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【第一部完結】処刑された最強呪術師、魔法世界で異端となる 〜鬼使いと閃光の剣士〜(第二部連載中)   作者: 鬼喜怪快
5章 百花繚乱戦編(最終章)

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76話 安息の時間の終わり



 

 カルタが目を開けた、その瞬間――

 ジーラブールは死んでいた。

 叫び声をあげることもなく、

 いや――あげることすらできず、死んでいた。


 ほどなくして、待機していた冒険者たちが駆け寄ってきた。



 「カルタさん!」


 「ごめんね。

 生け捕りにするには、強すぎる相手だったよ」


 「……何者だったんです?」


 「さあ、会話する余裕などなかった」



 本部の判断により、ジーラブールの誘拐事件と黒魔術使用の件は、

 最上層部のみが知る極秘事項となった。

 絶対に失敗できない戦いだったため、

 待機していた冒険者たちは万が一に備えた存在に過ぎなかった。



 「この死体は、本部までわたしが運ぶよ……」


 「……よろしいのですか? それくらいせめて我々が……」



 ――あの日、この手で確かに死体は回収した。



 ――――――


  

 死の瞬間に誰かと入れ替わることなど不可能だった。

 幻術や変わり身の痕跡もなく、

 最上層の極秘鑑定でも、

 死体はジーラブール本人のものと確定されている。


 それにもかかわらず――

 翌日。

 安置所から死体は消えた。


 痕跡は一切なく、2年間、完全に行方知れずだった。

 今、その名が再び浮上したことに協会本部は動揺を隠せないでいる。



 「世論の混乱を避けるため、誘拐事件は解決済みとして発表した。

 しかしジーラブールの名は伏せられた。

 仮に情報が漏れたとしても処刑済みだ。

 世界の動揺は最小限に抑えられると判断した」



 「……外部にジーラブールの仲間は?」



 役小角の問いに、ポンズは静かに首を振る。


 背後にいたブローカーは殲滅。

 その後も警戒を続けたが、彼に繋がる動きは一切なかった。


 

 「あの日わたしが始末したのは、黒魔術で契約していた悪魔だった。

 ――彼自身の魂は、死んでいなかったのではないか」


 「!」


 「――なんて最悪の場合を、わたしは考えていたけどね」


 カルタが淡々と補足する。


 結論は出ない。

 だが――

 ひとつだけ確かなことがあった。

 

 ジーラブールが、何らかの形で再び関与しているということだ。


 話の終盤、小角はカルタに最後の質問を投げた。



 「……もう一度戦えば、勝てますか?」


 「あの日のままの彼ならね」



 カルタは続けなかったが、内心では理解していた。

 生きているなら、確実に力を増している。

 2年という時間は、準備期間として十分すぎる。



 「再びシーアが狙われる可能性があります。備えるべきです」



 小角の言葉に、ポンズは重く頷いた。



 この日、本部付き冒険者へ緊急招集がかけられた。



 そして――

 2年前のジーラブールに関する情報が正式に共有された。


 

 ――――――

 


 冒険者たちの反応は大きかった。


 英雄の本性と死を、

 すぐに受け入れられる者は少なかった。


 世界各地への公表を求める声も上がったが、

 首脳陣は首を縦に振らなかった。


 伝えられたのはただ1つ――次なる襲撃への警戒。


 カルタ、フラン、小角を中心とした対策班が組まれ、

 ミラとフィートを中心に、

 数名の冒険者の感知術でシーア全域を監視する体制が敷かれた。


 サラの監視は、アイナとベルゼが担当。

 3重の結界が張られた部屋で、軟禁状態が続いている。



 翌日から冒険者による町の巡回は激増し、

 その緊張感から、町は急速に静まり返った。


 店は閉まり、人々は外出を控えた――



 それから1週間が過ぎても、

 大きな動きは見られなかった。

 

 それでもサラへの聞き取りは、連日続けられていた。



 ――――――



 ギルド協会本部・地下室


 今日もこの部屋で、ベルゼはサラを監視していた。

 


 「……もう7日よ。さすがに聞くこともないでしょう」


 「ああ、ないな」


 「なら死刑にすればいい。どうせ外に出ても殺されるだけだし」


 

 彼女は、すでに生きることを諦めている。


 ――前の人生では、夫とその愛人に毒を盛られて殺された。

 その恨みから2人を呪い殺したが、

 生まれ変わりに巻き込まれる。


 そして気が付いてみれば、

 今度は名もない奴隷の子として目覚めたのだ。


 

 「……」


 「ここでの1週間が、一番幸せだったよ。

 寝る場所があって、3食あって――

 殺される心配もない」


 サラは笑った。


 「もう、戻りたくない」


 「俺に同情を誘っているのか?」


 「違う……死刑にしてくれって言ってるの」


 「……」


 サラは、出された紅茶を一口含んだ。

 香りの良さに目を細める。


 「菓子もある。

 それ食って、思い出したことがあればなんでも話せ」



 その日も、シーアは穏やかだった。


 


 ――8日目の朝。


 穏やかな日常を打ち消すかのように、

 小角の鬼門遁甲盤が――凶兆を示した。




  

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。


本章はこの76話を含めて残り20話、全95話で完結予定です。

ここから、すべての因縁が収束していきます。


――物語は終盤へ。


ぜひ最後までお付き合いいただけると嬉しいです。


ブクマや評価がとても励みになっています。

引き続き、よろしくお願いします。


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