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【第一部完結】処刑された最強呪術師、魔法世界で異端となる 〜鬼使いと閃光の剣士〜(第二部連載中)   作者: 鬼喜怪快
4章 混沌の新生命体編

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65話 新生命体



 

 役小角は、シルドの姿をした“それ”と向き合った。

 感情のない眼差しが、見下ろすようにこちらを捉えている。


 小角は静かに息を吸い、2本の指を唇へ添えた。



 『――流転の式』



 円陣が床に浮かび、淡い光が立ち上る。

 分解と構築を司る術。

 真実を暴くための式だ。


 光に包まれた瞬間、“それ”の顔が歪んだ。



 「……ぐ、ぁ……」


 

 初めて浮かんだ苦悶の表情。

 小角は視線を逸らさない。



 「得体の知れない存在だ。本来の姿を見せてもらう」



 皮膚が裂けるように変質し、顔が崩れる。

 頭部と身体が引き剥がされ、首のない胴体が前へと踏み出した。


 宙に浮かぶ頭部。



 「……飛頭蛮ひとうばんか?」


 前鬼が呟く。


 「召喚でもされたか……」



 返事の代わりに、

 胴体が異様に膨張し始めた。

 筋肉が盛り上がり、骨格が歪み、衣服が弾け飛ぶ。


 胸部が裂け、巨大な一つ目が開く。



 「サイクロプス……!」



 アイナの声が震えた。

 サイクロプスは街で見かけるようなモンスターではない。


 もし討伐案件があれば、間違いなく、Aランク――

 否、Sランクであってもおかしくない上級モンスターだ。

 

 シルドの身体に、

 妖とモンスターが同時に宿っていた。


 理解が追いつく前に、サイクロプスが前鬼へ突進した。

 拳が唸り、屋敷全体が揺れる。


 前鬼はすべての攻撃を受け止めるが、床がきしむ。



 「前鬼! 殺してはいけない!

 ……身体はシルドさんのものだ!」


 「……厄介な注文だな」


 前鬼が歯噛みする。


 「拘束は性に合わん。潰すほうが早い」


 「飛頭蛮を頼む!

 そっちは、僕が引き受ける!」



 一瞬の沈黙。

 前鬼は舌打ちし、サイクロプスを蹴り飛ばして距離を取った。


 小角が前に出る。



 『烈波の式』


 炎が包み込む。

 だが、サイクロプスは歩みを止めない。


 『風舞の式』


 不可視の風が絡みつく。

 それでも、足は止まらない。


 「……頑丈すぎるな」


 小角の喉が鳴った。


 一言主神の力の発動――

 先の見えない状況、力は温存しておきたかった。


 やはり簡単な相手ではない。

 小角は命じる。



 ――《止まれ!》



 空気が震えた。


 サイクロプスの身体が、軋むように停止する。

 全身を震わせ、抗おうとするが動かない。


 連続発動――

 小角は額に浮かんだ汗を拭わず続けた。



 《その身に宿りし邪悪よ――退け》



 心臓を叩くような脈動。


 黒い霧が噴き出し、シルドの肉体から剥がれ落ちていく。

 巨大な身体は縮み、やがて――


 首のない、シルドの身体が床に崩れ落ちた。



 小角は膝に手をつき、息を整えた。

 長旅からの今――

 大技の連続で、随分と身体を酷使している。

 疲労は相当なものだった。


 

 その間、宙を漂う飛頭蛮が前鬼を睨む。



 「……人間が儂に何をした?」


 「知るか」


 前鬼が一歩踏み出す。

 

 「お前、なぜモンスターと混ざっていた?」


 飛頭蛮は嗤った。


 「儂も知らぬわ。気付けば、あのようになっていた」


 その瞬間――

 アイナが動いた。


 魔力を纏った斧が閃き、飛頭蛮の片目を裂く。


 「ぎゃああっ!」


 「先輩を……冒涜したお前を許さない」


 前鬼が小角を見る。

 小角は、わずかに頷いた。


 それを見て、

 吐き捨てるように言った。



 「……譲ってやる」



 アイナの魔力が膨れ上がった。

 巨大な斧が形成される。


 飛頭蛮は狂ったように突進を見せる。


 「喰うてやるわ! 娘ぇ!」


 ――斬。


 一刀で、頭部が真っ二つに割れる。


 「……そんな……儂が……

 ちっ……ちきしょうがぁー!」

 

 それでも、飛頭蛮は執念で迫りくる。


 ――グチャッ!


 前鬼が片方の顔を踏み潰し、

 半身をアイナが断ち切った。


 周囲は静寂に包まれる。


 

 屋敷を満たしていた魔力と呪力が、霧のように消えていく。


 すかさず小角は床に手をついて術を発動する。

 

 ――『付喪神の式』


 物の残留思念を読み取る呪術――

 屋敷と会話を試みる。


 「……」


 しかし――返答はない。

 

 「……全部、消していったか」



 抜け目のない敵。

 小角は、静かに呟いた。



 そして、

 シルドの衣服に手を置く。



 「……微かに反応があるね」



 この部屋で起きた真実と、

 妖とモンスターの混合体に関して――


 シルドの衣服が語ろうとしていた。




 

 

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

本作も気づけば10万文字を超え、物語として一つの大きな節目を迎えました。

お読みいただいている皆さまのおかげです。

この先も、ロッキとフランの物語はまだまだ続いていきます。

少しでも楽しんでいただけているなら、とても嬉しいです。


もしよろしければ、ブックマークや評価などで応援していただけると励みになります。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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