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【第一部完結】処刑された最強呪術師、魔法世界で異端となる 〜鬼使いと閃光の剣士〜(第二部連載中)   作者: 鬼喜怪快
5章 百花繚乱戦編(最終章)

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82話 彼女がその眼を開く時




 血だまりの中に倒れている瀕死のアイナを救おうと、

 カルタは己の回復を止め、光の手を彼女へ向けた。


 このままでは、間違いなくアイナは死ぬ。

 カルタは迷わず、彼女の命を選んだ。

 

 懐から2体の藁人形を取り出し、印を切る。

 藁人形は槍を持つ憲兵の姿へと変わり、ペアルトへ向かって走り出した。


 

 「嘘でしょ、カルタさん?

 こんな人形が最後の切り札なの?

 回復の時間稼ぎにもならないよ」


 「……」


 憲兵たちは槍を振るい、ペアルトへ襲いかかる。

 だが、その攻撃はかすりもせず、魔槍の一撃で容易く粉砕された。


 ペアルトは、打つ手を失ったカルタを眺めながら槍を構える。


 

 「あなたが死ねば、アイナさんも死ぬ。

 今から心臓一突きで終わらせるね」


 「……そう簡単に、いくかな?」


 「!」



 ペアルトの頭上に光の手が現れ、叩き潰すように振り下ろされた。

 間一髪で気づき、彼はそれを躱す。


 続いて、もう一方の光の手が掴みかかるが、槍ではじき返された。


 カルタは光の手を操り、印を切る。


 『封印の式』


 発動と同時に、ペアルトは光の円陣の内へと閉じ込められた。



 「おぉ、悪あがきかと思っていたら封印されちゃったよ。

 でもさ、俺も生まれ変わりの体験者だ。

 こんな汎用結界、数秒で解けるよ」


 「……」


 「回復を止めてまで、やることだったかな?」


 「……間に合った」


 「はぁ?」



 ペアルトが視線を向けると、そこにはミラがいた。

 彼女はすでに、アイナへ治癒魔法をかけていた。


 藁人形と光の手の攻撃は、ミラ到着までの時間稼ぎ。

 ペアルトは、そう理解した。



 「なんか腹立つよね。欺かれるってさぁ」


 「腹立つのはお前だ、ボケェ!」


 その声と同時に、ベルゼの大剣がペアルトの腹を横一線に叩き切った。



 「ぶはぁっ!」


 

 槍の柄で受け止めたものの、腹部に深い傷を負った。

 ペアルトは吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。


 「ミラ、アイナの具合は?」


 「かなり危険です!

 治癒は続けていますが、わたし1人では回復が追いつきません!」


 「フィートもじきに来る! それまで粘ってくれ!」


 「カルタさんも重傷です!」


 地面に膝をつき、ペアルトは回復の式をかけながらベルゼたちを見ていた。

 油断していたことを、彼は内心悔やんでいる。


 カルタがベルゼに声をかけた。



 「アイナを連れて、逃げなさい!」


 「……?」


 「急いで!」


 「何言ってんだよ!

 カルタさんも死にそうじゃねーか!」


 「食い止めるから。

 ロッキと合流しなさい」


 やり取りの最中、ペアルトが立ち上がる。

 先ほどまでの笑顔は消え、全身から本気の殺意を放っていた。


 「行かせるわけ、ねーだろ!」


 「ベルゼ……これは命令よ」


 「……聞けるかよ、そんな命令!」


 「わたしが、何とかするから」


 「……」


 「信じて……」

 

 ベルゼは歯を食いしばり、踵を返した。

 アイナを担ぎ上げ、悔しそうな顔でカルタを見る。


 「それでいい……」


 「すぐ戻ります!

 絶対、死なないでください!」


 本意ではないが、カルタの命令により3人はその場を離れた。


 ペアルトは追撃せず、静観していた。

 ベルゼの不意打ちは想像以上のダメージだったようで、

 彼自身も回復に時間を要していた。



 「互いに回復じゃ、埒が明かないねぇ……

 仕方がない……

 2人きりだし、そろそろ本気を出そうかな」


 「……ようやくかよ。

 ジーラブールを瞬殺した力、いつ出すのかと思っていたよ」


 「あんまり使いたくないんだよ。

 ロッキに偉そうに注意した手前、説得力がなくなるからさ」


 「?」



 ゆっくりと、カルタが閉じていた目が開く。

 透き通るような青い瞳。

 致命傷を負った身体へ、呪力でも魔力でも妖力でもない力が流れ込んでいく。



 「おいおい……マジか……。

 ジーラブールは瞬殺されたから、何をされたか覚えてないって言ってたけど……

 こりゃ……」


 カルタの背後にゆらめくオーラ――

 そのオーラはまるで、神と妖が溶け合ったかのように形に変えた。


 ――神々しさすら感じさせる輝き。



 「君を、ここで始末する」


 「……まさか……これって」



 本来なら、決して使いたくなかった力。

 だが、この状況では切り札を解放するほかなかった。


 

 ――――――



 フランは早馬に乗ってギルド協会本部に向かっていた。

 感知術を持たない彼女だが、嫌な予感がひしひしと迫っていた。


 

 「……急がないと」



 戦力の分散。

 フランもそれを理解していた。

 敵はしっかりと下準備を整えた上で攻めに来ている。

 カルタの話が事実なら、2年近く前から何かしらの準備をしていたことになる。

 

 それに対し、こちらは相手のことを最近になって認識した程度だ。

 すべてが相手優位に事が進んでいる。



 「みんな……どうか無事で……」 



 フランは協会本部へ急いだ。



 ――――――


 

 小角は後鬼の袖を掴んだ。

 疾風の瞬き《はやてのまたたき》を使い、一瞬で協会へ戻るつもりだ。

 避難させていた町の人たちの誘導は冒険者たちに任せることにした。


 

 「どんな様子かわかる?」


 「カルタ様が……本気を出されています」


 「本気?」


 「お会いした時からわたしと前鬼に気後れしない方でした、

 何かしら切り札をお持ちだと思っていましたが――やはり、お持ちでしたね」


 「なら、問題ないってことだね」


 「――しかし妙ですね……」


 「?」


 

 後鬼が表情を強張らせて黙った。

 そしてギルド協会本部の方をゆっくりと見つめる。



 「これは、予想外でした……」


 「どうしたの?」



 小角の質問に彼女は答えた。


 

 「……すぐに戻りましょう。

 ……カルタ様が

 ――殺されました」

 




 

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