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【第一部完結】処刑された最強呪術師、魔法世界で異端となる 〜鬼使いと閃光の剣士〜(第二部連載中)   作者: 鬼喜怪快
4章 混沌の新生命体編

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67話 泣かないひと



 

 翌日の正午、カルタは大都市シーアへ到着した。



 ギルド協会本部の前には、

 ポンズをはじめ、多くの冒険者と職員が待ち構えている。

 その視線を一身に受けながら、カルタは馬を進め、その姿を見せた。


 落ち着いた所作で馬を降り、手綱を職員に預ける。

 そしてまっすぐに、ポンズの前へと歩み寄った。



 「やぁ、ポンズ。久しいね」


 「……カルタ」


 ポンズは、苦い表情を隠さずに口を開いた。


 「すまなかった。私の判断ミスだ。

 もっと準備していれば、君の息子は――」


 「気にしなくていい」


 カルタは、静かに遮った。


 「私たちの仕事は、いつ死んでもおかしくない。

 シルドも、それくらいは分かっていたさ」


 「しかし……」


 「……シルドに会わせてくれるかい」



 それ以上、言葉は交わされなかった。

 ポンズは踵を返し、裏手の教会へとカルタを案内する。


 

 教会の扉が開く。

 中にはすでに、小角、フラン、ミラ、ベルゼ、アイナの姿があった。



 「おや。ロッキにミラも来ていたのかい」



 カルタは、先日と変わらぬ調子で声をかける。



 「カルタさん……この度は……」



 小角が一歩前に出て、深く頭を下げた。

 その横をすり抜け、ベルゼとアイナがカルタのもとへ駆け寄る。



 「カルタさん……!

 私が一緒にいながら、シルド先輩を失いました。

 本当に、申し訳ございません!」


 「兄として謝罪します。

 どうか、アイナを責めないでやっていただきたい」


 ふたりは膝をつき、深く頭を下げた。


 カルタは一瞬だけ目を伏せ、

 ふたりの頭へ手を伸ばした。


 「謝るんじゃないよ。

 あなたたちは、何も悪くない」


 そう言って、腰を落とし、ふたりを抱き寄せた。


 「先輩は……1人で戦って……私を守って……」

 

 アイナの声が震える。


 「大切な人を守れたんだ、

 シルドは、きっと満足して逝ったはずさ」

 

 カルタは、穏やかに言った。

 その言葉に、アイナは声を押し殺すこともできず、泣き崩れた。


 カルタは立ち上がり、祭壇へと歩み寄る。

 神父が棺の蓋を開けると、そこには五体揃ったシルドの姿があった。


 安らかな顔だった。



 「……身体、取り戻してくれたのかい」



 カルタは、後ろにいる小角たちを振り返る。



 「ありがとう。大変だったろう」



 そして、そっとシルドの頬に手を添えた。


 小角が、カルタの隣に立った。



 「敵の術者については……情報を得られなかったのだろ?」

 

 「はい。

 ですが、生まれ変わりの体験者である可能性は極めて高い。

 黒魔術というものを用い、人と妖とモンスターを融合させた存在を作っていました」


 「……愚かなことを考える者もいるものだね」


 カルタは棺から目を離し、ポンズに声をかける。


 「すまないが、ロッキ以外は席を外してくれるかい」



 ポンズが頷く。

 全員が教会を出ようとした、その時――


 カルタは、フラン、ミラ、ベルゼ、アイナを呼び止めた。

 そして、その場で姿勢を正し、深く頭を下げた。



 「千里眼で見ていたよ。

 君たちはシルドの身体を取り戻そうと懸命だった」


 「彼は、本当に良い仲間に恵まれた。

 親として、心から感謝する」


 ベルゼとアイナは涙を流し、

 フランとミラは黙って頭を下げ、教会を後にした。


 残ったのは、小角とカルタだけだった。



 「……大丈夫ですか、カルタさん」


 小角は、そっと問いかけた。


 「大丈夫なわけがないだろう」


 カルタは、辛そうに笑った。


 「息子を失うのは、これで2度目だ。

 慣れるものじゃないね」


 「……」


 「あの時……眠らせたままにしておけばよかった」

 

 カルタは、ぽつりと漏らす。


 「ここへ来るまで、ずっとそればかり考えていたよ」


 「それでも……彼は、あなたが母で幸せだったと思います」


 「……いいかい、これが呪術師の業なんだ」


 カルタは、静かに続けた。


 「人が持つべきでない力を使って生きた者は、

 その罰を、家族や近親者にまで背負わせる――

 生まれ変わりとは、前世の業を償うための仕組みなのさ」


 「……」


 「償う身でありながら再び呪術を使えば……

 こういう罰が待っている」


 カルタは、涙を流さなかった。

 それが、かえって痛々しかった。


 「どうして、私が先に死ねないんだろうね」


 「……」


 「家族を失ったあの日、

 死ぬほど泣いても、死ねなかった。

 この身体は、何事もなかったように生き続けている」


 小角は、言葉を選びながら答えた。


 「……あなたには、まだやるべきことがあるのでしょう」


 「違うさ」


 カルタは、ゆっくりと首を振った。


 「もっと恐ろしく、絶望する時が来る――

 その時まで、本当の死は待っているのさ」


 沈黙が落ちる。


 「シルドは、私とロッキを呼べと伝えたらしいね」


 「はい。呪術に関わる敵だと判断したのだと思います」


 「ならば、私が相手を殺す」


 カルタの声は、冷え切っていた。


 「ここからは、ただの人殺しだ。

 君は手を出すんじゃない」


 「……それでも」


 小角は、視線を逸らさず言った。


 「僕も業の塊です。何を今さら……」


 「……」


 「お手伝いさせてください」


 カルタは、しばらく黙り込み――

 そして、小さく息を吐いた。


 「……バカだね。

 何があっても、知らないよ」


 

 翌日。

 シルドの死は、世界へと公表された。



 そして最小限の仲間たちに見守られ、

 シルドの葬儀は、しめやかに執り行われた。







 

いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。


第3章はここで終了となります。

シルドの死、そしてそれぞれが背負うものが見え始めた章でした。


この章は、第4章へ向かうための“静かな助走”のような物語でした。


しかし――

物語はここから一気に動きます。


第4章では、これまで張られてきた因縁が次々とぶつかり合います。


ロッキ、フラン、アイナ、ベルゼ、カルタ。

それぞれの戦いが、いよいよ始まります。


3章が、グラスから溢れる直前で止まっていた水だとするならば――

4章では、それが一気に溢れ出す章になる予定です。


なお、第4章の投稿は

日曜日を1日お休みして、月曜日から再開予定です。


もし「続きも読んでみよう」と思っていただけたら、

ブクマしていただけるととても励みになります。


それでは――

第4章でお会いしましょう。

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