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第111話 先の地への第一歩

「あ、レグルスきた!」


 "先の地"調査隊はこの日、第一戦線から調査に出発する。


 ゴルは早朝に戦線へ到着し、調理場の装置を眺めたり弓術隊の弓をいじったりなどして過ごしていた。

 

 シェイド、フィン、ギスロムの3人は丘の上で調査の段取りを確認し、魔物が見えると隊に混じって討伐に参加した。

 

 エリューとカーツは調理場のルトを手伝い、談笑しながら過ごした。


 レグルスは集合時間ギリギリに到着した。


「……みんな なんでそんな早いんだよ」


 



 シェイドは出発を前に、仲間たちへ告げた。

 

「今回の目的は、主に地形の把握だ。全体を把握しきれなくとも、5日後には一度帰還する」


「はい! いよいよ第一歩だね。ねぇねぇ円陣組もっ!」

「そういうの、やりたがるよな」

「いいじゃん〜折角の旅、楽しもうよ!」

「円陣とは」

「えとね、丸くなって(こぶし)を前に出して、誰かが掛け声かけたらみんなで返すの。いくぞー! おー! みたいな」

「あぁ。我らもやる」

「良かった話が早い。じゃ、丸くなってー!」

 

 全員、円になり拳を中心に差し出す。


「……じゃ、シェイドなんか素敵な掛け声してもらって」

「お前……ここまできたら最後まで責任取れ」

「えっ」

「"未知なる大地へ"でいいか」

「うん! で、みんなで"出発!"ね、そうしよーはいどうぞ!」


「——未知なる大地へ」

「出発!」


 みな一斉に拳を振りかざした。

 




 

一同は馬で西を目指し、荒れ地を進む。

 

 茶色い荒野はやがて緑へ変わり、柔らかな風が草を波打たせている。

 草原の奥には青い海が見えてきた。


「あれ......思ったより、大陸は続いていないんだな」

 フィンが水平線を眺めながら言った。

 

「あぁ、もっと広大な土地が広がっていると思っていた」

 シェイドが答える。


「そのまま魔物の住まう世界になるのかと想像していたが……意外だな」

 ギスロムは歩きながら腕を組む。

 


 海岸線に近づくと、切り立った崖が続いている。

 

「うわぁ、高いね〜。この辺りからは、海に出られない感じだね」

 エリューは崖を遠目に覗き込む。

 

 海岸線に沿って草原を進んでいく。


「……魔物、いないね」

「のどかじゃな。眠くなるわい」


 一同は草原の岩場で昼食をとることにした。


「今日のお昼だけは豪華です! 早起きしてアンゴル料理長と一緒に、張り切りました!」

 

 エリューは弁当を広げる。

 衣をつけて揚げた肉、野菜を巻いて棒状にしたもの、味付けゆで卵、焼き魚、マルモルなど多彩だ。


 レグルスがマルモルを手に取る。

 

「エリュー、このマルモル……」

「もちろん、1つパジュマロ入りです」

「だろうな」


 みな、周りへの警戒は続けながら、楽しく談笑する。

 

「セントールの調査隊枠 争奪決戦、見たかったな」

 エリューが残念そうに言う。

 

「次点は誰だったんです?」

 カーツがギスロムに聞く。

 

「ナグタリオだ」


「わぁ! ナグタリオ、オーグリムに勝ったの?」


「あぁ、戦線での経験値が大幅に成長させたようだ。次の族長候補に名を連ねたな」

 

「凄〜い、ますます見たかった〜」

 

 

 

「エルフの国は"先の地"へ行ったことあるのか?」

 レグルスがフィンに問いかける。

 

「いや"邪悪な地"という扱いだったから、やはり踏み込んではいけない空気だったよ」

 フィンが答える。


 カーツが手にしたマルモルをエリューに見せる。

 エリューがニィッと笑う。

 

「先の地って、他にいくつあるんだ?」

 

「ソリュードの南、アルメデスの東の2箇所だ。他にデルガルドの鉱脈という記録があるが、封鎖されている」

 シェイドが答える。


「……あー、なんか他国に2ヶ所、駐屯地があるって言ってたな。それのことか」

 

「戦線が引かれる前は、大陸全土に魔物がいたんだよね。ゴル、その時代知ってる?」

 

「おったおった。旅する時は武器が必要じゃった。帝国があんなに大きくなったのは、戦線を引いて大陸に平和をもたらしたからじゃな」

 

「その通りだ。我々は戦線を守ることで他国からの信頼を得ている。税制の優遇や協力金に支えられて地位を築いた」


「へぇぇーー」

 エリューとレグルスが声を揃える。

 


 

——シェイドが急に立ち上がった。


 草原の奥にゆっくり動くものがいる。


「"手長像"だ」

「魔物!?」

「やはりこの地には、いるのか」

「単独っぽいな」


 

「俺だけでいい」

 シェイドは傍に置いていた剣を掴み、手長像に向かって進んでいく。


 手長像はシェイドの気配に気付くと低い呻き声をあげ、戦闘体制に入る。

 手長像はその長い手を振り上げる。

 シェイドは滑らかに剣を回し、頭上の手もろとも手長像を切り刻む。

 手長像はバラバラと崩れ落ちた。


 手長像が地面に染み込むように消えていく。

 シェイドは敵の最期を確認し、皆の元へ戻る。

 皆は戦闘中に昼食を片付け、出発の支度を整えていた。

 

「弱っていたように感じた。しばらくこの辺りを彷徨っていたのかもしれない」

 

「魔物の本拠地は、もっと奥地にあるのか、あるいは別にあるのか……」

 ギスロムは草原の奥を見据える。


「本に載っていた、地下迷宮かな」

 エリューは馬に乗り、たてがみを撫でながら草原へ目を向ける。


「可能性は高い」

 シェイドは剣帯を腰に巻き、馬に跨った。


「どっちにしても、もっと進んでみないと分からないね」

「あぁ、進もう」


 一行は再び海岸線を進み出した。

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