42.登録
「あの~、すいません」
「いらっしゃいませこんにちは!ご登録ですか?」
「は、はい」
一番左の『登録』と書かれた窓口に向かい、その前に立つとすぐに声をかけられた。
勢いがすごい。
20歳くらいの綺麗な女性で、セミロング、スーツのような紺色の制服を着ている。
「ありがとうござます!では、こちらの申し込み用紙に必要事項をご記入ください」
女性は、にっこり笑ってA4サイズの紙を差し出してきた。
「紙!?」
「え?ああ、はい。紙ですけど?」
キョトンとした目をして、小首をかしげる。
いや、そうなんですけど・・。
「すいません、ちゃんとした紙を見たのが久しぶりなもので」
こっちの世界に来て、紙といえば実は羊皮紙しか見ていないんだよね。
どうやら、植物の繊維で作った紙は貴重品らしく、これまで一度もお目にかかっていなかった。
すると、納得したように。
「それは仕方がないと思います。契約書類とか公文書以外は羊皮紙が一般的ですから」
「そうなんですね」
なるほど、そういうことなのか・・。
「そういうことで、記入の方よろしいでしょうか?」
ニコリと微笑まれる。
「あっ、すいません!今書きます」
えーと、名前に種族、年齢、性別、職種・・そんなもんか。
良かった、スキルとか書かなくていいんだ。
そういえば言い忘れてたけど、この世界の文字は、当然日本語じゃない。
いわゆる、フェニキア文字と酷似している。
当然、俺は何故か読み書きができている。
なんでだ?
・・ていうか。
これ、誰に言ってる?
ま、それはさて置き・・。
「はい、これでいいでしょうか?」
俺は一通り記入すると、申し込み用紙を差し出した。
「ありがとうございます!確認させて頂きます」
にっこり笑って、受けとってくれる。
「申し訳ありませんが、ここに店もしくは商会の名称を記入して頂けますか?」
一瞬の内に確認すると、間髪入れずに申し込み用紙を戻された。
「あ、そこもですか。分かりました」
『ふじの湯』
そう記入し、差し出す。
「ありがとうございます。では、これで登録させて頂きます!」
「よろしくお願いします」
職員さんが、後ろの別の職員さんに用紙を渡し一言二言、言葉を交わす。
「では、ギルドカードが出来るまでの間、当ギルドの仕組みと、会員の規約などをご説明させて頂きます」
職員さんが俺に向き直ると、そう言って一礼した。
「よ、よろしくお願いします」
職員さんの説明によると、商業ギルドの役割は大きく分けて3つだということだった。
一つは、登録された商会、商店の管理業務だ。
これにはギルドへの登録やその取り消しなどとと共に、毎月の売上状況の把握と村への税金の徴収が含まれる。
更には、価格カルテルの防止なんてのもある。
二つには、預貯金の管理や融資、先物取引による資産運用などの金融業務、村内の不動産管理業務なんてのもやっている。
三つ目は、冒険者ギルドと連携したクエストの管理業務だ。
商隊の護衛任務依頼などは、一旦商業ギルドで集約して、冒険者ギルドに発注される。
そして、ギルドの収入源は様々な場面での、手数料と預貯金の運用で賄われている。
国や領主からの補助金などは無い。
「とってもよく分かりました。では、とりあえずは、毎月の売り上げ報告に伺えばいいんですね?」
「はい。ただ、締日はそれぞれの商会さんで様々だったりするので、そちら様の締日をお知らせくだされば、そのように対応させて頂きます」
「分かりました」
なるほどね・・。
ここで、さっきの別の職員さんが、何やら奥から持ってきて目の前の職員さんに手渡した。
受け取ったカードを、カウンターの上に置かれた機械のようなものに差し込む。
「では申し訳ありませんが、この魔道具の上に開いた右手を置いてください」
「こ、こうですか?」
魔道具と言われたものが、一瞬青白い光を放った。
「はい、結構です。では、カードの方が出来てきましたので、こちら、お受け取りください」
光がおさまりカードを抜き取ると、にっこり笑って差し出してきた。
渡されたものは、プラスチックとはちょっと違う材質で作られた、クレジットカードの様なものだった。
表面にはさっき書いた情報が、書き込まれている。
裏面には、何も書かれていなかった。
「今回は、初回登録手数料として1500セムを頂きますが、万が一紛失した場合は再発行手数料として3000セム頂きますので、ご注意ください」
「は、はい」
これがギルドカードってやつか・・。
よくある異世界ものの、魔法とかスキルとかレベルとかが一切出てこないので、なんか拍子抜けするな。
ま、冒険者とかじゃないしな・・。




