
「覚えてろよ〜」
マルサが笑いながらお茶のお代わりを注ぐ。
「もし正午に"中"に辿り着かなかったら、どうするつもりだったの?」
「書いただろ?【正午までに謎を解け。さもないと……】って」
「さもないと、なんなの?」
「決まってんだろ、陛下がご帰城されて俺たちが困るだろーが!」
みんなが笑う。
「てことは、陛下も何も知らなかったの?」
「そうですよ」
「じゃあ、陛下も何か謎解きしてたの?」
「陛下にそんな無駄なことさせられるわけないだろ」
「私にはできるのに?」
「むしろお前はさせ甲斐あるだろ」
「覚えてろよ〜」
ルトが「はんっ!」と笑う。
「陛下の帰城の時間に合わせて計画しました。もし魔物が予定より多く出てしまったら"中"の人員で応戦、少なくて予定が早まったら"中"でなんとか引き止める計画も練っていましたよ」
「長時間引き止めるのはきつかっただろうなー」
「絶妙なタイミングでしたよね」
「結果、全部うまくいったな」
「すごーいねーよく考えたねー」
「お前の実力もな」
「僕たちの全速力についてこられるの、びっくりしました」
「へへ、そっか。まぁまぁできてたんだ私」
「エリュー様は本気でぶつかると桁違いだということは、よくわかりました」
「ありがとライネフ」
「とにかく、そんな感じで凄い一日だったよ〜」
「いやー面白かったです!」
「忘れられない一日ですね」
「レグルスは帝国催事担当になったらいいのに」
「絶対やだ」




