受付のお姉さんとギルドマスター
「冒険者ギルドでは、皆様に適した依頼をご紹介するためにランクというものを設定しています。一番初めはFランクからです。危険度の少ない依頼を集めていますので、ここから慣れていただくのが目的です。規定数の依頼を達成したら、ランクアップが可能です。
Fの上は、E.D.C.B.Aランクと設定されています。
Fランクが初心者、
Eランクで駆け出し
DランクからCランクで一人前、
Bランクが上級者、
Aランクがトップの一握りの冒険者となります。
さらにこの上に特級とも言えるSランク、SSランクが存在しますが、現在Sランクは世界で5人、SSランクは1人だけです」
「なるほど、そのSやSSランクの奴はどこに居るんだ?」
「個人情報は教えられないんですよ。でも有名な方ですから、近くにいたら噂でわかりますよ」
「へぇー」
ランクの設定は、ゲームと同じだ。
やり込み要素として、寄り道してミッションをこなし、冒険者ランクを上げることもできるようにしていたのだ。
「ランクアップの条件についてはランクごとに違いますので、お2人のランクが決まった後でお伝えしますね」
「わかった。登録はこれでおしまいかな?」
「いえ、連絡先をお伺いします。依頼の途中で何かあった場合や、指名依頼があった場合に手紙やギルドスタッフが伺うことがありますが、ご了承頂けますか?宿屋で過ごされている場合はその宿屋と、可能であれば緊急連絡先をお願いします。ご家族の連絡先ですね。」
連絡先……どうしようか。
一応、サミュエルやアレン、また乳母……というか侍女のようについてくれているニーナ、あと父親である王にも一応、冒険者登録して各地を回ることは伝えてからきたし、心配や反対はされたが、最終的には納得してもらった。
だからまあ、王城に連絡がいってもいいかな……むしろその方が連絡がついて良いか?
「どうかなさいましたか?」
「いや、ごめん少し考えてたんだ。連絡先は、ソトリア王国の王だ。住所は王城ってわかる?」
「……えっ?お、王様……ですか?」
「王が一番適切なんだろうけど、まぁ騎士団にいるアレンとか魔法師団のサミュエルでも……」
「あの、ルカさん、からかってますか?」
「え?からかってないよ」
「でも、その、王様が連絡先というのは……普通、連絡先には、ご本人が住んでいる住所や、ご実家を書くものなので……」
「うーん、実家だから」
「えっ?」
「この国の王が、父親なんだ、一応。だから城が実家なんだ。他に連絡先もないしなあ……」
「え、えっ、それは、あの、王様の庶子とかそういう……」
「いや、大丈夫、正式な子供だから」
「えっ、でも、王様の子供って、一年前くらいにお生まれになった王子ルカ様だけ……ルカ様?!えっ、ルカさん、これは壮大な詐欺とか冗談とかそういうものですか?」
「いや、本当なんだけど……俺がその王子ルカなんだ」
別に隠してもいないし、堂々といこう。うん。
「何を揉めてるんだ」
ギルドの奥から、男が出てきた。
体格が良くてデカイ。顔の傷もなかなか風格があって、昔は強かったんだろうな。今も結構いけそうだ。年齢は40歳位だろうか?仕事ができそうな感じに見える。
「マスター!あの、この方達の登録をしていたんですが、その、この男性が、自分が王子ルカ様だと言うんです……ルカ様ってまだ1歳くらいですよね?」
「なんだと?……まさか……」
「マスター、どうしましょう」
「……俺が話をする。奥の応接室に通してくれ」
「はい、わかりました!えっとー、ルカさん?あとはギルドマスターとお話ししてもらえますか?応接室がこの奥にありますので」
「ああ、わかった。ライラも一緒でいいよな」
「あっ、はい、大丈夫だと思います」
「じゃあ行こうライラ」
「うん」
さっきの男がギルドマスターだったのか。
ライラと2人でギルド受付奥の扉から、応接室とやらに移動する。
ギルドマスターは、先に応接室に移動して待っていた。
「受付が失礼しましたね、おかけください」
「ああ、ありがとう」
勧められた椅子に座る。ライラも俺の隣に座り、テーブルを挟んでギルドマスターと対面する。
「それで、自分が王子ルカ様だと名乗ったということですが……」
「ギルドマスターなら知ってるんじゃないか?王子が姿を変えるって話」
そう、王城スタッフにはすでに周知されている事実だ。俺が、一歳の幼児の姿だったり、黒目黒髪の若者魔王の姿だったりすることは。
ちなみに、リクエストに答えて金髪金眼の若者魔王の姿になったこともある。あと黄金竜にも。
流石に訳が分からなくなりそうなので、そのほかのゲームモデルは披露していないが。
そして、王子に黒竜の友がいて、さらにその黒竜は人間の女の子の姿をとることも、別に隠してはいない。
「……王城に関わるものから、聞いたことはあります。ただ、王子殿下とは言え、そんなことができるとはにわかに信じがたい。その話を聞いただけの、なりすましという可能性もある……」
「なりすましかぁ、何か高待遇を要求したり?でも姿を変えられなきゃすぐにバレるんじゃないか?」
「……そういうからには、その姿を王子のものに変えられるというのか?」
「変えるっていうか、元に戻る感じなんだけどな」
慣れたもので、ほとんどメニュー操作を必要とせずにパッと幼児の王子姿に切り替えた。
「これが本来の姿だよ」
ギルドマスターは、これ以上ないというくらい目をカッと見開いて固まってしまった。
この部屋の奥の方で控えていた、ギルドスタッフらしき女性もパカっと口を開けてアワアワしている。
「わかった?やっと最近この姿でもまともに喋れるようになってきたんだよなー、なんか舌足らずでさあ」
「そ、そその黄金の髪、黄金の眼、確かに王子の……」
「あ、そうだ、これも見る?一応俺のトレードマークというか……」
腕まくりをして、腕の鱗っぽい痣を見せる。
最近この痣の色も、なんか痣っぽい。赤とか黒とかじゃなくて、薄くなってきたというか金色に近づいてきてる気がするんだよな……
「そ、それは……竜紋……!」
「他に証明が必要なら、王城に問い合わせてくれ」
「わ、わかりました……十分です。いえ、あとで王城に確認はさせていただきますが……」
俺を抱っこして膝に乗せようとしてくるライラをさりげなくかわしつつ、再び切り替えて黒髪若者魔王の姿に変化する。流石に膝抱っこされながらじゃ話に信頼性がなくなりそうだからな。
抱っこできず不満げなライラの手を握りながら、ギルドマスターを見る。
「じゃあ、冒険者登録は問題ないかな?」
「問題は……あの、王はこのことをご存知なのですか?王子が冒険者になるなどとお怒りになったりは……」
「王の許可は取ってあるから大丈夫だ」
「そ、そうなのですか?!それならば……」
王が本当のところどう思っているのかは分からないけどな。
「ですが、ルカ様、殿下、あー、ルカ殿下?」
「ルカでいいよ」
「では……ルカ様、なぜ冒険者になどなられるのですか?歴代の王族の方が冒険者になられた事などないかと思います。単なる興味本位なのか、それとも何か目的があるのでしょうか」
「うん、探してるものがあって……それを探すため、旅をするつもりだ。もちろん、用があれば帰ってくるけど。国外にも出る可能性が高いし、探し物の情報を集めるにも冒険者ギルドが最適かと思ったんだ」
「探し物……ですか?それは一体……」
「他言しないと誓えるか?ここにいる全員だ」
「それは、内容によります、軽々しく誓いは立てられません」
「じゃあ話せないな」
「……では、私だけが聞きましょう。他の物は下がっていてくれ」
「はい、では失礼します」
人払いがされ、部屋に俺とライラとギルドマスターだけになった。
「ギルドマスターは他言しないと誓えるか?」
「……必要がない限りは……」
「必要は無いな、欲をかかなければ。竜を探しているんだ。俺の友達の黒竜の母親の竜だ。人間とどこかに旅立ったという。おそらく今も人間と共にいるはずだが……さっきから他言無用と言っているのは、単独竜の情報を得て討伐対象にされたら困るからだ。俺の友の親に手を出したら許さない」
「それは、なるほど……わかりました。竜は確かに良い素材ではありますが、魔法に長け、討伐は困難を極めます。特に害をなす存在でも無い限りは討伐対象にはなりませんし、この国には、魔の森の長との不可侵条約もあります。そうそう竜に手を出す輩がいるとは思えませんが……」
「絶対にいないとも限らないし、他国では討伐対象になる可能性も高い。情報を広めずに、探したいんだ」
「わかりました。この話は聞かなかったことにします」
「……ギルドマスターは、聞いたことはないか?人間と共にいる竜の話」
「それは……そうですね、何年も前になりますが、聞いたことがあったような気がしますね。噂レベルですが。どこかで竜と人間が一緒にいるのを見かけた冒険者がいて、その話をしてたような……」
「ほんとか!その冒険者、紹介してくれないか」
「はい、まぁ……大丈夫だと思います。毎日顔出すやつなんで、次に見かけたときにでも声かけておきますよ」
「よろしくな!」
噂とはいえ、捜索のヒントになるかもしれない。
うん、一歩前進だな!




