64.新企画第2弾
あれから1週間。
ピザと冷えたエールのタッグは強力で、もはや銭湯が目当てというよりかは、『おやすみ処』でそれらを食べることが目的と化してきた。
『アトラスの牙』の面々は、せっかく冒険者に登録したというのに、『ふじの湯』の仕事が忙しすぎて、本業の方には全然行けてなかった。
特にネイサンはピザ職人としてフル稼働で、本人も料理ができるのが(しかも給料を貰って)よほど嬉しいらしく、毎日生き生きとしていた。
そんな彼を見て、他のメンバーも嬉しそうなので、「まあ良いか」と俺も何も言わずに頼っている。
もっとも、ビジルの追加のための採取依頼(もちろん俺が出している)には、『ふじの湯』の定休日・・そうそう、月に1回は休みにした。
やはり施設のメンテナンス(ドンク工房に依頼した)は大事だし、たまには休まないとね。
その貴重な定休日を使って、『アトラスの牙』は採取依頼に出てくれていたのだ。
若い彼らは体力的にも問題がないらしく、「良い気晴らしになる」と言って、その依頼も快くこなしてくれていた。
そもそも、この世界には定休日という概念は無いらしく、365日休みなく働くことが当たり前なのだそうだ。
あったとしても、なんらかの都合で休む、いわゆる臨時休業的なものだけみたいだ。
「ここらでちょっと、銭湯の方も盛りあげないとなあ」
そんなわけで俺は今、どうしたもんかとひとり事務室で悩んでいたのだった。
「やっぱり、ゆず湯に続く新企画を考えるしかないか・・」
結構、あれは評判が良かったからな。
期間限定ということにして、希少性も高められたし。
「よし、市場に行こう!」
「なんでお前たちも付いてきてるんだ?」
「だって、市場に行くっていうから、食材探しかと・・」
ネイサンが、俺の横を歩きながら言い訳をする。
中央広場に出たところで『アトラスの牙』の4人と出くわし、「市場に行く」と言ったら、そのまま彼らが付いてきたのだった。
「べつに今日は、食材探しじゃないぞ。まあ、いいのがあれば買うかもしれないけど・・」
「だろ?!じゃあ、付いてっても構わないだろ?」
「私たちも、探し物がなんなのか気になりますし」
ネイサンのあとに、ポールも続ける。
リンとキースも、目を輝かせてウンウンと頷いている。
「はぁー・・まあいいか。じゃあ何かアドバイスでもあったら言ってくれ」
「「「「了解!」」」」
市場に到着すると、まずは八百屋を物色してまわることにした。
お目当てのものがあれば良いけど・・。
「これは生姜だなあ・・これはこれで、使い道があるか・・」
「お客さん、それはシンジャーだよ」
・・なにも言うまい、スルーだ、スルー。
ネギみたいな形のその野菜は、生姜の香りがした。
「これはニラだな」
「お客さ~ん、それはシャイブ!」
あーハイハイ、元ネタはチャイブね。
「なんか無さそうだな?」
ネイサンが言ってくる。
「そうだな、やっぱり狙い目は薬屋かな」
「そうですね、ビジルも薬屋でしたし」
ポールが頷く。
「よし、じゃあ薬屋に行こう」




