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【第一部完結】処刑された最強呪術師、魔法世界で異端となる 〜鬼使いと閃光の剣士〜(第二部連載中)   作者: 鬼喜怪快
5章 百花繚乱戦編(最終章)

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87話 ワルキューレの生還




 エースは、サラを見下ろしていた。

 サラはその視線を、力なく見返している。



 「命乞いするなら、考えてやってもいいぞ」


 しばらく沈黙が落ちた。


 「……まいったね、これは……」



 サラの声には、さっきまでの勢いがなかった。

 呪力を使い切ったのだろう。

 呼吸が浅く、肩が小刻みに揺れている。



 「どうする、サラ?」


 答えない。


 「黙ってるってことは――死にたいってことか?」


 サラの顔から血の気が引いた。

 唇が震え、視線が彷徨う。



 「……謝るよ。だから……殺さないで。

 悪かった……全部……許して……」


 

 その声には、さっきまでの殺気が一切なかった。

 完全に折れた人間の声だった。



 エースは鼻で笑った。


 ――ドカッ!


 タイタンの拳が、容赦なく叩き込まれる。

 サラの身体が地面を削り、転がった。


 「ゲホッ……ゲホッ……!」


 「負けそうになれば命乞いか……情けねぇ女だ」


 サラは震える足で、無理やり立ち上がる。


 「だから……ごめんって……」


 「水の膜を張って、ダメージを抑えてるじゃねぇか」


 ――ドゴッ! バキッ!


 再び拳が叩き込まれ、身体が宙を舞う。

 地面に叩きつけられ、血を吐いた。


 「防御しておいて、ごめんってなんだ、それぇ!」


 サラは膝をつき、手をついたまま、呟く。


 「……悪かったって……許してよ……」


 その姿に、エースは違和感を覚えた。


 

 ――違う。

 サラは、こんな女じゃない。


 

 命乞いをするくらいなら、逃げに徹する。

 それが、この女の生き方だったはずだ。



 「……何を企んでやがる」


 

 視線を逸らした、その瞬間。

 水の膜に包まれるベルゼ。


 ――回復術。


 「!」


 エースが視線を戻した刹那、



 ドウンッ!


 

 水鉄砲が直撃し、身体が吹き飛んだ。


 

 「やっぱり時間稼ぎか! 阿婆擦れ!」


 「ちっ……慣れないことはするんじゃないや」


 

 サラは、ベルゼへ回復を続けながら、

 水を操り、周囲の水でエースを包んで圧縮する。


 だが――


 「舐めるな!」


 タイタンの力で水を弾き飛ばし、

 再生した右腕で殴りつけた。


 「死ねぇ!」


 拳が何度も叩き込まれる。

 それでもサラは、回復を止めなかった。



 ――あの時。


 

 フィートが、逃げずに自分を回復し続けていた姿を見て、

 正直、心底バカだと思っていた。



 でも――



 今ここで逃げたら――

 すべてにおいて、エースに負ける気がした。

 何もかも、エースの思い通りな気がした。

 


 「ベルゼを……助けてやって」


 

 フィートのその言葉が、何度も脳内で反響する。


 この約束だけでも守れたなら――

 自分の勝ちだ!


 と思った。



 ――ドゴッ!


 

 サラの身体が高く舞い上がる。

 さらに跳躍したエースが、タイタンの拳で叩き落とした。


 

 ――バーンッ!


 

 地面が割れ、血が飛び散る。

 全身が叩きつけられて、骨が砕けた感覚。


 しかし、彼女は手を止めなかった。


 エースはしばらく無言で見下ろし、

 エースは呟いた。


 「……きっしょ」


 降下しながら吐き捨てる。


 「なに、この女……一途系?」


 拳を握りしめた。


 「まぁ……いい。これで終わりだ」


 

 そう言い放ったエースに――

 突如、光を帯びた高速回転体が襲い、

 そのまま彼の腕を切断した。



 「――痛っ!」


  

 その高速回転体はそのまま折り返し、

 胸元を深く抉る。


 サラは倒れながら、朦朧とする意識の中でそれを見ていた。



 「……?」


 

 足音。

 誰かが、すぐそばに立っている。


 白い鎧。

 見覚えのある輪郭。


 彼女は――アイナだった。

 


 ――――――

 


 ペアルトは、空を見ていた。



 四肢はすでに千切られ、

 新生命体がそれを貪っている。


 腹も貪り食われている。

 しかし痛みも、恐怖もない。


 ただ――

 早く食べ終わればいいのに……そう思っていた。



 気がつけば、ペアルトの眼前に

 カルタが立っていた。


 何かを話している。だが、もう声は聞こえない。

 それでも、言葉だけが心の奥に直接響いてくる。



 「力を持つ者は、どうしてか道を誤る。

 わたしは、国を作るのに君たちの力が必要だと思っていた」


 「……」


 「でも、誰もが私利私欲に走る。

 操られていることも忘れて、自分の意思で動いてるのだと勘違いしていく」



 記憶が、雪崩のように戻ってくる。

 

 同じ、生まれ変わりの体験者だと知り、近づいてきた女がいた。

 彼女は自分の国を作りたいと言っていた。

 だから力を貸してほしいと頼んできた。

 

 

 ――あの時の俺は、なんて答えた?



 「誰の指示にも従わない。

 俺はやりたいように生きる」


 

 ――たしか、そう言った。

 でも、それ以降の記憶がない。


 

 「そりゃそうさ。

 あの日から君には別の魂を入れて動かせていたからね……

 でも、君はジワジワと自我を取り戻し始めてしまってね――

 いつ始末しようかと悩んでいたんだよ」

 

 「……うそ……だ」


 「作り物のわたしとはいえ、牙を向いて殺してくれた――

 だから、今日始末することに決めたんだよ」


 

 ペアルトの左半分の頭部が、噛み砕かれた。

 あまりにあっけない終わりだった。


 カルタは、食されていくペアルトを見下ろした。



 「残念だよ。

 右腕として、使いたかったのに」


 そして、視線を動かさずに言った。



 「そんなところで見ていないで――

 こっちに来たらどうだい?」



 声を掛けた、その先に立っている者とは――


 

 ――役小角。


 

 カルタは、初めてカイドウ村で出会ったあの日のように、

 ロッキへ手招きをしてみせた。





 

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