84.練習開始!
まずはピザからということで、ネイサンが慣れた手つきで生地をこねていく。
ちなみに、ザイル婆さんは「じゃあ、ワシは行くぞ」と言い残して、番台へ向かった。
あんまり食には興味がないのかな?
サルクさんは、そんなネイサンに材料の分量やこねるコツなんかを教わりながら、同じ作業をしている。
そしてミーナさんとサリーさんも、率先して2人のサポートをする。
どうせ新装開店したら、いくらでも必要になるし、俺の収納に仕舞っておけば劣化もしないので、どんどん作って練習をしていった。
サルクさんはやっぱり、すぐにコツをつかんだみたいだったので、最初のいくつかは寝かせる方に回して、残りは保管することにした。
しばらく生地作りの練習をしたあと、寝かせていた方をのばしていよいよピザのトッピングだ。
ソースやトッピングのソラミやシーズを刻む作業は、生地作りの合間にネイサンからサルクさんへ伝授済みだ。
最初に見本のトッピングをネイサンがやって見せた後、サルクさんが真似る。
流石にセンスがある・・。
「よし、じゃあ焼いて行こう!」
出来上がったのを見計らって、俺は言った。
「すぐに焼き上がるんで、見ててくださいね」
ネイサンがサルクさんを見て言った。
「ああ!」
サルクさんがうなずく。
「・・・できました!」
ネイサンは、窯の中で器用に木のヘラのデカいやつで、ピザをクルクルと回転させながら焼いていき、1分半後叫んだ。
「!!」
窯から取り出された、焼き上がったピザを見て、サルクさんが声にならない声を上げた。
「ほら、サルクさんもやってみて!」
俺は、固まっているサルクさんに声をかけた。
「あ、ああ。そうですね。やってみます!」
サルクさんも、さっきのネイサンを真似して木のヘラを使って、ピザを窯に入れる。
最初はなかなかうまく回せなかったようだが、30秒もすれば慣れたのか、器用にクルクルと回し始めた。
「そろそろいいですよ!」
ネイサンが声をかける。
「分かった!」
言われて、サルクさんが窯から取り出すと、わずかにネイサンのピザより焦げていた。
「くそっ・・もうちょっと早めか・・」
サルクさんがとても悔しそうにしている。
「初めてにしては上出来ですよ」
俺は苦笑しながら、サルクさんを慰めた。
「もう一回焼いてみてもいいですか?」
サルクさんが聞いて来た。
「もちろん構いませんけど、その前にまずはこの焼き上がった2枚を食べてみましょう。冷めちゃうともったいないですから」
「それもそうですね・・」
サルクさんは少し残念そうだったが、了承してくれた。
「じゃあ、ネイサン切り分けてくれ」
「おう!」
ネイサンが2枚のピザを切り分けると、みなそれぞれが手に取った。
「まずは、ネイサンの焼いた方からだ」
俺はそう言って、片方のピザを口にする。
うん、相変わらずうまい!
「う、うまい・・・焼き立てはこんなにうまいのか!?」
サルクさんが、凄い感動している。
あれ?
前に食べた時は、焼き立てを食べたんじゃないのかな?
「でしょう?」
サリーさんがそう言って、ウインクしている。
ああそうか、サリーさんはここで焼き立てを食べて、サルクさんは時間差でお裾分けされて食べたのかな?
「ああそうだ、エールもありますよ」
ここにはまだ樽は設置していなかったが、収納に入れていた分を取り出してサルクさんに差し出す。
「あ、ありがとうございます!・・うぐっうぐっ・・プハー!う、うますぎる!!」
サルクさん、しっぽ振りすぎじゃないですかね?
「「お!なんだエールがあるんじゃねえか!俺たちにも1杯くれや!」」
工事中のドンクさんたちから声がかかる。
「いいですけど、仕事もしてくださいよ」
「「ああ、分かってる!」」
つったく・・・鼻が効くというか、目敏いというか・・・。
「サルクさん、あと何枚か焼く練習をしたら、今度はパスタ作りに移りましょう」
俺はいまだに感動しているサルクさんに声をかけた。




