第十四話 マルモル作り
※【マルモル】おにぎりによく似たもの
エリューとルトは離れの調理場で並んで作業している。
「――で、袋に詰めて冷たい棚に並べて、一ヶ月待つんだってさ」
エリューは菜っ葉を細かく刻んでいる。
「ほぉぉぉう、熟成肉ねぇ!」
じゅうぅぅ。
ルトの持つフライパンから卵の焼ける音がする。
「国が変われば文化も変わって、面白いな」
「面白い〜めちゃくちゃ面白い。料理長にバルクシア料理も食べてみて欲しいよね」
「まぁ〜この城の料理長やってるくらいだから、世界中の料理を知ってるだろうけどなー」
ルトは卵をかき混ぜている。
「そうなんだぁ〜凄いんだね〜」
「[自由になったら]、世界うまいもの巡りするか」
「きゃあぁぁぁぁ!」
エリューの作業の手が止まる。
「いいねそれ、初めはどこの国から行く!? いや食べたいものより回りやすさから考えないとだよね……」
「コラコラいま考えんな、間に合わなくなるぞ〜」
「あ、そだね」
エリューは再び菜っ葉を混ぜ始めた。
「やりたいこといっぱいあって困る」
「でもお前、試験は全力で受けてこいよ?」
「ちゃんと全力でギリギリアウトライン狙ってるよ」
「ダーメだってお前こないだも――」
「あ、焦げるよ」
「うぉ、やべ」
ルトは卵を器に移し替える。
「エデュバラの砂神祭って準備期間に毎年必ず砂神さまが行方不明になるんだって」
「なんだそれ怖い話か?」
「ううん面白い話」
エリューはマルモルを作っている。
「で、毎年必ず見つかるんだけど、毎年見つかる場所が違うんだって」
「怖い話じゃねぇか」
「ううん面白い話」
「こえぇよ」
「ちょっと待ちなよ」
ルトもマルモルを作り始めた。
「で……なんだっけな」
「おいここで終わりはないぜ」
「ルトがチャチャ入れるからでしょーあ、そうそう去年は城門前で開門待ちしてたんだって」
「面白くなってきたな」
「砂神さまの石像は結構大きくて、運ぶのも大変なのに、一体誰がやってるんだと思う?」
2人でマルモルをどんどん作る。
「そりゃ砂神さまが自ら動いてるに決まってんだろ」
「開門待ちしてたらみんな笑うかなー、なんつってねブッブー」
「で、正解は?」
「正解は、エデュバラ国王でしたー!」
「まぁそうだろうな」
「え、なんで」
「そりゃお前、石像動かす数十人の人員をこっそり稼働させられる人間は限られてるだろ」
「うわ、ルト冴えてるねぇー。私分からなかったわぁ〜」
「遊び心満載国王だな」
「でしょ〜すんごい会ってみたい」
「今日は何個にするんだ?」
「えっとね、今日は一個にする」
「そうか。ほい完成」
「ありがとー。じゃ行ってくるね」
「おう、転んでばら撒くなよー」
「はーい!」
エリューは大きなトレイに載せた沢山のマルモルを持って出掛ける。
ルトは玄関の扉を開けてやり、手を振り見送る。
「……楽しそうで何よりだなっ」
頭を掻きながら中へと戻っていった。




