第二十話 試験⑤魔術試験
候補者たちは回廊に囲まれた中庭に集まっていた。
石壁が高い空間を作り、四角い青空が見える。
アーカーは、候補者の顔を順に見回した。
「本日は魔術試験です。事前にお伺いした、得意な属性のみ、ご披露で構いません。準備の関係で、今回の順番はこちらで指定いたします」
広場には木製の的や、大きな器などが用意されている。
「初めに火属性から参ります。まず、デリーサ様」
デリーサが前へ出る。
胸元ほどの高さに設置された木製の的が、少し離れた位置にある。
デリーサは手の指を合わせ詠唱する。
詠唱終わりに手のひらを的へ向けてバッと押し出す。
――的が勢いよく燃え出した。
両手を広げたほどの大きさの炎だ。
「お見事です。ありがとうございました」
控えていた魔術師たちが的の処理をし、新たな的を設置する。
「続いてフィオーネ様」
「はい」
フィオーネも同じように動作をする。
デリーサよりは一回り小さな炎だが、勢いよく燃え盛っている。
「水属性に参りましょう。ルミエル様」
ルミエルが詠唱すると、大きな石の器から水が溢れ出した。
続いてレーラは鋭い一直線の水を放ち、的を割った。
「風属性に参ります。タリエラ様」
タリエラは宮殿の四方から中庭の空に向かって吹き抜ける、強い風を作りだした。
デリーサは向かいの魔術師が放つ水攻撃を、風の壁で防いでみせた。
「土属性に参ります。タリエラ様」
タリエラは大人が立って隠れるほどの土の壁を作り出した。
「では、最後に――エリュー様」
エリューが前に出る。
「エリュー様は……全ての属性ですね」
候補者たちがどよめく。
「……はい」
「火、水、風、土、木、光……どの順番でも構いません。道具の準備は不要と伺っていますが……」
「――全てお任せでよろしいですか?」
「はい」
アーカーはニコッと微笑んだ。
「では、お願いします」
エリューは肩幅に足を広げ、両手を皿のようにして手のひらを上に向け――詠唱した。
手の平のすぐ上に、水の皿が現れる。
次の瞬間、一瞬大きく地面が揺れ、稲光が走った。
ドォォン!!
――凄まじい轟音と共に、青空から落ちた稲妻が水皿めがけて飛び込む。
水皿がバチバチと電気を孕み、上昇していく。
皿は徐々に巨大な球体へと姿を変え、中庭いっぱいの大きさに膨れ上がる。
次の瞬間、四方から真空波が水球めがけて飛んでくる。水球は勢いよく割れて飛沫が舞う。
割れた水球の中から巨大な火の鳥が現れ、飛沫は一瞬で蒸発する。
火の鳥は羽ばたき四角い空へ舞い上がる。
空高くまで上がっていき――四散する。
火の粉は落ちながら無数の花びらへと変わり、中庭へ舞い散った。
「――以上です」
中庭に居た者全員が、しばらく動かなかった。




