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【第一部完結】処刑された最強呪術師、魔法世界で異端となる 〜鬼使いと閃光の剣士〜(第二部連載中)   作者: 鬼喜怪快
5章 百花繚乱戦編(最終章)

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88話 祝杯のために



 ベルゼの剣では、エースは倒せなかった。


 硬質化した身体に剣撃は決定打にならず、

 サラの渾身の水鉄砲によって、

 ようやくエースの腕を吹き飛ばすことができたほどだ。


 だが、エースには再生能力がある。

 失われた腕は再生し、それ以降は致命傷どころか、

 有効なダメージすら与えられなくなっていた。



 ――しかし。


 

 その再生した腕を再び切り落とし、胸元を深く切り裂いた一撃があった。



 アイナの魔戦斧。


 

 魔力を蓄積し、解放と同時に威力を何倍にも高める小斧。

 それは、Sランク昇進時にシルドから贈られた武器だった。



 「アイナ! まだ動いてはいけない!」


 「そうですよ! 傷は塞ぎきっていません。無理すれば死んでしまいます!」


 

 蒼白な顔のアイナを、ミラとフィートが制止する。

 ふたりの回復によって、彼女は起き上がれるまでには回復していた。


 しかし――

 戦える状態ではない。


 本人も、それは理解しているはずだった。


 それでも。


 倒れているわけにはいかなかった。



 なぜなら――


 シルドを殺した――

 その男が、目の前にいるからだ。


 アイナが腕を引くと、魔力で繋がれた斧が回転しながら手元に戻る。

 間髪入れず、彼女はエースへと跳びかかった。


 「アイナ! 戻れ!」


 駆け寄ろうとしたフィートは、地に倒れたベルゼとサラの姿に気づいた。


 「ベルゼ! サラ! ……これはまずいぞ。

 ミラ! こっちへ急いで!」


 「はい!」


 フィートはサラの回復へ。

 ミラはベルゼのもとへ駆け寄り、容態を確認した。


 

 「ベルゼさん……首が……」


 「折れてるのか!?」


 「いえ……

 折れていたけれど……回復術で治された痕が……見えます」


 「……なんだって」


 「呼吸は確保されています。意識を失っているだけです」


 

 そのやり取りを、サラは朦朧とした意識の中で聞いていた。

 アイナの到着と、ベルゼの無事を知り――

 彼女は、かすかに口元を緩めた。

 


 「しっかりしろサラ! 君がベルゼを救ってくれたんだな!」


  

 消えかける意識の中、サラは一言だけ呟いた。


 「ざまぁ……みろ……」


 「サラッ!」


 「……わたし……の……勝ち……だ」

  

 そのまま、彼女は瞳を閉じる。



 「死ぬな!」


 

 フィートは全力で回復術を発動させた。



 ――――――

 


 アイナとエースが正面から打ち合う。

 一歩も引かない、力と力の衝突。


 エースは疑問を抱いていた。

 ――この細い身体の、どこにこれほどの力があるのか?


 斧から溢れる魔力を見て、さらに思う。

 ――これほどの魔力量を、どこに隠していた?


 そして、気づく。

 

 ――この女は、半ば意識を失ったまま戦っている。

 それでも、怒りと執念の力だけで攻撃を繰り出している。


 「!」


 違う……。

 アイナを見て、エースはようやく理解した。

 これは怒りや執念の力などではない……。


 これは――呪い。

 恨みが形を持ったものだ。 

 

  

 激しい斧撃を繰り返すたび、アイナの背中から血が噴き出す。

 それでも手を止めれば、エースに再生の時間を与えてしまう。


 絶対に止まれない。


 だが――身体がもたない。



 「ミラ、ここを代わってくれるかい」


 「……で……でも……彼女はもう……」


 「諦めてはいけないよ。必ずサラは助ける。

 そして……エースを倒して、みんなで祝杯をあげよう」



 寡黙な魔法使いフィート。

 いつもベルゼの影に隠れ、前に出ることの少なかった男。


 だが――今は違う。

 彼は、もう“影”ではない。



 「……わかりました。

 サラさんはわたしに任せてください。フィート先輩」


 「頼んだよ」



 フィートは、戦場へと歩み出した。



 ――――――

 


 手招きされるまま、役小角は前へ進む。


 カルタと、100を超える降霊術の兵たちの前に立つ。

 その背にはすでに、前鬼と後鬼が顕現していた。


 

 「いろいろ聞きたいことがあるんですけど……」


 「何かな?」


 「どこまでが計画で、最終目標は何なのです?」


 「それ……今さら知る意味あるの?」


 「ただの興味です」


 カルタは、少しだけ面倒そうな表情を見せた。


 「だいたいのことはサラが言ってたでしょ。そのままよ」


 小角は静かに言葉を継ぐ。


 「呪術と黒魔術で新生命体を作り出し、

 それらを使い、ギルドに代わってこの世界の地位と権利を得る……」


 「そうそう。その通り」


 「あなたは、生まれ変わりの体験者を

 呪術を使ってきたことによる業を背負った者だと言いましたね」


 「そうだよ」

 

 「どうして、また繰り返すのです?」


 カルタは、少し考えるように指で頬を掻いた。


 「前世で果たせなかったことを、もう一度やり直したいとは思わないのかい?」


 「……えぇ、もちろん思いますよ」


 「志半ばで終わった人生を、やり直したい。それは普通のことだろう?」


 「……」


 「わたしはね、救いたかったんだよ。

 いつの世も、被害に遭うのは弱者だ。

 そんな世界を変えたかった」


 「……ご立派です」


 「でも叶わなかった。

 年取って普通に死んでしまった。

 気がつけば異世界にいたんだ。

 ――その異世界も同じような世界だった」


 「僕には、この世界……そこまで悪いようには見えませんが……」


 「ここにきて日が浅いだろう?

  この世界でも上層部は金と権力と自分のことばかりだ……

  君の目には、ポンズはどう見えた?」


 「仲間思いの立派な方だと思いましたが」


 「だろうね……

 でも……彼もやっぱり、金と権力と自己第一主義に染まった人間だった。

 世界の動きを予見して動いているように見せかけていたが……結局は己のためだ」


 「……そういえば……ポンズさんを見ませんね」


 「あぁ、もう殺したからね」


 「……随分と、やり方が強引にも思えますが」


 「世を変えるには力が必要さ。

 誰も口を出せないほどのね……」



 その瞬間、カルタの纏う空気が一変した。


 ――殺気。

 空気が、死を告げてくる。


 一歩でも踏み込めば、

 確実に殺されると理解できるほどの圧だった。



 どうやら彼女は、

 役小角を完全に敵と見なしているようだった。


 



 

 

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