表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/116

第十七話 試験のあと

「エリュー様! 待ってください!」


 ライネフは走りながら声を上げた。


 先を歩いていたエリューはゆっくりと足を止めた。

 ライネフはエリューの前へ回り込む。


「なんで本気を出さなかったんですか」

「…………」


 エリューは黙って、斜め下の床を見つめている。


「具合が悪いなら、再試験を申し込みましょう!」


 エリューは首を振った。

「――悪くない」


「……何があったんですか」


 エリューの瞳が揺れた。

 口を開き、言葉を発しようとして息を吐く。



 ライネフはエリューの手を引き、廊下を歩き始めた。

 

「座って話しましょう」


 廊下の先にある小庭のベンチにエリューを座らせ、その向かいに片膝をついた。

 エリューは顔を背けている。


「――ライネフは……デリーサ様とタリエラ様のこと、昔から知ってる?」


「はい。お二人とも帝国の公爵家の方です」


「ずっとずっと皇妃になろうと頑張ってきたんだよ」

「……存じています」


「皇帝陛下のことも、ずっと見てきたんだよ」

「…………」

 



「……私は……」



「……この試験に受からなくてもいい、って気持ちでここにいるの」



「必死で臨んでる人に失礼だよね……でも、バルクシア王との約束だから、辞退は出来ないんだ……受かる気ないのにね」


「……エリュー様」


「ここまでの試験も、なるべく受からないよう動いてた。そんな遊び半分にふざけた人間、ここに居て欲しくないよね」


 エリューの頬に一粒の涙がこぼれた。

 

「ここにいる理由は、人それぞれです。受かりたくないことに罪悪感を持つ必要はありません。陛下が世界中に募集をかけ、選ばれた方がここにいるんです。周りの人間が文句を言うのはお門違いです」

 

「それから……」


「――本気でぶつかってください。後ろめたいのは本気じゃないからです」


 エリューの顔に驚きの表情が滲む。

 

「中途半端に臨んで、それでもエリュー様に決まったら……デリーサ様はもっと行き場のない気持ちになります。でも、本気で臨んでエリュー様に決まるなら、デリーサ様も文句はないはずです」

 

「決まってしまって、どうしても受け入れられないなら、その時に断ればいいじゃないですか」

 

「!!」


「陛下は、相手の気持ちを無視して無理やり娶るような方ではありません」

 

「…………」


 エリューは黙ってライネフの言葉を聞いていた。




「……偉そうに、たくさん言って、申し訳ありません」

 

「本気で向き合った結果の道なら――僕はどんな道でも応援します」


 そう言うとライネフは立ち上がり、廊下へ駆けて行った。


 エリューは固まったまま、ライネフの足音を耳で追った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ