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【第一部完結】処刑された最強呪術師、魔法世界で異端となる 〜鬼使いと閃光の剣士〜(第二部連載中)   作者: 鬼喜怪快
5章 百花繚乱戦編(最終章)

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80話 英雄 対 閃光




 ジーラブールは、ベルゼに勝るとも劣らぬ、

 巨大で分厚い剣を背中から引き抜く。


 空気が変わる――

 

 それは武器というより、分厚い鉄の板のようだった。



 フランは、イルジョン島で対峙した漆黒の鎧騎士を思い出していた。

 鎧の色も、醸し出す雰囲気も、どこか似ている。


 違いといえば、あの騎士が長剣を使っていたのに対し、

 目の前の剣士が手にするそれは、剣とは呼びがたい代物だった。



 ――触れただけでも、身体ごと砕かれる。


 

 ジーラブールが飛び込んできた。

 重厚な鎧と鉄板のような大剣を装備しながら、その動きは俊敏だ。


 だが、避けられない速さではない。


 振り下ろされた大剣が大地をえぐり、深く食い込んだ。

 引き抜いて向きを変えるには、わずかな時間が必要だった。


 ――その隙を、フランは逃さない。


 閃光のように踏み込み、右腕を狙って高速の抜刀を放つ。



 「はあぁっ!」


 

 だが次の瞬間。

 大剣は地面に刺さったことなど意にも介さぬ勢いで、土石を巻き上げながら振り上げられた。


 フランの突進と同時に、信じ難い速度のカウンター斬撃。

 掠っただけでも骨が砕け、身体ごと吹き飛ばされる一撃だ。


 フランは、抜刀の軌道を瞬時に切り替えた。

 腕ではなく、下方から迫る鉄板そのものを斬る。


 ――カンッ!


 鈍い金属音が響き、フランの身体が宙を舞った。

 空中で体勢を立て直し、着地――


 その瞬間、再びジーラブールが迫る。


 上段からの振り下ろし。

 フランは刀を抜き、攻撃を地面へ逃がすように受け流した。


 大剣の刃が再び地面に突き刺さる。

 その刃の上に乗り、フランは一気に間合いを詰めた。


 喉元への突き。


 ――勝負は、決まった。


 ……かに見えた――



 「言っただろ。俺はもう人間じゃない。死ねないんだ」


 「……モンスターにでもなった、ということでしょうか?」


 「違う、自業自得ってやつだ。

 黒魔術のせいで、死ねなくなったんだよ」


 フランは刀を引き抜き、後方へ距離を取る。

 喉に空いた穴は、すでに塞がれ始めていた。



 「見事な剣技だ」


 「どうも」


 「だが……変わった武器だ。見たことがない」


 「そんな大剣を使う人に言われても……って気もしますが、

 これは剣ではなく刀と呼びます」


 「……かたな?」


 ジーラブールの身体が小刻みに震え始めた。

 全身から黒い霧が溢れ、口角が引き裂かれるように広がる。


 額から角が生え、全身が鉛色に染まる。

 白目を剥き、カルタと戦った時と同じように、

 悪魔の力を全身に纏った。


 黒い疾風が、不規則な軌道で迫る。

 フランも閃光となって応戦し、刃と刃の衝突だけが火花となって弾けた。


 ――ついて来ている。


 ジーラブールの本気に、フランは難なく応じていた。



 「……どうしてだ?」


 「……」


 「どうして俺と対等でいられる……」

 


 ジーラブールは呟く。


 力を求め、黒魔術を使い続けてきた。

 カルタに勝つため、

 子供たちの命を代償に悪魔と契約した。


 この剣も――魔界の金属で造られた契約の産物。


 それと互角に渡り合うフランが、理解できなかった。


 未成熟な身体。

 細い腰と手足。

 それでも、攻撃を受け止め、斬り返してくる。


 なにより、この、かたな。

 

 薄い片刃の武器が、魔鉄の大剣と打ち合い、

 欠けることすらない。


 逆に――

 その刃は、鉛のように硬化した身体を、確実に削り始めていた。


 大剣にも、刃こぼれが走る。


 「……何だ、その武器は」


 「絶対に折れない刀。小鴉丸」


 「……こがらすまる」




 小鴉丸――


 フランは、後鬼――紅葉の言葉を思い出していた。

 

 小鴉丸は、絶対に折れない刀です。

 相手側が有利になる防御結界、強化術などがあっても、

 根こそぎ削って攻撃してくれます。


 それと……多少の鬼気を付与してくれるでしょう……

 

 あなたにぴったりな武器だと思いますよ。




 その意味が、今になって理解できた。


 「つまり……わたしに力を貸してくれてる――ってことよね?」


 ジーラブールの身体に、亀裂が走る。

 魔鉄の大剣は、無数の刃こぼれを刻んでいた。



 ――バキンッ!


 

 大剣が、折れた。


 フランは後方へ跳び、抜刀の構えを取る。


 ひび割れた身体と折れた剣の回復よりも早い攻撃――



 「小鴉丸――

 力を貸してくれてありがとう」



 すべてを捨て、強さを求め、カルタに勝つために魂を売った男。


 その身体に走る亀裂と、

 折れた剣が――

 これまでのすべてを物語っていた。 



 「俺は……英雄なんだ……」


 

 フランは、答えなかった。



 「――終わりです」



 ――閃光の瞬き。


 

 ジーラブールは、

 自分の首が宙に舞っていることに気付かなかった。


 前へ走り出した彼は、

 進んでいく自分の背中を眺めていた。



 そして頭が地面に落ちて、

 ようやく理解したのだ。



 ――終わったのだと。





 

いつも読んでいただき、ありがとうございます。


ジーラブール戦、決着です。

彼の選択と結末、そしてフランの一太刀――

しかし戦いは、まだ終わりではありません。


この先、フランにはもう一戦――

ここからが本番です。


もし「続きが気になる」と感じていただけたら、

フォローやブックマーク、★での応援をいただけると嬉しいです。

ひとつひとつが、とても大きな励みになっています。


次回も引き続き動きますので、ぜひお付き合いください。

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