第十六話 試験③剣術試験
――剣術試験の日がやってきた。
「剣術試験をご希望されたのは、デリーサ様、タリエラ様、エリュー様の三名です」
手元の資料を確認しながらスウィフトが伝える。
「それぞれ練習相手を務めた騎士と対戦していただき、剣術をご披露ください。では、騎士たちを連れて参りますので少しお待ちください」
スウィフトは演舞場から出て行った。
演舞場には候補者の三人だけになった。
「――剣術試験は私とタリエラだけだと思ったわ」
デリーサがエリューに話しかける。
「私たちはそれぞれ帝国有数の公爵家の人間なの」
タリエラの言葉に、エリューは下を向いた。
「生まれた時から皇妃となるべく教育を受けてきたわ。帝国皇妃に必要なスキルも身につけてる。何より、陛下のことをずっと近くで見てきた」
「――私たちは人生を懸けてここに立っているの。
帝国皇妃は軽い気持ちで立てる場所ではないわ」
(……この試験は、二人にとっては切実なのね)
「同じ想いで過ごしてきたタリエラに決まるなら納得もいくけど……」
(こんな軽い気持ちの人間が試験を受けるのは、我慢ならないんだね)
「――私も、なぜここにいるのか、正直分からないです」
顔を上げ、2人に答えた。
「それに、私は――」
「お待たせいたしました」
スウィフトが騎士を連れて戻ってきた。
「では、デリーサ様からご披露いただきましょう」
デリーサと相手騎士が向かい合う。
木刀がぶつかるたび、デリーサは演舞のように大きく翻る。
広く間合いを取り、華麗に木刀を回す。
何度も打ち合い、最後は綺麗に騎士に一発を加え終了した。
タリエラも同じように、美しい剣術を披露した。
「では、エリュー様」
エリューが前に出る。ライネフが向かいに立つ。
「――はじめ!」
ライネフが先制の突きを繰り出す。
エリューは突きをかわすものの、動きが鈍い。
ライネフは手首を返して木刀を振り下ろす。
エリューは木刀で受け止め、反撃するが、ひと呼吸遅い。
何度か打ち合い、エリューが木刀を横薙ぎに振るう。
ライネフは掻い潜ってかわし、エリューの足元を薙ぐ。
エリューは仰向けに倒れ、ライネフが倒れたエリューの胸元に木刀をつきつけ、終了した。
ライネフは肩で息をしながら、目を見開いてエリューを見つめている。
エリューは無表情のまま起き上がった。
「お疲れ様でございました、試験は以上で終了します」
エリューはライネフと一言も交わさずに演舞場を出て行った。




