第102話 初めての観劇
エリューとリーサ・マルサの三人は、城下町にある歌劇場にやってきた。
ロビーには巨大なシャンデリアが輝き、赤い絨毯が階段の上へと続いている。
「……めちゃくちゃ綺麗〜!」
「えっここで劇やるわけじゃないよね? 玄関だよね? 歌劇場、すごっ!」
「入り口からこんな華やかなんて、ワクワクするね〜!」
三人はあちこち見回しながら階段を登る。
「足元にお気をつけください」
先導が席へと案内する。
2階の真ん中あたりに、渡り廊下のような通路があり、その中央に豪華な席がある。
「天覧席だって。わぁ特別席ね!」
「そうか、私皇妃だった」
「うっかり忘れないで姫さま」
「皇妃ってこういう時、ありがたいね」
「私たちもおこぼれに預かれて、ありがたい」
劇場は5階建ての巨大な造りだ。
天井には美しい神々と精霊の絵が描かれている。
壁や椅子には彫刻が施され、上等なビロードのカーテンが舞台にかかっている。
徐々に席が人で埋まり、壁際の貴族席では華やかなドレスが揺れる。
開始のベルが鳴り響いた。
ザワザワと賑やかだった会場が徐々に静まっていく。
——そして舞台が開幕した。
歌姫が心を閉ざした騎士に歌いかけ、その心を開いていく物語。
楽団が奏でる音楽が響き渡る。
役者達の歌声は心地よく劇場に反響する。
——すれ違いや別れを乗り越え、最後は二人の感動的な二重唱で幕を下ろした。
場内は鳴り止まない拍手が響く。
エリューも涙を流しながら夢中で拍手をしている。
「……凄い良かった! 舞台って凄いね!」
——その夜、食後の散歩でエリューはシェイドに語る。
「舞台って凄いの! まるでその人の人生を垣間見たような、凄い体験だった!」
ベンチから立ち上がり、動きながら話す。
「そこに美しい音楽がね、顔や身体にぶつかってくるの。本当に音が当たってくるんだよ! 風魔法じゃないのに凄いね!」
「それでね、歌声が響いて、ギュウゥって心に入り込んでくるの……!」
エリューは胸を抑えて肩を丸める。
「始めは歌が好きな歌姫が出てきて——」
「悲しみで心を閉ざした騎士様がこう言うの」
「最後は二人で手を取り合ってね」
エリューは役者さながらに各シーンを再現しながら説明し、最後の歌を歌う。
長年の訓練で磨き上げられた歌声が庭園に響く——
「……で、幕を閉じたの。分かる!? この感動!」
「あぁ。まるで舞台を観せてもらったようだ」
「シェイドとも、行きたい! 今日のお話でもいいし、他の演目も気になる!」
「何を上演しているか、調べておく」
——翌日、執務室にて。
「昨日の観劇に、相当影響を受けていた。離縁して役者になると言い出しそうな勢いだ。その時は……アーカー、何とかしてくれ」
シェイドは苦笑いしながらアーカーに話した。
「ははは、かしこまりました。その時は、離縁せず皇妃のまま出演できる舞台を用意しましょうか!」
「頼んだ」
そう言うと、シェイドは上演中の演目のチラシを机に並べて眺めた。




