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【第一部完結】処刑された最強呪術師、魔法世界で異端となる 〜鬼使いと閃光の剣士〜(第二部連載中)   作者: 鬼喜怪快
5章 百花繚乱戦編(最終章)

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74話 処刑されたSランク



 

 重い沈黙の中で、

 ポンズが口を開いた。



 「――ジーラブールは、黒魔術を使用していた」



 その一言で、会議室の空気が凍りついた。


 「……はぁ?」


 最初に声を上げたのはベルゼだった。


 「そ、そんな話……聞いたことねぇぞ!」


 「当然だ」


 ポンズは即座に切り捨てる。


 「極秘案件だった。

 それに――ジーラブールの処刑にあたったのは……」


 言葉を切り、視線を向ける先。


 ――カルタ


 彼女は否定もせず、ただ静かに目を閉じている。

 その様子が、逆に異様だった。


 「……彼は」


 カルタが淡々と告げる。


 「わたしが殺した――はずだった」


 息を呑む音が重なった。


 「な……っ」


 ベルゼの声が震える。


 最強の剣士。

 ギルドの象徴。

 英雄の名。


 それを殺したと、カルタは言った。



 「ポンズの命令だった……いや世界の裁きだ」



 カルタは事実だけを並べる。


 「黒魔術の使用と研究の噂。

 調査役に指名されたのが、わたしだった」


 彼女は外を眺める。


 「千里眼で、1か月。

 生活、交友、金の流れ……全部、覗かせてもらったんだ」


 ベルゼの喉が鳴る。


 「……ジーラブールは、本当に黒魔術を使っていたってのか?」


 カルタの声に、感情はない。


 「ブローカーを介して、孤児や家無き子を集めていた。

 生贄として、ね」


 「……っ」


 フランが目を伏せる。


 「報告を受け、私が討伐を命じた」


 ポンズが、静かに言葉を継ぐ。


 「待機させていた他のSランクにも、詳細は伏せていた。

 ……そして結果的に、カルタ1人で片が付いた」


 「……殺したと、確信していたよ」


 カルタが言った。


 「顔は焼いた。

 回収班にも正体が分からないようにね」


 その声音は、あまりにも冷静だった。


 「死体は、本部の地下で保管された。

 ――翌日までは、確かに存在していた」


 カルタの一言一言に全員が耳を傾ける。

 

 「……だが」


 一瞬の沈黙のあと、


 「消えたんだ」

 

 そしてポンズが続ける。


 「探索は全力で行った。

 協会の全勢力を投入したが、痕跡すら残っていなかった」


 沈黙が落ちる――


 「英雄が黒魔術使いだったこと。

 死刑にしたはずの死体が消失したこと」


 ポンズは苦く笑った。


 「……世界に公表できるはずがないだろ」



 ベルゼは、立ち尽くしたままだった。

 言葉を失っている。


 一方、小角は冷静だった。



 「その件は、イルジョン島の事件より前ですか?」


 「後だ」


 ポンズは即答する。


 「島の件があった直後だった――

 重ねて発表など、できる状況ではなかった」


 小角は、間を置かずに続けた。


 「死体が消えた理由は?

 ……内部犯行の可能性は?」


 「調査したが……」


 ポンズは首を振った。


 「以降、本部内での行方不明者はゼロ、

 内部に仲間がいたとは考えられなかった」


 「つまり――」


 小角が結論を口にする。


 「生きて逃げた可能性が高い」


 「……そう考えている」


 小角は頷き、今度はカルタを見る。


 「彼は、生まれ変わりの体験者でしたか?」


 「いいえ……」


 カルタは即答した。


 「生粋の、この世界の人間だよ」


 小角は少し考えたあと、聞いた。


 「……強かったですか?」


 ほんの一瞬。

 カルタの口元が、わずかに歪んだ。


 「強かった。

 黒魔術使いだったからね」


 小角は、静かに頭を下げた。


 「――戦った時の話を、聞かせてください」


 「……」


 カルタは、遠い目をした。


 「2年近く前の話だ。

 箝口令も敷かれていた」


 そして、ぽつりと呟く。


 「……でも、もういいだろう」



 ――――――



 カルタは静かに語り始めた――


 あの頃、

 シーア周辺では、孤児や家無き子の失踪が相次いでいた。


 冒険者による捜索も成果はなく、数だけが増えていく。

 ポンズから再三の依頼はあったものの、

 カルタは動く気がなかった。

 

 やがて、カイドウ村周辺にも被害が及び始めていた。


 「……近いね」


 カルタが動いた理由は、それだけだった。


 彼女は近隣の町に、式神を配置した。

 人、鳥、虫へと姿を変えさせ、監視網を敷く。


 犯行は、すぐに起きた。


 その尾行の果てに辿り着いた先――

 それが、ジーラブールの屋敷だった。


 千里眼で確認した地下には、黒魔術の祭壇。


 彼女は2週間、監視を続けた。


 そして――

 生贄として子供を捧げる瞬間を、確かに視た。



 「……十分だ」


 

 カルタは、単独で動いた。


 虫型の式神を人型に変え、子供を解放。

 ポンズへ伝書鳩を飛ばし、同時に屋敷へ踏み込んだ。


 地下への階段。

 すれ違う解放された3人の少女。


 そして――


 ろうそくに照らされた祭壇の間。

 砕けた式神の残骸。

 祭壇に腰掛ける、男。



 「想定外だな」



 ジーラブールは笑った。



 「お前が来るとは思わなかった」


 「……いい男だと思ってたんだけどね」


 カルタは言った。


 「残念だよ、ジーラ」



 彼は大剣を肩に担ぎ、立ち上がる。

 黒い魔力が、部屋を満たした。


 「カルタ……悪いが、死んでもらう」


 そして、愉しげに言った。


 「――お前とは、1度手合わせしたかった」



 こうして。

 最強の剣士と、最強の呪術師の誰も知らない戦いが始まった。






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