第二十一話 試験⑥最終試験
候補者たちは、第一回試験が行われた円卓の間に集められた。
「皆さま、いよいよ本日最終試験を開催します」
円卓にはアーカーとスウィフトが並び、その周りを囲むように候補者が座っている。
「最後の試験は――【皇妃になったら何をするか】をお答えください」
「事前に考えをまとめてきていただいていると思います。発表はフィオーネ様、ルミエル様、レーラ様、タリエラ様、デリーサ様、エリュー様の順にお願いいたします」
「では、フィオーネ様、お願いします」
「はい。わたくしは陛下の一番の理解者になりたいと思います。戦地から無事にご帰還なさるよう毎日祈りを捧げ、お疲れの際には環境を整え、お心を癒して差し上げられるような存在でありたいです」
「ありがとうございます。陛下のお心を支える存在になってくださりそうですね」
「では続いてルミエル様、お願いします」
「はい。わたくしは政務を学び、陛下と共に歩める皇妃になりたいと思います。方針で悩まれた際には相談に乗れるよう、知識を身につけ、助けになれればと思います」
「ありがとうございます。とても頼もしい皇妃になっていただけますね」
「続いてレーラ様、お願いします」
「はい。私は国内で意見が対立し、争いになる経緯を知っています。決して国民から目を逸らさず、すべての国民が幸せに暮らせる国づくりのお手伝いをしたいと考えています」
「ありがとうございます。苦しい経験を帝国に活かそうとしてくださり、心から感謝申し上げます」
「続いてタリエラ様、お願いします」
「はい。わたくしは幼い頃から皇妃となるべく研鑽を積んで参りました。帝国の政治に関わるあらゆる知識も、各国との交流状況も把握しております。またいざという時は陛下と共に剣を持ち戦う覚悟もできております。誰よりもお側で陛下をお支えする存在になります」
「ありがとうございます。確固たる信念を持った皇妃になりますね」
「続いてデリーサ様、お願いします」
「はい。わたくしも、タリエラ様と同じく幼い頃から帝国皇妃として必要な全てのことを学んで参りました。陛下をお支えすることは生き甲斐であり、人生の目的です。陛下の望む全てのことを叶えるため、全力で尽くします」
「ありがとうございます。後世語られる陛下への深い愛を持った皇妃になりそうですね」
「では最後に――」
「エリュー様、お願いします」
その場にいる全員の視線がエリューに集まる。
「はい……」
「私は......新しい戦団と、学校を作りたいです」
「戦団と学校、ですか」
「帝国戦団は大規模ですが、明らかに人員が足りていません。生涯の殆どを戦いで終わらせていく人が沢山います。
もっと、生活にゆとりと彩りを持って生きて欲しいんです」
「帝国戦団は貴族だけです。でも、一般国民の中にも戦える人間はいます」
「――国民を戦いに巻き込むというの!?」
デリーサが身を乗り出して口出しする。
円卓の空気が張り詰めた――
「国民は守られるだけの存在じゃないと思うんです。剣も弓も武術も魔法も……使える人間は沢山いるのに、身分が違うから入団できていない……」
「もちろん希望者のみ採用します。命を無駄に落とさないよう、採用試験も実施します」
――デリーサはゆっくり座り直した。
「また、帝国は魔術団の人員が圧倒的に少ないです。
騎士で成り立つ国だから、騎士希望者は多いけど、魔術師希望者が少ない……だから、学校で後進を育てます」
「魔術師の数が増えれば戦団全体にゆとりが生まれて、今戦っているみんなが自分の時間を生きられるようになります」
――アーカーが指摘した。
「しかし、教える人間がいません。みな戦地へ出払っていて、教師分の人員を割くことができません」
「魔術は歳を重ねても扱えます。ご引退なさっている魔術師の皆様に力を貸してもらいます。それでも足りない分は――」
「私が戦地で補います」
――みな、息を飲んだ。
「以上です」
「わかりました、ありがとうございます」
「まさかこんな具体案が出てくるとは……驚きました。すぐにでも、検討したいと思います」
「それでは、最終試験は終了いたします。みなさま、長い試験期間 お疲れ様でございました。結果が出るまでまだ日数がかかります。今までの緊張を忘れて、帝国での日々をお楽しみください」
「——ねぇ、エリュー様」
帰ろうとするエリューに、デリーサが声をかけた。
「国民戦団と学校の案はいつから考えていたの?」
「いつからだろう……訓練場に差し入れを持って行くようになってからだから――」
「あなたそんなことしてたの」
「訓練場にいるメンバーがよく替わるから、余裕がないんだと感じて、思いつきました」
「そう……」
デリーサは大きくため息をつき、小声で呟いた。
「私はこの国でずっと騎士団を見てきたけど、思いもよらなかったわ……」




