第十五話 帝国騎士団
「お疲れ様でーーーす、マルモル屋でーーーす!」
宮殿の訓練場にトレイを持ったエリューが入ってくる。
「エリュー様!」
「ありがとうございます!」
訓練場にいた何人かが駆け寄り、トレイを受け取る。
「今日のみんなはえっと――」
「七番隊です。昨日第二戦線から戻りました」
「みんな無事かな」
「はい、欠けることなく帰還しました」
訓練場には20人前後の騎士がいる。
「今日は卵マルモルと、菜っ葉マルモルです」
トレイを両手で手差しして、どうぞと促す。
「いただきます!」
「ありがとうございます」
「わー嬉しいです!」
みんなで床に座り、マルモルを頬張る。
「今回はどんな感じだった?」
「はい、魔物の出現は比較的穏やかで、休憩をうまく回しながら守備できました」
年嵩の男性騎士が答える。
「どんな魔物が出たの?」
「あー、今回珍しいのがいましたよ」
「ヘクレントっていう、ピョンピョン跳ねてまわる厄介な魔獣です」
隣同士に座った男女の騎士が答える。
「へぇーやりづらそう」
「そうなんです。剣や弓とは相性が悪くて、広範囲に効く魔法で一掃したいタイプの敵ですね」
「あと皇帝陛下の"一閃"が効きます」
「一閃?」
「はい、陛下が剣を振るうと、真空の刃が扇状に放たれるんですよ」
「なにそれ、そんな現象聞いたことない」
「しかも向きや範囲を細かく調整なさるんです」
「空飛ぶ敵に一閃を放って一掃するの、めちゃくちゃかっこいいです」
「放つ前に "下がれ" って言われるの......たまんないっす」
「分かる。君主を差し置いて喜んで下がっちゃう」
「近接戦でも剣さばきが凄いんですよ」
「剣の重さがなくなったみたいに滑らかで――」
騎士たちは興奮した様子で口々に語った。
「そっかー陛下は強いんだねー」
エリューはマルモルを頬張りながら話す。
「陛下は人の域を超えた武の才をお持ちです」
「陛下お一人で騎士数十人分のお力があるので、なかなか戦線から離れられないんです」
エリューはうんうん、とうなずく。
「武術や魔術の部隊とも連絡取ってるの?」
「はい。食事はまとめた方が効率的ですし、連携したり休憩を回したり、同じ戦地では一緒に動きます」
「魔術師がいたら温かいの食べられるもんね」
「そうなんですよね〜火付作業が一瞬で終わりますからね」
「……バホッ!!」
茶色い髪の若い騎士が噴き出した。
「あ!当たり?」
騎士の手にあるマルモルから大量のパジュマロがこぼれ落ちる。
「はーいおめでとうー!あなた今日のパジュマロフです!」
噴き出した騎士に駆け寄り、手をヒラヒラさせる。
「菜っ葉だったかー!」
「たまごの方避けてたわー」
一気に安堵する騎士たち。
「こないだパジュマロフを三人に増やしたら衝撃が分散しちゃったから、一つに戻しました」
「じゃ、もう安心して食べられるんですね」
「一つで良かったです!」
「この極端に三角のやつ避けてました」
「それは罠を仕掛けた」
「引っかかりましたー」
「じゃ、午後の訓練も頑張ってくださいー!楽しかったありがとう!お邪魔しましたー!」
エリューは空のトレイを抱え、パタパタと訓練場を出ていく。
騎士たちはその背中をしばらく見送る。
「――王家の方に見えないんだよなー」
「私、皇妃は絶対エリュー様がいい」
「陛下をパジュマロフにする日が……」
「ブフッ!」
「陛下より先に栄誉に預かれて良かったなパジュマロフ!」
「口の中めっちゃ甘いっす」




