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【第一部完結】処刑された最強呪術師、魔法世界で異端となる 〜鬼使いと閃光の剣士〜(第二部連載中)   作者: 鬼喜怪快
5章 百花繚乱戦編(最終章)

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84話 馬鹿な親友




 ギルド協会本部・中庭



 そこは、すでに焦土と化していた。

 崩れ落ちた建物、焼き尽くされた植木。

 かつての面影は、どこにも残っていない。


 その中心に――

 ひとりの男が立ち尽くしていた。


 ――ペアルト。


 纏っていた鎧は焼き剥がれ、全身は深刻な損傷を負っている。

 激しく息を切らし、本来なら流れ出るはずの血も、

 焼け焦げた皮膚に、無理やり止められていた。



 「はぁ……はぁ……はぁ……」


 「――」


 「……ふふっ」


 ペアルトは、かすかに笑った。


 「俺は……ジーラブールとは、違っただろ?」


 

 その視線の先には、上半身を失ったカルタの下半身だけが横たわっていた。

 

 閉じていた目を開き、

 ジーラブールを瞬殺した力を解放したが、

 何もできずに、命を絶たれた。



 カルタの命を奪ったのはペアルトの切り札。

 それは、彼女自身が最後まで警戒していた――

 【魔眼の力】だった。



 「ジーラブールから聞いておいて正解だったよ」


 ペアルトは、ぽつりと呟いた。


 「……目を見開いた瞬間が危険だと言っていた。

 なら、その瞬間に殺せばいい――

 こんなにもうまくいくとは思わなかったが……」


 自嘲気味に笑い、

 魔眼で戦況を確認する。


 西地区から侵攻させた新生命体、2体――撃破。

 東地区から侵攻したジーラブール、――撃破……?



 「……ジーラブールが、やられた?」


 

 一瞬、思考が止まる。



 「エースは……何をしている?」


 

 魔眼に映ったのは、

 エースとサラが激突する光景だった。



 「……なぜ、サラがいる」


 

 計画が崩れている。

 それだけを、理解するには十分だった。


 さらに、2つの影がこちらへ向かっている。



 ――フランとロッキ。


 

 今、この2人が揃うのは厄介だ。


 ペアルトは、結果に固執する男ではない。


 計画と現実のズレ。

 戦況の乱れ。


 冷静に分析し、結論を出す。


 ――撤退。


 目的は果たせない。

 そう判断し、ペアルトは踵を返した。


 

 ――――――

 


 「おい! あんた、行く場所あるんだろ!」


 「……あぁ」


 「なら、とっとと行きなよ!」



 フィートは言い知れぬ不安を胸に抱えながら、

 アイナの元へ向かおうとしていた――その時だ。


 

 「うあぁー!」



 サラの叫び声に、反射的に振り返る。


 射抜かれ、落とされたエースの手――否、

 タイタンの巨大な手が動き、サラの身体を掴んでいた。


 モンスター屈指の怪力。

 その手で握り潰されれば、並の人間などひとたまりもない。


 「ギャァ!」


 サラの口から血が溢れた。


 

 ――ボキッ。


 

 鈍い音。

 骨が折れる音だ。


 エースの低い笑い声が響く。


 「調子に乗るなよ、阿婆擦れ……」



 ――ボキッ。


 

 再び、鈍い音。

 溜めていた水鉄砲は霧散し、サラは膝から崩れ落ちた。


 呪力の制御ができていない。

 力を防御に回す余裕すらない。


 このままでは――死ぬ。


 

 「殺してやる!」


 

 怒号と共に、タイタンの手にさらに力が込められる。


 

 ――ズドンッ!


 

 激しい爆発。

 サラを掴むタイタンの腕が吹き飛ばされた。


 解放されたサラは、地面に手をつき、嘔吐する。



 『魔力界砲』



 救ったのは、フィートの術だった。


 フィートはサラに駆け寄り、即座に回復術を施す。


 骨折多数。

 無理に動けば、内臓を傷つける。


 

 「あんた……なんで……?」


 「黙って横になって! 死んでしまうぞ!」


 「……バカ……集中攻撃……受けて死ぬよ……」


 サラを横に寝かせ、その場で回復を続ける。


 ――だが。


 「とことん舐めてるな……お前ら……」


 

 背後から、エースの声。

 怒りは、すでに限界を超えていた。


 フィートは振り返らない。

 そして回復を止めない。



 「……逃げ……ろって」


 「俺は援護と補助が専門の魔法使いだ。

 死にかけの人を見捨てて逃げるなんて……

 そんな教育、受けてないんだよ」


 影が静かに伸びる。

 真後ろに、エースが立つ。

 

 「全世界トップクラスの馬鹿野郎が……」


 「……俺のことか?」


 背中越しに、言葉を交わす。


 「他に誰がいる?」


 「探せばいるんじゃないかな……」


 「いねーよ。死に急ぐバカは、お前くらいだ」

 

 巨大化したタイタンの腕が振り上げられる。


 「バカは死ななきゃ治らない……だっ!」


 嘲笑と共に、拳が振り下ろされた――


 

 ――ドスッ。


 

 風を切る音が、遅れて届いた。 


 気がつくと、エースの左脇腹から右肩へ、

 斜めに大剣が突き刺さっている。



 「……なっ!?」


 

 動きが止まる。

 フィートの視線が、その剣の主を捉える。



 ――ベルゼ。



 「バカだけどな……親友なんだ。

 死なれちゃ、困るんだよ」



 親友のピンチに、大剣を持つ男が駆けつけた。

 


 

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